和食ごはん店をオープン "コメ"ニーズを探るコメ卸2018年1月30日
神奈川県のコメ卸(株)ミツハシが新しくオープンした和食レストランのお披露目の会見が1月24日に行われた。
場所は、みなとみらい駅から歩いて3分ほどのところにあるグランドセントラルテラスという高層ビルの1階にある。店舗の坪数は23坪で客席は36席。この店のウリは「美味しいご飯を提供」するということで、店名も「GOHANYA'GOHAN」と言う。提供するご飯の使用銘柄は月ごとに替わり、オープンからこれまでに北海道ゆめぴりか、新潟コシヒカリ、山形はえぬき、山形つや姫の順に提供されているほか、2種類の玄米が用意されている。
玄米は同社のオリジナル商品で、少し研削して食べやすくした「美食玄米」と巨大胚芽米を使った「胚芽の大きな胚芽米」という商品名で、玄米と白米とブレンドした商品。おかわりは無料で、女性客の中には最初に白ごはんを食べて次に玄米ご飯をおかわりする人もおり、玄米ごはんの注文も多いという。炊き方にもこだわっており、全て「土鍋」で炊いている。
会見の当日は、山形つや姫マイスターと美食玄米と胚芽の大きな胚芽米の3種類のご飯が試食提供された。おかずは青森南蛮漬け、いくらの醤油漬け、鮭のルイベ漬け、置賜の赤かぶ漬け、自家製牛そぼろのほかに、こだわり生卵として奥久慈産の卵が提供された。この店のもう一つのウリが各産地のこだわった食材を使った惣菜メニューで、生卵ごはんもその一つ。試食すると濃厚な卵にご飯が良く合い美味であった。
(株)ミツハシは古くから炊飯事業を手掛けており、現在、全国3カ所に炊飯工場を有する「ご飯のプロ」である。その会社がなぜ今こだわったご飯を提供する店をオープンしたのか? 経営トップは、炊飯事業はまだまだビジネスとして伸ばせる可能性があり、そのためには消費者がどのようなご飯を求めているのか知ることが大切で「自らご飯屋になって行く」と言っている。
「求められるご飯」とは何なのか? それは美味しいご飯に決まっているだろうと言われそうだが、その美味しさの評価は人によって変わって来る。
この日、日本炊飯協会が開催した「日本米とカルローズ」のご飯販売結果報告会でも意外な結果が発表された。この実証試験をおこなった日本炊飯協会の会員社はSBSでカルローズ300tを輸入、それを炊飯して日本産ヒノヒカリを炊飯したご飯を両方並べて一緒に量り売りで消費者に提供した。初回はカルローズごはんを100g50円、ヒノヒカリごはんを60円で販売したが、カルローズご飯を注文する人の割合が10%以下であったので、2回目はカルローズごはんを50円に据え置き、ヒノヒカリごはんを70円に値上げして販売したもののそれでも結果が変わらなかった。国産米嗜好が強いということは分かったが、意外な結果とはそのことを言っているのではない。
この会社では実際に消費者にカルローズご飯を提供する前に124名の社員でカルローズとヒノヒカリの食べ比べテストを行った。その結果、10才代の男性社員と50~60才代の女性社員が「カルローズの方が美味しい」と答えた割合が高かったのである。なぜそうした結果が生じたのか実施者側でも分からないとしていたが、感覚としては10代の男子がカルローズを美味しいと答えたのは分かるような気がするが、長年国産米を食べ続けている50才~60才の女性がカルローズの方が美味しいと答えたのはなぜなのか分からない。
日曜日に、国産の各地のこだわり米はもちろん海外にまで出かけて様々なコメを試食しているという日本のコメ育種家と都内で懇親する機会があった。その育種家が中国で経験したご飯は「長粒種と短粒種をブレンドして炊く」ご飯で、中国人はこうして炊いたご飯が一番美味しいと感じていると言っていた。その大きな理由は炊き上がったときの長粒種(ジャスミン米)の香りにあるのではないかというのが育種家の見解。
ご飯を美味しいと感じる大きな要素に香りがあり、穀検の食味評価ランキングの評価項目の中に「香り」が入っていることを見ても分かる。育種家は日本米でそれに近い香りがあるのは「つや姫」と「龍の瞳」であると言っていたが、食味だけでなく香りまでごはんの評価を決める要素になるということで、なんともごはんの世界は奥が深いが、育種家が「田んぼに入って、イネの匂いを嗅いでも美味しい品種なのか分かる」と言ったのにはさすがに驚いた。
(関連記事)
・農協運動の仲間たちが熱く集う!(18.01.26)
・香港日本農水産物・食品輸出商談会開催(18.01.18)
・正月料理をテーマに 和食会議がセッション(17.11.24)
・農業を夢のある世界に 米の需要を拡大する【藤尾 益雄(株)神明代表取締役社長】(17.11.20)
・海外の日本食レストラン11万8000店に-農水省調査(17.11.09)
・「世界最高米」事業をスタート 東洋ライス(18.01.29)
重要な記事
最新の記事
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日
-
絵袋種子「実咲」シリーズ 秋の新商品9点を発売 サカタのタネ2025年4月24日
-
『花屋ならではの農福連携』胡蝶蘭栽培「AlonAlon」と取引 雇用も開始 第一園芸2025年4月24日
-
果実のフードロス削減・農家支援「氷結mottainaiプロジェクト」企業横断型に進化 キリン2025年4月24日
-
わさびの大規模植物工場で栽培技術開発 海外市場に向けて生産体制構築へ NEXTAGE2025年4月24日
-
サラダクラブ「Grower of Salad Club 2025」最優秀賞6産地を表彰2025年4月24日
-
22世紀の食や農業の未来に「あったらいいな」を募集第三回「未来エッセイ2101」AFJ2025年4月24日