農業者の所得増大へ改革加速を 第4回JA営農・経済フォーラム2018年8月21日
農業者の所得増大や農業生産の拡大に向けたJA自己改革の取り組みを発信し共有しようとJA全中は8月20~21日、横浜市で東日本地区のJAを対象に第4回営農・経済フォーラムを開いた。常勤役員・幹部職員ら150名が参加し、事例発表やグループ討議を行った。
◆量販に多品目セット販売
JAの実践事例報告では北海道のJA新はこだての二本柳寛常務が「組合員の結集と農業所得増大」と題して話した。
北海道米のひとつ「ふっくりんこ」は函館育ちでJAは2004年に広域生産部会を結成するが、ふっくりんこについては品質を維持するために低タンパク米(6.8%以下)生産を基本とするなど出荷基準を策定し、栽培農家を厳選した。ただ、タンパク質値によって精算価格に差をつけたほか、量販店での試食宣伝活動などでブランドとして浸透。生産者も700戸まで増え面積も2400haと道内作付けの4割超を占める。ふっくりんこを原料にした純米酒、地ビールなど6次化も進めている。
青果物ではJA管内が宮城県ほどの広さもある多様性を強みにする戦略を打ち出した。量販店に管内で生産する多品目のセット販売を提案。売り場をJA単独で長期間、単独で確保して安定的に供給できるようになった。多品目混載出荷による輸送コスト低減も実現した。
販売額は29年度で307億円。3年連続で300億円を超した。高齢化による離農で正組合員は減少を続けているが、土地集約と振興品目への集約で一戸あたりの販売額は15年間で2倍以上の1400万円と実績を挙げている。「多種多様な農業の強みを生かしていきたい」と二本柳常務は話す。
(写真)事例発表後に総括討論を行った。
◆インショップで所得増大
群馬県のJA甘楽富岡の鷺坂秀幸組合長は「中山間地域における農業振興」と題して直売所やインショップ事業による所得増大の取り組みを報告した。
同JAは直売所「食彩館」を拠点に利用者にJAの総合事業利用に対してプレミアムポイントを付与する取り組みなどでJAの役割、事業について地域に理解を広げることに力を入れている。直売所の利用者が増えることは地域の農業生産拡大にもつながる。
組合員数は正・准あわせて1万2000名程度だが、カード発行枚数は1万7000枚を超えた。
インショップ事業は東京都内の量販店を中心に1998年に始めた。29年度では出荷金額は10億円を超えた。取引店舗は54店舗まで増えた。インショップでの販売を専業とする農家も増えたという。
露地キュウリ、長ネギなどの売れ筋商品だけでなく、販売現場からの要望に応えて希少作物の作付けも進めてきた。新規就農者もインショップ販売で参入するようになった。また、消費者や取引先店舗との交流で農業体験なども実施している。
鷺坂組合長は「少量多品目生産」と「多様な担い手」に即した産地づくりによる所得増大を今後も重視すると話した。
◆園芸ときのこ 両輪で
長野県のJA中野市の望月隆常務は「園芸ときのこの両輪による生産・販売拡大」を報告した。
同JAはエノキダケ生産は日本一、ぶどうを中心にもも、りんごなどの果樹生産も盛んな地域。ただ、10年ほど前に販売額は低迷したことから、JAは営農部に技術、販売、資材など集約して生産のバックアップ体制を再編するとともに、パッケージセンターをつくってギフト販売なども試みて販売額回復に努めた。
農業振興のために基金も積み立て、新品目や新技術の導入、施設設置などを支援した。生産部会も地域組織から栽培方式別組織に変更し、生産者の多様化に応じて複数共計も導入した。
また、エノキダケの機能性試験も研究機関とともに積極的に取り組み、血流改善効果、血清脂質改善効果など、機能性食品表示に向けた調査研究も実施している。熟練農家の技術を共有するためのスマート農業導入にも取り組んでいる。
販売額はこの10年間で111億円伸びて211億円となった。望月常務は「地域農業振興ビジョンを明確にすることが第一」と強調した。
(関連記事)
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