農作業事故は年間7万件発生と推測 JA共済連2018年8月10日
・JA共済金支払いデータによる事故発生状況分析
JA共済連は、8月9日に、これまで補償提供を通じて蓄積してきた共済金支払データを活用して、農作業事故の発生状況について分析した結果を公表した。
これまで農林水産省が「農作業死亡事故」の調査結果を公表し、農業における死亡事故発生割合が他産業と比較して多く、農業の危険性が指摘されてきたが、死亡以外の事故を含めた農作業事故の全体像については統計データが不足し、十分な分析がなされてこなかった。
こうしたことから、JA共済連は2万件を超える共済金支払データに基づいて農作業事故の発生状況を分析するとともに、このデータを農林水産省をはじめとする行政機関、農作業の安全啓発に取り組む農研機構や日本農村医学学会など関係機関団体と共有する枠組みを構築することで、啓発活動の充実や新たな知見の創出につなげていきたいとしている。
◆死亡事故は「氷山の一角」
JA共済連は、死亡・後遺障害・傷害事故は傷害共済のデータを、物損事故については自動車共済のデータを元に、平成25年から28年の4年間について、一定の条件で抽出した農作業事故を分析した。
それによると、死亡事故は65件、後遺傷害事故は153件、傷害事故は1万4582件の計1万4800件となっている。これ以外に物損事故が1万859件発生している。
「傷害の程度別」事故発生割合でみると、
死亡:後遺障害:障害の割合は、1:2:217となり事故発生件数に占める「死亡」の割合は0.5%、「後遺障害」は1.1%となり、「死亡事故は極一部」だと指摘している。
この割合を活用して、農水省調査による28年度の死亡事故312件(0.5%として)を踏まえて農作業事故を推測すると「年間農作業事故は7万件発生している」のではないかと指摘している。
◆農機による重大事故が多い
事故を農業事故・施設事故・その他の事故の「発生区分別」に分析すると、事故全体では、農機2:施設2:その他6と「その他の事故」が多いが、死亡や後遺障害など「重大事故」に限定すると、農機7:施設0:その他3と、「農機事故」が圧倒的に多いことがわかる。死亡事故については、農水省調査と同様の傾向が確認されている。
また、事故には「環境」「物」「人」の3つの因子があり、農業では産業の特性としてそれぞれの因子が構造的な課題を抱えているといわれている。
環境面では斜面、高所作業が多いことから、「転倒(同一平面)」「墜落」が事故全体の過半数を占めている。また施設が狭く暗いことや炎天下が多いことから、施設事故が約2割を占め、発生時期は7月から9月で約3割を占めている。さらに「物」の機械・用具や牛などの生物だけによる事故が約5割を占めるなど、こうした因子が「事故を起こしやすい」という。
そして「重大事故につながりやすい」要因として、先に指摘のように、機械・用具・家畜の事故の「重症度」は他の事故よりも高いこと。高齢なほど重症度が高いこと。ワンオペレーションは「事故後すぐに発見されない」ケースが散見されるという。
◆ビックデータを見える化
この分析の優れている点は、いま紹介した事例だけではなく、ビックデータの分析結果に基づいて、例えば優先的に対処すべきリスクを「見える化」することで、関係者間で情報の共有を可能にしていることだといえる。「見える化」されたリスクマップをみると、素人でもさまざまな「事故の型」を相対的に比較して理解することが容易になる。
分析及び結果の詳細はJA共済のホームページで見ることができる。
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