回転備蓄方式のときはSBS輸入米が主食用として販売されても、その同量の国産米を備蓄米から援助用等に振り向けるとともに、備蓄米は市中から買い入れていた。
しかし、棚上げ備蓄方式では市中からの買い上げは行っていない。このためSBS輸入米は国産主食用の需給に影響を与えて生産数量目標の削減につながりかねず、「転作強化は行わない」との閣議了解に反する懸念があるのではないかと指摘されていた。
これに対し農水省は棚上げ備蓄の運用は(1)SBS輸入米10万tを上回る政府備蓄米20万tが主食用の外枠で生産が可能、(2)政府備蓄米は政府が主食用米並みの価格で買い入れる(24年産米の加重平均落札価格60kg1万3406円)の2点を挙げ、主食用米と「主食用米と遜色のない水準の価格である備蓄米」のトータルでの生産縮減にはつながっていないと説明、そのため平成5年の「閣議了解の趣旨は確保されている」との見解を示した。
農水省の考えは、現在の主食用米の生産量は、生産数量目標と20万tを買い入れる備蓄米を合わせた量というもの。棚上げ備蓄する米は生産数量目標とは別に播種前契約で政府が買うのだから、転作の強化にはならないとの認識だ。
これに対してJA全中の冨士専務は「備蓄米は転作扱い。(米に対する助成)1万5000円(10a)も出ない。閣議了解の趣旨はSBS輸入米が主食用米の需要に影響を与えるということ。(農水省の見解は)筋が違う」と反論。また、備蓄米が外枠で20万t生産できるといっても、買い入れ数量は23年産7万t、24年産8万tと2年間で15万tに過ぎないのが実態。本来なら40万tの生産・買い入れが行われているはずで「数字上のつじつまもあわない」と批判した。
これらの指摘に対して農水省は「主食用米並みの価格で買い入れている」ことから転作扱いではないことを強調するとともに、産地によっては産地資金から水準には幅があるものの助成金が支払われていることを指摘した。この点について、今城健晴農産部長は「平成5年の閣議了解の“転作”の意味合いは、備蓄米を(生産数量目標の)外数に置くことを想定していなかった」と説明し、今後は「産地資金の拡充で対応していきたい」と述べた。
【ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う農業施策に関する基本方針:平成5年12月17日閣議了解】
○米の生産・供給安定対策:米のミニマム・アクセス導入に伴う転作の強化は行わないこととし、引き続き、安定的な国内生産が可能となり、国民への安定供給を確保できるよう、中期的観点に立った備蓄と用途に応じた需給均衡を確保できる新たな米管理システムを整備する。
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