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「風評被害」の影響続く 東日本大震災の影響を調査  日本政策金融公庫

 日本政策金融公庫の農林水産事業は東日本大震災の影響について農業、食品産業、消費者への特別調査を1月に実施し、その結果を3月6日公表した。

【農業】
◆肉用牛への影響もっとも深刻

 調査は同公庫のスーパーL資金・農業改良資金融資先2万1485先を対象に実施し、7258先から得た回答をもとにした。
 東日本大震災(津波、原発事故なども含む)による農業経営への悪影響について業種と地域別に聞いたところ、全国では「現在も(悪影響が)ある」が31.4%、「以前はあったが今はない」が23.0%だったが、岩手・宮城・福島の3県では「現在もある」が71.4%、茨城・栃木・群馬・千葉の関東4県は56.3%となっている。
 業種別では「現在もある」との回答がもっとも多かったのが肉用牛で77.8%。岩手・宮城・福島の3県でも肉用牛への悪影響が98.6%ともっとも高く、次いで酪農が95.2%であることから、特に東北3県の畜産の厳しい状況がうかがえる。
 また悪影響の要因としてもっとも多かったのが「販売価格の下落」。一方、東北と関東、業種別では稲作と茶は「風評被害」がもっとも多かった。

東日本大震災(津波、原発事故なども含む)による農業経営への悪影響について


【食品産業】
◆風評被害、北関東にも強い影響

 全国の食品関係企業6684社を対象に実施し、2367社から得た回答をもとにした。
 東日本大震災の影響について「現在も残っている」という企業は全国で35.2%だったのに対し、岩手・宮城・福島は63.9%となった。一方「福島第一原発事故の影響」は全国で44.1%と震災よりも影響が表れている。また岩手・宮城・福島で「現在も残っている」が68.9%であるのに対し、北関東では72.7%と東北を上回る結果となった。
 津波・原発事故を含む大震災で受けた影響への対応について聞いたところ、もっとも多かったのが「仕入れ先、製品、商品の変更、開拓」で54.3%、次いで「正確な情報の収集、提供」で27.8%だった。

震災と原発事故の影響


【消費者】
◆買い控えの改善は鈍く

 全国の20〜70歳代の男女2000人に1月1〜20日までインターネットで実施した調査結果をもとにした。
 原発事故後の食品購買意欲について調査したところ、「原発事故の影響があると考える地域の生産物を買わない」という人は生鮮食品で37.8%で昨年7月の前回調査(37.0%)とほぼ変わらず。加工食品は32.6%で前回の34.8%からやや改善した。
 一方「影響は気にならない」、「買う」という人は生鮮食品で前回から1.8%増の30.0%、加工食品では同2.6%増の33.2%となった。若干買い控えは改善しているものの依然「買わない」人が「買う」人を上回っている。
 「買わない」という人に原発事故の影響があると考える地域の生産物を購入するのに必要な事項を聞いたところ、「政府等による検査」が生鮮・加工食品ともに3割強でもっとも高かった。
 原発事故後の国産食品のイメージについては約8割の人が「変わらない」とした。東北・関東産についても46.7%が「変わらない」、約2割の人が「一時的に悪い方向に変わったが元に戻った」とし、これらを合わせると約7割の人にイメージの変化がないことがわかった。

消費者の原発事故後の食品購買意欲について


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