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金融共済:平成29年度JA共済優績組合表彰

【市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長に聞く】明日の暮らしと営農支えるJA共済2018年5月16日

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・インタビュア落合誠一(東京大学名誉教授)

 JA共済の普及推進で優秀な成績を残したJAを表彰する「平成29年度JA共済優績組合表彰」の日が今年もやってきた。少子高齢化や農業人口の減少、さらには集落営農や法人経営体が増加するなど、農業基盤の構造変化が急速に進んでいる環境下、目標を達成した大賞受賞組合をはじめとする多くの組合が表彰式に列席し表彰を受ける。「地域に広げる助け合いの心~くらしと営農を支えるJA共済~」というスローガンを掲げた「3か年計画」も、いよいよ平成30年度が最終年度となる。そこで、JA共済事業を取り巻く状況と今後の事業のあり方などについて、JA共済連の市村幸太郎経営管理委員会会長にお話しいただいた。聞き手は落合誠一東京大学名誉教授にお願いした。

絆の強い力で 7年連続目標達成

 

◆時代の変化に対応し 地域に不可欠な存在に市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長

 落合 平成29年度の普及推進は7年連続で全国の推進総合目標を達成するなど、厳しい環境下にも関わらず、大きな成果を上げられました。

 市村 推進総合目標を7年連続で達成できたことは、言うまでもなく、JA役職員の皆さまのご尽力と、都道府県本部長をはじめとする連合会役職員の努力の賜物であり、この紙面を借りて、心より感謝と敬意を表したいと思います。そして、もう一つ付け加えると、元来、JA共済にあった伝統の力、つまり"目標達成に向けた完遂力"もその原動力になったことは間違いありません。
 この完遂力がどこから来るのかを考えてみると、私はJAとJA共済連との絆の強さにあると思っています。JAでは主に販売事業、購買事業、信用事業、そして共済事業を行っていますが、昔からJAとJA共済連との結びつきは強いと感じています。そしてこの絆が強く太く存在する限り、経営環境で多少の浮き沈みがあろうとも、必ず乗り切っていけるという自負があります。

(写真)市村幸太郎・JA共済連経営管理委員会会長

 

 落合 それは協同組合精神、相互扶助の精神の濃さの表れということでしょうか。

 市村 それを象徴するのが、JA共済ビルには賀川豊彦の肖像画と直筆の揮毫が掲げられているということです。賀川豊彦は、「協同」の精神のもと農民運動に尽力しましたが、その根底にあるのは「利他」と「相互扶助」の精神です。共済事業は、この精神をそのまま具現化したものと言え、JA共済の精神として根付いているのです。

 落合 JA共済を取り巻く事業環境は急速に変化していますが、この点はいかがですか。

 市村 日本は、急激な人口減少と少子高齢化が進行すると予測されています。現在の国内の人口が約1億2700万人で、そのうち約3500万人が65歳以上です。つまり、全体の約3割が高齢者なのです。今後もこの比率は上がり続け、2050年には、人口は1億人を切り、65歳以上の高齢者は約4割に達すると言われています。
 こうした時代の変化に伴い、経済安定を維持しつつ経済規模を縮小していく「縮小均衡」を図っていかなくてはならないでしょう。JA共済の仕組みや契約内容も時代に即した形に変化させていく必要があります。
 また、地域社会が縮小していく中にあっても、JAとJA共済は地域社会にとって不可欠なインフラのような役割を求められるでしょう。ですから、JAとJA共済連は、その地域で何とか踏ん張って、安定した事業運営を行っていくことが何より大事なのです。その結果が、地域社会や農村社会のためにもなり、ひいては、日本全体が調和のとれた社会になっていくと思います。そのためにも、JAとJA共済連は事業を継続していくことが大切なのです。もちろん、経営はいま以上にシビアなコントロールを必要とします。

 

