【農協研究会・報告(2)】水田フル活用の法制化を 加藤好一・生活クラブ生協連合会会長2017年12月16日
農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大学名誉教授)は12月9日、東京都内で第26回研究会「日欧EPA~TPP11の自由化に抗した食と農の再生課題」を開いた。JAグループ関係者ら70人が参加し3人の報告をもとに議論した。
◆生産者と話し合い徹底
加藤会長は生活クラブ生協と山形県遊佐町との「面的・複合的な産直提携」のこれまでの取り組みを報告しながら、消費者と生産者が分断されない日本の食と農の再生に向けた課題を提起した。
生活クラブが遊佐町との米の産直を始めたのは1971年。米の生産調整が始まった時期であり、以来、「減反」「転作」との戦いであり、面的・複合的な提携に特徴がある。
遊佐町の水田面積は3100ha。2016年度に生活クラブは主食用米(共同開発米)1200ha、10万4000俵を組合員に供給した。しかし、加藤氏によれば「かつて組合員は15~16万俵を食べていたのだから激減。水田を守るためにどうするのか。生産者とともに取り組んだのが転作の積み上げだった」と話す。
農業の現場が直面する問題を理解しようと毎年遊佐には組合員70~80人が訪れて「2泊3日かけて生産者と徹底的に話し合っている」。全国の生活クラブ組合員らが独自に行っている生産者との交流会を含めれば「年間2000回にはなる」という。
生活クラブ向けの水田転作作物は大豆、ナタネ、ソバ、加工用米、加工用トマトなどだが、もっとも面積が大きく長年にわたって力を入れてきたのが飼料用米である。2016年度で373ha。平田牧場の養豚の飼料として利用している。
(写真)加藤好一・生活クラブ生協連合会会長
◆飼料用米と食料安保
平田牧場では17万頭の豚に1万1000tの飼料用米を使った。給与割合は30%。200日で出荷する豚は1頭あたり79kgの米を食べていることになるという。今や、われわれ日本人が1年間に食べる1人あたり量(54.6kg)よりも多いことになる。
こうした転作の取り組みを合計すると、かつてと同じ16万俵の米を供給していることになるという。
豚の飼料への米の給与比率はさらに向上させることもできるし、全国に豚は930万頭が飼養されていることを考えれば、水田を守り自給率を上げるためにも飼料用米の取り組みは本気で考えなければならないと強調する。
しかし、米の生産調整で価格が上がり、飼料用米への助成金支出で消費者にとって財政負担になっているなどという風潮があり、また財務省自身も助成金削減を言い出すあり様だ。加藤氏は「生産者と消費者が分断されてはいけない。飼料用米の取り組みがなければ日本の農業は守れない。それを理解する人々を作り出すのが生協の役割だ」と強調するとともに、猫の目農政から脱却して本気でこの国の農業を再建するためには食料安全保障の最大の要でもある「水田フル活用政策の法制化が必要だ」と提起した。
そのほか政府の「農協改革」とTPP交渉、規制改革会議の提言の連発など「協同組合」への攻撃に断固として立ち向かわなければならないと訴えた。
(関連記事)
・【農協研究会・報告(1)】強きを助け弱きを挫くTPP-近藤康男氏(17.12.15)
・【農協研究会・報告(3)】JAの強みで地域農業の再建を 谷口信和・東京農業大学教授(17.12.18)
・【対談・命と暮らしを守る『協同組合』は一体-JAに期待する】加藤好一生活クラブ会長・鈴木宣弘東大教授(前半)(17.11.07)
・飼料用米活用畜産物ブランド 日本一コンテスト(17.08.03)
・飼料用米生産を呼びかけ-飼料業界(17.03.31)
・【米生産・流通最前線2017】木徳神糧(株) 三澤専務に聞く 29年産米の概算金と流通(17.09.22)
・「お米育ち豚」の飼料用米配合比率15%に コープネット(17.03.28)
・【米生産・流通最前線2017】30年産問題ーどんなコメ「需要」に応えるのか?(17.08.07)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ルレクチエにセイヨウナシ黒斑細菌病 県内で初めて確認 新潟県2024年11月12日
-
水田政策 直接支払いなど 国会で熟議 大胆な農政運営めざす 江藤農相就任会見2024年11月12日
-
大胆かつ中長期的な予算を期待 山野JA全中会長2024年11月12日
-
鳥インフルエンザ 旭川市で国内8例目2024年11月12日
-
産地銘柄別の格差表を示した米先物情報交換会【熊野孝文・米マーケット情報】2024年11月12日
-
【人事異動】農水省(11月11日付)2024年11月12日
-
大分県の清家義顕氏が最優秀賞 JA共済自動車工場フロントマン選抜技術競技会2024年11月12日
-
【役員人事】クボタ(2025年1月1日付)2024年11月12日
-
酪農家応援 スキムミルク使用「異端児エール 北海道ミルクエール」発売 あぐラボ×ホクレン2024年11月12日
-
援農市民養成講座「農の学校」第21期受講生を募集 東京都日野市2024年11月12日
-
ニッポンの生産者を応援「産直ドミノ基金アワード2024」募集開始 ドミノ・ピザ2024年11月12日
-
NOSAI宮崎と日本製紙が支える畜産現場の最前線を紹介『畜産王国みやざき』2024年11月12日
-
「さむかわ冬のひまわり」摘み取りイベント開催 神奈川県寒川町2024年11月12日
-
中国におけるピロキサスルホン製品に対する特許権侵害案件が和解 クミアイ化学工業2024年11月12日
-
売上高3.8%減 2025年3月期第2四半期決算 日本農薬2024年11月12日
-
農業・漁業ソリューションの祭典「第1回 ALL JAPAN CONFERENCE」開催2024年11月12日
-
導入しやすいエントリーモデル 農機の自動操舵システム「ValueLine」発売 トプコン2024年11月12日
-
地産地消メニューを食べるデジタルスタンプラリー「とよたべ」開催中 愛知県豊橋市2024年11月12日
-
省エネしながら快適に 「断熱」のコツをオンラインで配信 パルシステム連合会2024年11月12日
-
国産黒毛和牛使用 プチぜいたくな「すき焼き御膳」申込開始 パルシステム千葉2024年11月12日