統治でなく「協治」で2017年12月22日
農協は「農業協同組合」が正式名称で、「JA」は農協のニックネームである。平成4年から農協のロゴマーク・稲穂マークが「JA」に変わった。以来、農協のトップのなかには公式の場でのあいさつで、正式名称の「農業協同組合」を名乗らず「JA」と自称するケースが多くなった。ただ「JA」には協同組合の「cooperative」の意味が含まれていない。
危惧されるのは「JA」と発しているうちに、組合員が「農協が協同組合である」という認識を喪失してしまうことである。全中もこのロゴマークの欠点(名が体を表していない)に気づいたのか、過日、全国紙に「農協は協同組合です」と全面広告を出した。
日本農業新聞に「愛媛たいき農協の稲穂マーク」の記事が掲載された。稲穂マークのTシャツをつくり、役職員で着用しているという写真入りである。愛媛県の愛媛たいき農協に伺ったところ、ロゴマークの商標登録を受け継いだとのこと。他にも稲穂のロゴを惜しむ声は少なくない。協同組合は互いに助け合う組織であるという自覚と認識の喪失への警鐘のように思う。
農協と呼ばずJAと自称したことが徐々に組合員の中に浸潤し、「協同」のポリシーが失われていくことが極めて心配である。稲穂マークの復刻版、あるいはICA(国際協同組合同盟)が定めた協同組合マークのCOOPマークのバッチを作成したらどうだろうか。国産農産物の消費拡大と、食料の自給率向上をめざす運動としてのシンボルマーク「笑味(えみ)ちゃん」もいいが、組織のシンボルマークに大切な「相互扶助=COOP」の意味が欠落したのでは、画竜点睛を欠くことになる。
◇ ◇
マネジメント(管理)ということばがある。農協の組織機構図は縦型ピラミッドが多い。上位に組合長、次に総会・総代会、理事会となっているが、実質は組合長、専務、常務、部長、支店...と続く。いわゆる上意下達である。農協は民主的組織だということを考慮すれば、ふくしま未来農協(福島県)、梨北農協(山梨県)が採用しているように、横型組織機構図の方が適していると思う。その方がフラットで温かみのある組合のイメージが感じ取れる。
一方、ガバナンス(統治)という言葉がある。普通、「統治」と邦訳されたり、そのまま「ガバナンス」として使われたりするが、農協の場合は「協治」が適していると思う。
協治とは、まず組合員、次に集落組織、続いて地区運営委員会、女性部・青壮年部など下部組織の代表、次に理事会の専門委員会、そして理事会。これがまさしく組合員の意思反映システムだ。この組合員の意思を反映させて組合をマネジメントするのが役職員で、「共に治める」ということである。
以上のマネジメント機構図とガバナンス(意思反映のシステム)機構図を一対として、農協の組織機構図としたい。作成にあたっては組合員と共に企画・立案(例えば、長野県松本ハイランド農協の「車座集会」)し、意思反映システムが有効に機能するよう十分考慮すること、つまり組合員目線が重要だと思う。
全国で、創設時1万3000あまりの農協が、いまや650と、20分の1になった。行政域を越え、JAトップの権限と責任も大きくなり、品格も問われる。昨今は、合併の弊害が顕著となり、農協のあり方も内外から問われている。
地域の活性化を考えるとき、過剰な一極集中でなく、分権化(地区運営委員会など)し、そこに権限と予算を託して組織に活力を呼び起こすことが肝要である。どこかの国のトップを真似て傲慢症候群にならないよう、農協は「協治」であることを忘れないよう願いたい。
全中は650の農協に託すのではなく直接、旧農協1万3000エリアの地区代表と情報を共有し、組合員が参画活動できるようリーダーシップを発揮し、役職員とは異なる、組合員のための協治システムの活性化に協力すべきだと思う。これによって役職員に片寄ったマネジメントから、組合員組織と協同の運営体制に変り、アクティブメンバーシップ再構築につながるのではないかと期待する。
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