◆2度の受賞は2人目
今年度のJA研究賞は、22年1月から23年12月までに刊行されたJAや協同組合運動に関する著書・論文を対象に実施。全国約170人の研究者などから9件の推薦があり、その中から山梨学院大学元教授で日本大学経済学部兼任講師の堀越芳昭氏の『協同組合の社会経済制度―世界の憲法と独禁法にみる―』(日本経済評論社、2011年)が受賞した。
堀越氏のJA研究賞受賞は平成元年の『協同組合資本学説の研究』(日本経済評論社、1988年)に続いて2度目。昭和48年から続いているJA研究賞だが、過去に2度受賞したのは、昭和60年と平成9年に受賞した中川雄一郎氏(明治大学政経学部教授)に続いて2人目となった。
10月に行われた選考委員会では、「世界各国の憲法や独禁法において協同組合がどのように規定されているかという視点から、協同組合のあり方や社会経済制度としての特質を解明するというアプローチが斬新」、「協同組合の独占禁止法適用除外について、対抗力論だけでなく経済公正論で説明している」などの点が高く評価された。
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堀越氏(左)・萬歳JA全中会長
◆世界98カ国の憲法を網羅
同著は世界98カ国・地域とドイツ6州の憲法を取り上げ、それらの憲法の中で協同組合がどう取り扱われているかを網羅的に検証し、社会経済全体の中での協同組合の位置づけを考えようというもの。堀越氏によれば、「これまで協同組合法など個別の法律に基づいた協同組合論はいくつもあったが、憲法に基づいた協同組合論を、しかも全世界の憲法を網羅的に取り上げて論じようという著作は類を見ない」という。
ここで取り上げた憲法のうち、51カ国・地域とドイツ6州の憲法が協同組合の保護助成を明文規定している。それらは主に新興国や中南米諸国であり、日本、米国、イギリスなどの先進国は憲法で協同組合について触れていないという特徴があるという。
堀越氏はこの著作の研究を今後も継続し、ブラジル、インド、中国、韓国、フィリピンなどの新興国とベネズエラ、ボリビア、エクアドルなど中南米諸国での協同組合の憲法規定について研究を深め、さらに協同組合と独禁法の関係についても研究を深めていきたいとしている。
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