◆組合員のために 総合事業の力を発揮

落合誠一・東京大学名誉教授 落合 協同組合精神を保ちつつ、時代の荒波をどう乗り切るか。難しい舵取りが求められますね。

 市村 来年度からJA全中が一般社団法人化し、決算監査などは民間の公認会計士に委ねることになります。今後、一般企業と同様に収益性の面も含め、より厳格な監査が行なわれることが予想されますが、収益を目的とした考え方と協同組合精神とのバランスをとることは大変なことではないかと思います。JAは総合事業を営んでおり、地域に密着した事業を展開しています。採算が取れないからといって、簡単に切り捨てることはできないからです。例えば、地域社会で人口減少が進むと、商業施設などは採算がとれず撤退するケースもあるかもしれませんが、大規模店舗の進出などによって、街角の八百屋さんや総菜屋さん、お米屋さん、家庭用品屋さんなどはすでに店を閉めているところも少なくありません。そうなると、地方の方々はどうやって暮らしを営むのでしょうか。地域で事業を営むJAは、簡単に撤退などできないのです。これは直接的にはJA共済とは関係のないように思われますが、「ひと・いえ・くるまの総合保障」を提供するJA共済はいざという時のために、いち早く組合員のために力にならなくてはなりません。そのためには、JAが地域社会から撤退することは出来ないのです。
 時代が変わり、少子高齢化が進み、農業人口・生産労働人口も減っていくと、この先の経済規模は縮小せざるを得ません。この「縮小均衡」の時代をどう迎えるか。「一人は万人のため、万人は一人のために」という「協同組合」の灯は決して消してはいけません。この信念を失わずに、市場の大きさに合わせてうまくバランスを取りながらやっていけば、安定的に事業を継続していくことが出来るはずです。
 いま、「JAの創造的自己改革」が示されたことは、全国のJAに共通した危機意識を持つためにも良かったと思います。

(写真)落合誠一・東京大学名誉教授

 

◆「魂のこもった経営」が築く人と人との信頼関係

 落合 地域から湧き上がる声をきちんと受け止めていくことが大切ですね。
 
 市村 経営の合理化という点でいえば、私はAIやロボット技術が大きな役割を果たしていくと見ています。身の丈にあった経営を進めていく上では、定型化した業務はAIなどを活用し経費の削減を考えていく時代は来るかもしれません。しかし、相談業務などはAI・ロボット化できないので、そこはいままで以上に力を注いでいくことになるでしょう。
 特に、今後は例えば「相続」などに関する相談業務も多くなっていくでしょう。こうしたニーズをしっかり受け止めていくためのポイントは、私は「魂のこもった経営」に尽きるのではないかと考えます。リーダーの情熱が部下との絆・信頼を生み、人を動かすのではないでしょうか。
 
 落合 ガバナンスという点でも興味深いお話しですね。最近では経営の監視として「モニタリング」という意味合いが強い傾向がありますが、その点はいかがですか。

 市村 私は経営の基本はやはり「企業は人なり」で、経営者がしっかりと物事をわきまえることが大事なことだと思います。モニタリングなどの経営管理理論なり手法は、「個」が確立した社会では成立するかもしれませんが、日本のような島国で農耕文化をベースとしたファジーな部分をもつ社会では、「オンかオフ」、「0か1」だけでは推し量れない経営の妙というものがあるのだと私は思います。ノーベル化学賞を受賞した研究者のエピソードに用いられる「セレンディピティ」という言葉に表されるように、形や決まり事ばかりに気をとられず、地道な挑戦と失敗の繰り返しの中から新たな成功が導かれることもあるのです。私は経営の本質はそんなところにあると考えています。

 落合 最後に、今年も優秀な成績を収めたJAにメッセージをお願いします。

 市村 「本当に御苦労さまでした。よく頑張ってくださいました。」と申し上げたいです。一般的に、部下が優秀な成績をあげたところの上司や幹部というのは「部下から慕われている」その点で一致すると思います。そうした包容力をもちしっかりと大きなビジョンを示し、後は部下を信頼して任せる組織は、風通しが良く伸び伸びとしています。そのような環境では彼らは期待に応えようと努力します。自ずと成績も上がる。これは私の経験から言っても間違いないし、それが日本流の経営ガバナンスの手本だと確信しています。

 落合 本日は貴重なお話しをありがとうございました。

 

【インタビューを終えて】

 市村会長のインタビューを終えて感じたことは、厳しい時代だからこそ協同組合の存在意義があり、その力が発揮されるとの強い信念でした。確かに対決しなければならない困難な課題は山積している。しかしそれにひるむことなく、協同組合精神をもって全力を尽くすとの表明は、JA共済連の今後の確かな前進を大いに期待させるものであり、必ずや誇るべき成果をもたらすことでしょう。(落合)

 

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