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ハイブリッド米で反収14俵2017年11月27日

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【(株)米穀新聞社記者・熊野孝文】

 外食・中食向けの需要と産地をどうマッチングさせるかが米マーケットの課題だが、民間育種された多収米が続々と登場している。そんな業界の動きを探ると……。

たわわに実る稲穂(イメージ) 茨城県のコメ集荷業者から今年初めて契約栽培した品種の収穫情報が寄せられた。
 契約栽培に応じた生産者は8名で、このうち3人が1反14俵、一番少ない人が10俵、それ以外の人が11俵から13俵の収量があったという。この地区の平年反収は9俵程度なので驚異的な多収になったという報告。
 この品種は豊田通商が普及拡大を推進しているハイブリッド米「とうごう」。とうごうは一般うるち系の1号、2号と低アミロース系の3号、4号が品種登録されている。29年産は前年より42.5%増の600haが全国で作付された。同社では毎年詳しく作付した生産者から収穫量のデータを取り寄せており、28年産の最高収量は反1005㎏、秋田県大潟村でも888㎏の収量が得られた。同社では、とうごうの収量性は同じ地区の在来品種に比べ30%~50%高いとし「作付面積を毎年倍増すべく加速したい」と張り切っている。生産されたとうごうは生産者や契約栽培した集荷業者が独自に販売しても良いほか、豊田通商が買取り自社グループの事業所給食の会社への販売やパックご飯等の原料米としても使われている。

(※写真はイメージです)

 ハイブリッド米の草分け的存在と言えば三井化学アグロの「みつひかり」が知られており、現在、民間育種され検査銘柄になっている26品種のうち最も作付面積が多いのがみつひかりである。ところが26年産からの作付面積推移をみると、26年1650ha、27年1500ha、28年1400haと減り続けており、危機感を感じた同社では生産者や販売業者の参加を得て九州で全国大会を開催し29年産で2000haという目標を掲げ、協力を求めた。民間育種された品種の中で最も作付面積が多いと言っても全検査銘柄260品種の中では61位に留まっており、同社では作付面積が減少した理由の一つに国が推進する飼料用米政策の影響を挙げているが、もうひとつの要因は種子代が高いことにある。
 とうごうもみつひかりも1㎏4000円以上で一般種子に比べると5倍程度の価格になる。ハイブリッドの種子生産は大変手間がかかり、反当り3俵程度しか種子が確保できないという宿命を背負っている。種子代が高くてもそれ以上の生産性を上げられれば生産者にとってメリットがあるのだが、それを理解してもらい普及するのは容易ではない。

◆IT企業、宗教法人も

 民間育種業者の中にはハイブリッド種ではなく、従来の選抜育種で時間をかけて多くの新品種を登録、普及拡大しているところもある。この普及策は実にユニークで、品種登録した新品種を普及したいという企業に育種権利とも売ってしまう。買った企業の中には肥料業者や米卸、商社のほかIT企業もある。驚くことに宗教法人までが育種権の買取りに名乗りをあげたという。
 選抜育種では一つの品種を作るのに10年かかると言われているので、それを簡単に売ってしまってはビジネスとして成り立たないと思われるが、それを成り立たせているのが、育種ノウハウについては大手商社が巨額の資金を注ぎ込んで確立して、それをこの会社が引き継いだことと、育種権を買った企業からは栽培指導料を得ているからである。
 この会社が近年、品種登録した「ほむすめ舞」、「大粒ダイヤ」、「縁結び」は共通した品種特性がある。それは多収である。交配の親は母方が低アミロース系の良食味米であるのに対して父方は全て多収品種である。昨年から大粒ダイヤを試験栽培している福島県の大規模稲作農家はビッグサイトで開催された外食・中食業界専門展示会にこの品種を持ち込んで来場者に紹介、契約栽培を持ちかけていたほか、縁結びを買い取った中部地区のコメ卸は地元のスーパーと共同で、この名前を活かした商品作りを手掛けている。宗教法人が欲しがったのもこの品種である。
 もうひとつ直播栽培に特化した品種を育種、来年から本格的にその品種を用いた試験栽培を1000ha規模で実施する計画を立てている民間育種会社もある。
 これら民間育種会社の共通した新品種開発のテーマは多収で、市場のターゲットは業務用である。

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