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「県別優先枠」を大幅に拡大 備蓄米の買い入れ方式見直しを検討  農水省

 農林水産省は政府備蓄米の確保のため各県ごとに設定された優先枠の大幅な拡大や、入札手続きなど見直す検討を進めている。11月末に開催する食料・農業・農村政策審議会食糧部会に諮る予定だ。

◆入札手続きの簡素化も検討

 政府米の備蓄方式は23年度から、それまでの回転備蓄方式から棚上げ備蓄方式に移行した。
 備蓄水準は100万t程度とし、毎年20万tづつ買い入れ、買い入れた米は5年間備蓄、その後に飼料用など非主食用に販売することとしている。買い入れは播種前・収穫前の一般競争入札で契約することにした。
 しかし、23年産米の政府買入数量は、東日本大震災の影響もあって約7万tにとどまった。そのため今年6月末の政府備蓄米在庫量95万tのうち、6年古米の18年産が16万tを占めている状況だ。
 さらに24年産では、産地からの作付け計画を早く立てる必要があるなどの要望に応えて入札時期を早め1月から開始した。それでも24年産米の事前契約数量は8万3000tにとどまっている。
 政府備蓄米の生産は生産数量目標にはカウントされない。したがって、生産者からすれば飼料用米や米粉用米などの新規需要米と同じように米による生産調整の一手法として位置づけられる。
 ただし、一般競争入札の結果に左右されてしまうため、買い入れの仕組みとして23年産から入札実績をもとに他県と競争がない優先枠を各県ごとに設定することにした。その結果、24年産ではこの優先枠では8割が落札され、落札数量全体の7割を占めている。
 こうしたことから備蓄米の生産を拡大するためには、地域や生産者が安心して取り組むことができるよう「県別優先枠を大幅に拡大する必要があるのではないか」というのが農水省の考えだ。この優先枠の設定には前年の売り渡し実績をふまえて設定する方向で検討されている。
 また、備蓄米は、不足時に主食用へ供給することが目的となっているため、消費者のニーズに応じて供給するための産地品種銘柄ごとに管理をする必要があるとの考えから、契約時に銘柄別の数量を産地が提示することが求められていた。しかし、契約時に銘柄別数量まで提示することは難しいとの声もあるため、この提示時期を見直すことや、最低落札数量(50t)についても改善を図ることを検討している。

◆飼料用米には収量要件

 一方、主食用国産米価格は23年産米の8月相対取引価格が60kg1万5541円と22年産よりも2300円程度高い水準となっている。ただ、18年産米、20年産米とくらべるとほぼ同水準のため価格水準が戻ったともいえる。また、9月から取引が始まった24年産米の業者間取引のスポット価格は、23年産米のピーク時にくらべて同2300円〜3500円低く、新潟コシヒカリで1万7850円、秋田あきたこまちで1万6590円、宮城ひとめぼれで1万6485円などとなっている。
 しかし、23年産米の主食用米の価格上昇にともなって業務用などの低価格帯米の不足、さらに加工用米の価格上昇と低価格での供給不足も懸念されている。これには米トレーサビリティ法の施行で米を原料にした食品にも表示が求められることになったことも影響している。
 そのため24年産の加工用米生産量は23年産より3万t多い18万tの見込みにもかかわらず、販売価格は60kg1万1000円と23年産よりも2000円以上上昇している。この影響で安価な原料米を扱う米菓、味噌、焼酎向けの加工用米の供給不足が見込まれることから、農水省は8万t程度の備蓄米(18年産)を飼料だけでなく低価格帯の加工用米需要向けに販売することにし10月末に入札が実施される予定だ。
 このように備蓄米や加工用米の不足が生じるなどの事態を避けるため農水省は需要に応じた生産体制づくりも必要と考えている。
 戸別所得補償制度では加工用米には10aあたり2万円、新規需要米には同8万円を交付するなどのメニューを提示し、生産者が経営判断で選ぶ姿を想定していたが、実際に生じているのは「個別の経営判断を足せば需要とマッチするのか」(農水省・今城健晴農産部長)という問題だ。そこで「産地として戦略を持って取り組めるよう地域ごとに米の計画的な作付けを進める仕組みを考えていく」(同)という。
 たとえば、備蓄米の生産については加工用米や新規需要米のような交付金はないが、地域によっては交付金を一括してプールし生産者の手取りに不公平感が生じないような仕組みを工夫したうえで需要に応じた米の作付けに取り組む例なども参考にしながら推進策を考えるという。
 また、飼料用米については加工用米や備蓄米と同等の収量の出荷を要件とすることや、多収性の専用品種の導入も検討していく。ただ、今回の見直しのうち、備蓄米の確保策としての出来秋での買い入れは、現在の政策が市場価格に影響を与えないことを前提としているため実施を検討することはない、というのが今のところの状況だ。

 

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