重大な選択の機会
正しい情報発信の正念場
この国のため 農業者こそ声を上げよう
◆国民無視の暴走を止めよ
「国民無視の暴走が危険水域に達している。表向きは情報収集といいながら裏交渉が進められている。政府が参加表明をしないのは反対の声が強いからではなく、米国に“頭金”を払いきっていないから。だから判断の時期ではない、と言っているんです」。
11月18日に大宮市で開かれた「いま、協同が創る2012全国集会」でTPP問題をテーマにした分科会で鈴木宣弘東大教授はこう語気を強めて批判した。
“頭金”とは、今年4月末の日米首脳会談でオバマ大統領が日本側に関心を示した自動車、保険、牛肉の3分野で日本側から、さらなる輸入自由化や規制緩和の条件を事前協議のなかで示すことだ。もともと野田首相は昨年11月にTPPについて関係国がわが国に何を求めているかについてさらなる情報収集に努め、それをもとに国民的議論を経たのちに結論を得ると表明した。
しかし、政府からはほとんど情報が開示されないまま1年が過ぎた。それも国民を代表する国会議員にすら説明されておらず、交渉参加の判断などできるはずがない状況だ。ただし、鈴木教授が警鐘を鳴らすのは情報収集とは表向きで、とくに日本の参加に反対する米国の自動車業界の意向をふまえた協議で折り合いがついていないことが参加表明が見送られてきた本当の理由だという。国民的議論よりも米国の意向が重視されているということになる。
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ガンバロー三唱で気勢をあげるJAグループ組合員と役職員(TPP交渉参加断固阻止緊急集会で)
◆メリット示せない政府
鈴木教授がこれまでに強調してきたのはTPPは「失うものが最大で得るものが最小の史上最悪の選択肢」だということだ。
内閣府の試算でもTPP参加で日本のGDPは0.54%、2.7兆円しか増えない。日中2国のFTAなら0.66%増、日中韓なら0.74%、ASEAN+3(日中韓)なら1.04%とTPPの倍になることを示している。
それでもメリットがあるとする主張は「ベトナムで儲ければいい」というもの。国内の雇用が失われてもベトナムへの直接投資などの自由化は徹底されるから、海外で利益を得ることができる、という議論だ。しかしそれは経営者の議論であって国民の視点ではない。
また、TPPは関税撤廃を原則にしているが例外もあり得るのではないかという議論がある。しかし、その具体的な議論は7年間の猶予期間を指してのことに過ぎない。60kg1万4000円の米の生産費が7年間で米国並みの同2000円にすることはまず無理で、これは「例外」とは言えない。
さらにTPPの本質は国民生活を守る医療保険制度などの仕組みを参入障壁と捉えて、競争条件の平準化の名のもとに規制緩和を求めることにある。政府は公的医療保険が交渉で議論になっていないというが、日本医師会がかねてから強調しているように米国の要求は自由診療の拡大や株式会社の参入などによる医療の営利化を日本で進めることにある。
これらが実現できず利益が得られなかったとなれば企業・投資家が国家に損害賠償訴訟を起こすことを可能とするISD条項を協定に盛り込もうとしていることはすでに繰り返し指摘されてきたことだ。
しかし、この日の分科会では会場から「TPPの本質についてつい先日まで知らなかった」という声も出た。
今こそこの問題の本質を広く知らせることに力を入れる正念場にきた。
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JA全青協による座り込み行動後の官邸前での抗議行動(11月15日)
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