【現場から振り返る2018年】JAいわて花巻・阿部勝昭組合長に聞く 総自由化急ピッチ 災害も続発(2)2018年12月25日
・自給力強化と国民理解が重要
・金足農高勇気与える
・国民の理解さらに促進
◆金足農高勇気与える
今年を振り返ったときに忘れられないのが、やはり秋田県の金足農高の夏の甲子園決勝進出です。われわれ岩手の農業団体も支援しましたが、全国から応援が集まったということです。農高がんばれ、と一つになったのはうれしかったし、われわれも勇気づけられました。農業高校にも注目が集まり、これからの若い農業者育成にも何か弾みがついたような感じです。
スポーツ関連では2月の平昌オリンピックでカーリング女子が銅メダルをとりましたが、注目されたのはモグモグタイムで食べていたイチゴ。元は日本の品種で遺伝資源が持ち出されたということでした。先日は輸出禁止の和牛の精液が検査を受けずに中国に持ち出されようとしたというニュースもありました。
日本の貴重な遺伝資源が安易に持ち出されていくのは非常に残念ですが、一方では日本の農産物の優秀さが認められているということでもある。そういう優良な農産物を地方で守っていくことも大事になっていると感じました。今年は4月に種子法が廃止されたわけですが、在来種など地方の豊かな遺伝資源を守っている農家にも手を差し伸べてもらいたいと思います。
(写真)甲子園準優勝を報告する金農ナイン
◆国民の理解さらに促進
―自給率が38%まで低下していることは大きな問題だと思いますが、国民全体としては理解が進みません。現場ではどのように感じていますか。
農業者の数は人口のわずか2%ですが、それでもこれだけの食料生産を担っているということもできると思います。しかし、そういう国内生産の現状について国民に認識されていないのではと感じます。テレビでも、たとえばオランダの農業生産力などを紹介する番組はありますが、日本の農業の現状を伝えるというものを見たことはないですね。
国連の委員会が小農宣言を採択し、さらに来年からの10年を国連は「家族農業の10年」に制定しました。これまでの国際家族農業年や国際協同組合年などが制定されましたが、家族農業の10年というのは、今までのように一過性で終わらせてはいけないということだと思います。
そもそも小農とは何かということが理解されなければなりません。私はそれはみんなが農業をしてみんなで国土を守るということだと考えています。その助け合いは協同組合です。
気候変動が当たり前なるなかで、われわれ農業側も効率的な生産技術ばかりでなく原点に戻って考える必要があります。農業生産力、食料供給力を高めていくというのがやはり現場に求められていることだと思います。
【2018年キーワード】
『自由化・自給率・自然災害』
【TPP11】
5月18日、衆議院外務委員会で可決。午後の本会議に緊急上程され与党の賛成多数で可決。衆院本会議では野党が反対討論をしたものの、与党からの賛成討論はなし。関連法案6月29日に参議院本会議で成立。10月31日、茂木経済再生担当相は12月30日発効を発表。牛肉は38.5%の関税が初年度に27.5%に。コメの豪州向けSBS枠も発効。
【TAG】
9月26日、安倍首相、米トランプ大統領との首脳会談で農産品を含む物品貿易交渉入りに合意。政府は日米FTAではなく物品貿易協定(TAG=Trade Agreement on goods)と説明。日米共同声明には「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても交渉を開始」との記述。2019年1月交渉開始予定。
【日EU・EPA】
7月17日、安倍首相とEUのトゥスクEU理事会議長、ユンカーEU委員会委員長が首相官邸で日EU・EPAに署名。合意内容は日本側関税撤廃率は農林水産品で約82%。米は関税削減・撤廃から「除外」で合意。工業品等は100%関税撤廃する。12日8日、臨時国会で承認された。
【食料自給率】
8月8日、農林水産省は平成29年度の食料自給率を公表。カロリーベースの食料自給率は2年連続で38%となった。生産額ベースの自給率は2ポイント下がって65%。
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