主食用米増産に走る千葉県2018年1月16日
今週18日、日本コメ市場主催の取引会が東京、大阪、福岡の3会場で開催される。
市場関係者によると上場数量(売り希望数量)が減少しそうだと言っている。本来であれば出来秋から3月ごろまでは当該年産の売り物が多く、取引も活発化するはずなのだが、29年産は出来秋から売り物が薄く、価格だけが上昇するというパターンになっている。その最大の要因は主食用米需給のタイト化にある。
コメ卸団体の全米販が昨年末にまとめた最新の需給見通しによると今年10月末の在庫は27万tまで減少すると予測している。全米販は国の需給見通しとは違い旧米穀年度に置き換えているのだが、コメ業界にとってはこちらの方が馴染みがあるのでわかり易い。
それによると平成29年11月から平成30年10月末までの需給見通しは、期初供給量が29年10月末の持ち越し在庫が39万t(28年産米)プラス29年産主食用生産量731万t、計770万t。これに対して年度内の需要を743万tと推計、この分を差し引くと30年10月末の在庫は27万tになるいう計算。国の需給見通しと比較した表は別表の通りだが、表では平成31米穀年度の見通しも出しており、それには平成31年10月末の持ち越し在庫はさらに減少し23万tになると予測している。
需給見通しは一見単純そうに見えるが、様々な要素を加えると実に複雑になる。重要な要素としては、コメの需要量をどう見るかで、それによっても数値が変動するが、農水省は価格上昇による消費減を試算しているものの、その係数は公表しない。本来であれば価格上昇による消費減をどう見るのかをたたき台にして食糧部会を開催した方が良いのだが、いまだにそうした議論が出てこないのが不思議だ。
全米販の資料には仕向け先別コメ販売量の増減が出ており、興味深いデータなので紹介したい。それは29年10月一か月間のコメ販売量を聞き取り調査したもので、前年10月との比較で大手スーパー向けは増えたと答えた比率が5.7%、やや増えた20.0%、合計25.7%であるのに対して、減った25.7%、やや減った11.4%、合計37.1%になっている。これに対して中食向けは増えた5.8%、やや増えた25.0%、合計30.8%で、減った1.9%、やや減った7.7%、合計9.6%になっており、対照的な数値が出ている。家庭用精米の販売が落ち込み、中食向けが増加しているという傾向が続いている状況が伺える。
販売経路の変化では何といっても大きな変化はネット販売の増加で、昨年1年間で最もその比率が高かった月では12.9%の消費者がネットでコメを購入したと答えている。大手卸の中にはアマゾン1社で月300tもの精米を販売しているところもあり、流通ルートの変化が止まりそうにない。この卸はネット販売の専門部署を立ち上げ、越境ECで海外にまでコメを宅配販売する計画を進めている。
流通経路の変化に対応するネット販売にしろ、需要構造の変化に対応する中食向け販売にシフトするにしろ、流通業者としては当然の行為だが、そこに大きな壁として立ちはだかっているのが仕入れ対策である。
年明け早々に相対販売価格の値上げが全農県本部から卸に通知された。卸は値上げは容認して、その分必要量を確保したいのだが、それに応じる県本部は皆無である。ではどうするか? 必要量は市中で拾うか、日本コメ市場の取引会に参加して買うしかない。結果、実勢相場がさらに値上がりするというパターンを繰り返し、コメの消費減を招くという負のスパイラルが続くことになる
平成30年産から生産調整配分数量が示されなくなり、各産地とも"目安"数量を示しており、大方の産地がこれまでの生産調整数量と同水準の数量を目安数量として面積カウントした数値を示している。異質なのはこれまで一回も生産調整を達成したことがない千葉県で、千葉県は「千葉県産米には主食用需要がある」とし、30年産の主食用米の生産目安数量を1万8674t増やして市町村に配分した。千葉県の判断がコメの負のスパイラルを断ち切る判断なのか否かは歴史に委ねるしかない。
(関連記事)
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