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【TPP】 「なし崩し的な決定、絶対に許されない」 飛田JA全中副会長の緊急要請

 15日に開かれた「TPP交渉参加断固阻止緊急全国集会」ではJA全中の萬歳会長の主催者あいさつに続き、飛田副会長が出席した国会議員に緊急要請をした。政府の姿勢を厳しく批判する要請に会場から何度も「そうだ。そのとおり!」などの声が飛んだ。また、パルシステム千葉の平野理事長と愛媛大学の村田教授が連帯メッセージを述べた。

【飛田稔明JA全中副会長の緊急要請】

◆生産現場に混乱と不安

飛田稔明JA全中副会長 全国の農業者を代表して緊急要請する。
 先週末、野田総理のTPP交渉参加への意向に端を発し、TPPが争点になっている。全国の生産現場ではにわかに動揺が広がり、政局のどさくさにまぎれてTPP交渉参加を加速しているのではないかとの疑念がまん延している。
 昨年11月、野田総理は各国がわが国に求めるものについてさらなる情報収集に努め十分な国民的議論を経たうえで、あくまで国益の視点に立ってTPPに向けての結論を得ていくと言明したはず。しかし、そのような手順を十分に踏んだとは到底言えない。情報開示がなされず国民的議論がまったくされていないなかで、なぜ参加表明という動きになるのか、まったく理解できない。


◆国民的議論はまったくされていない

 野田総理が4月末に訪米した際、オバマ大統領から自動車、郵政、への関心の表明があり、信頼に足る何らかの対応を求めたと聞いている。米国大統領選と同時に実施された連邦議会選挙で、日本の自動車市場は閉鎖的だと指摘した多くに議員が再選を果たした。こうした議員の動向を政府はどのように把握しているのか。
 また、郵政民営化の具体的なスケジュールを示さないまま新規業務参入を示唆していることについて米国はどのような反応をしているのか。政府は自動車や郵政にかかる事前協議の内容も含め国民的議論に必要な情報を開示する気持ちなどないのではないか。
 また、説明会や意見交換、フォーラムの開催をもって国民的議論を行っていると強弁している。しかし、肝心の情報開示が行われないなかでの説明会を回数を重ねたところで議論が尽くされるはずがない。参加者や会場からの批判や不満と真剣に向き合い、その解消に努めることを多くの国民が求めている。その意味で国民的議論はまったくなされていないといっても過言ではない。


◆米国のルールを押しつけるだけのTPP

 このような状況のもとで18日から開催される東アジア首脳会議に際し、万が一にもTPP交渉参加表明はあり得ないと確信している。出席の先生方(国会議員)にまずこのことを強く申し上げたい。  同時に明日(16日)に国会の解散がなされると聞いている。なし崩し的な政府決定はわれわれのもっとも懸念するところであり、無責任極まりない判断であり、絶対に認められない。野田内閣が間違った判断をしないよう特段の尽力を。
TPP交渉参加断固阻止緊急全国集会 米国はTPPを21世紀型の課題に対応する包括的で次世代型の地域協定と呼んでいる。しかし、米国の数々の提案や各国との対立の構図が明らかになるにつれ、単に自国の産業を優遇するうえで都合のよいルールを他国に押しつける協定ではないのか、疑念を持たざるを得ない。このような協定にわが国が入っていくメリットは本当にあるのか、デメリットばかりではないか。
 政府は誠実に情報を開示し国民的議論を喚起する責任がある。
 われわれは交渉参加そのものを断念に追い込むまで徹底的に戦い抜く覚悟である。われわれの思いを汲み取り断固反対に向けてともに声を上げていただきたい。


【連帯メッセージ】

平野都代子・生活協同組合パルシステム千葉理事長◆平野都代子・生活協同組合パルシステム千葉理事長

 国会解散が具体的になった今、TPPへの本格的な参加がその争点とされ、私たちは大きな危機感を持って交渉への参加に反対する。 TPPは日本農業に大きな影響を与え、食の安全安心を脅かしている。「入場料」といわれる牛肉についても規制緩和が検討されているが、現在、各都道府県が実施している全頭検査もISD条項(投資家が国家を訴訟できる条項)でどうなるのか、みえない。食の安全を求める消費者運動ですら、取り組めなくなってしまうかもしれない。
 食だけではなく医療・健康保険・雇用など暮らしのさまざまな側面に大きな影響を及ぼすTPPについて私たち消費者の多くは実感をもって理解していない。よくわからないまま、国民的議論も尽くされないまま、暮らしに大きな影響を与えることが決められようとしている。
 震災を経験した私たちは自然の驚異を目の当たりにし改めて人と人とのつながりの大切さや自然と共生することの大切さを自分のものとした。生産現場である田や畑によって守られてきた日本の原風景、山や森、海、そこに暮らす人々の暮らしやコミュニティーを壊すTPPにパルシステムは反対する。


◆村田武・愛媛大学教授

村田武・愛媛大学教授 TPPは農業改革すれば両立できるという議論がある。
 しかし愛媛県農業に関わっている者からすると、かんきつ農業が1991年のオレンジ生果の自由化、92年の果汁の自由化、その後のブラジル産オレンジジュースの価格破壊圧力にどれだけ苦しめられてきたか。かんきつ農業が縮小する中で必死に産地を守ろうとしている状況からすると、なんとしてでもTPPを抑えなければならない。 国家が失業問題の解決策として他国の犠牲を顧みずに自国本意の政策をとることを近隣窮乏化政策という。オバマ政権は08年のリーマンショック以降、大不況から脱出するための経済政策として輸出倍増計画、ドル安政策を基本としている。
 TPPに日本を巻き込むことはアジア市場への橋頭堡を築こうとするオバマ政権の戦略であり近隣窮乏化政策そのもの。
 ガットウルグアイラウンドの妥結で発足したWTOでなんとか主要農産物の国境措置を確保できた。日本農業の最後の橋頭堡を撤廃するとき、一番最初に苦難に陥るのは北海道の畑作農業。北海道は食料自給率をあげていくための食料供給基地だ。これを崩したとき我が国の食料安全保障の道はない。
 世界的食料需給の逼迫、原発事故の危険性が高まっているもとで国内農業の食料供給力を後退させるなど亡国の道でしかない。断固としてTPPは阻止しなければならない。

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