グローバルGAPをJAの結集の武器に 大林茂松・JAグリーン近江常務理事2017年9月7日
平成29年8月8日早朝、JAグリーン近江の部会組織である「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」がグローバルGAP認証を受けたとの朗報が飛び込んできた。水稲174ha、構成員332戸での団体認証である。
JAグリーン近江では以前から集落営農の法人化に力を入れており、現在123法人が設立され、各法人にはJAも法人の構成員として出資し、法人もJAの正組合員になって出資。集落営農法人連絡協議会や支店別の協議会を設置し、JAと法人のパートナーシップの関係を築いている。また、担い手についても支店単位で個人、法人、集落営農法人等で組織する協議会を設置し話し合いを進めているところである。
このような中で、一つのモデルとして3年前から4つの集落営農法人が協同して、JAの部会の中でグローバルGAPの取得に取り組み、総経営面積は350ha(うち水稲174ha)と大きな面積で、当面水稲での認証を目指し、今回の認証取得となった。
取得に対するJAの指導はTACを通じて行っており、取得の費用などについて、当JA独自の担い手経営革新事業(通称TACチャレンジ事業)等で支援をしている。
(写真)GAP認証で水田を回る老蘇地区の集落営農法人のメンバー
グローバルGAPの取得で考えられるメリットは、(1)国際標準の生産工程管理を行う生産者として、販路拡大にアピールできる、(2)輸出を目指す際の「資格」が獲得できる、(3)インバウンドに対するPRにも活用できる、(4)生産工程が明確になることで生産性の向上が図れる、(5)適切な肥料、農薬などの散布によるコスト低減と収量の増加が期待できる、(6)新人用のマニュアルとして活用し、技術習得の時間短縮が可能になる(7)「食の安全」「環境保全」「労働の安全」に対する生産者としての責任を果たすことができる、(8)消費者や取引先からの問い合わせ、苦情などに迅速かつ適切な対応ができる、(9)適切な危機対応による信頼の獲得などである。
だが、実際グローバルGAPに取り組んでみて分かることだが、新しく余計なことに取り組み、余計な事務作業が増えるということではなく、JAや生産者が既に「GAPをしている」ことに気づくことである。例えば、作付計画や土壌に応じた作物選定、作物に合わせた施肥や防除計画、機械の整備や清掃、さらには理事会などによる昨年の反省や改善策の検討など、どの集落営農法人でも、また個別の担い手でもすでに取り組んでいることである。
グローバルGAPの認証には、大きく2つの枠組みがある。1つは個別認証もう1つは団体認証(第3者認証)である。JAグリーン近江で取り組んでいるのは団体認証である。団体認証とは、団体の管理体制がGAPであるかどうかを認証する、つまり団体に属するそれぞれの農場(農家)の管理を認証するのではなく、各農家の管理状況を含め、団体がきちんと管理できているかを認証する取り組みである。
従って、グローバルGAPの認証を受けるのはJAの部会(団体)、当JAでの「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」だ。団体認証のメリットには、(1)各法人がそれぞれで認証を受けるより、審査費用等は安くなる、(2)団体事務局が農場管理指導をすることで、各農場の管理負担を軽減できる(約300ある管理項目を一農家が全部やらなくてすむ。管理作業の分散)、(3)地域としてまとまることで、産地ブランド力が形成できる、などだと思われる。
ところで最近の集落営農法人の悩みの種は、後継者や構成組合員への栽培技術等の継承問題である。個人の経営ではないので、多くの組織では農作業に出役制度を取り入れている。例えば稲作全般をとらえると、育苗や田植え、刈り取り(収穫)等の個々の作業は効率よく進められる半面、近年、水管理や肥培管理、適期病害虫防除などの経験や技術を要する作業はその知識や技術、経験が構成組合員や後継者に伝わっておらず、収穫量の減少や品質の低下を招いている。
グローバルGAP認証取得のメリットは、前述のように生産工程を明確に記録し管理することで生産性の向上が図れることだが、それが後継者や構成組合員のいろいろな作業の実施マニュアルにもなり、技術や知識・経験につながることにもなる。このことが集落営農法人の課題である、今後の構成組合員や後継者に対する栽培技術の継承問題を解決する大きな力となる可能性がある。
また、団体認証のメリットとしては、既に述べたように取得費用の軽減、JAが中心となる管理で農業者の負担軽減や産地ブランド力の向上などが考えられるが、もう一つJA経済事業として重要な要素になる。団体認証の特徴として、部会の各法人(農家)がJA部会以外へ独自で出荷・販売する米や野菜などの農産物は認証対象外になるということがある。
逆の言い方をすれば、JAの部会を通じて出荷・販売をしなければグローバルGAP認証作物として出荷・販売できないことになる。
(写真)大林茂松・JAグリーン近江常務理事
このようなことから、JAがグローバルGAPの団体認証に取り組むことで、今までの営農指導や購買・販売事業に少なからず影響してくると思われるし、また、この取り組みを通じて、農場管理の仕事を戦略的に役割分担し、組合員の労力を軽減することによって、一体感のある団体運営、農業資材の共通化、高い集荷率を実現することにつながると考えられる。
そのためにJAは、より一層、認証作物の有利販売や生産資材価格の低減化に努力をしなければならないが、グローバルGAPをスタンダードにすることで、JAへの結集力が高まるのではないかと思う。グローバルGAP認証を機会にJAパワーをアップしよう!。
(関連記事)
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