JAの活動:第3回全国集落営農サミット
【第3回全国集落営農サミット】経営戦略・経営計画 何のための集落営農か? 経営理念とビジョン大切2018年12月27日
・広島経済大学山本公平教授
広島経済大学の山本公平教授は「集落営農組織における中期事業計画策定の意義」と題して講義した。
山本教授が行った広島県内の集落法人への調査によると、自分たちの集落営農組織について「10年以上維持できる」との回答は平成22年には57%だったが、25年には35%に減少した。構成員の高齢化が進み、次世代リーダー候補が確保できていないなどの課題があれば将来見通しは不透明なるだろう。しかし、山本教授の分析では事業規模が8000万円以上の経営発展型の組織では「問題なく10年以上存続できる」と回答した組織は7割を超えた。集落営農組織は水田農業、とくに米の生産・販売が経営の柱となるが、山本教授によると米価が大幅に下落した平成26年度でも販売ルートを確保している4000万円以上の事業規模の組織は利益を確保していることが明らかで「事業規模がまだ小さくてもしっかり米を販売するなどが大切。経営の存続が地域にとってもいっそう重要になっている」と強調する。
そのための経営戦略とは、▽自分たちの集落営農組織が何のために存在し何のために働くのか=経営理念を明確にすることだという。そのうえで、▽その理念を実現するために3年後、5年後に自分たちはどうありたいかの姿=ビジョンを策定することが起点となる。 事例として紹介した広島県三原市の農事組合法人「清流の郷・泉」は設立の目的を「先祖より受け継がれた大地を守り、さらに次世代に引き継ぐ」とし、そのために「活気あふれるにぎわいのある里山にすべく大規模農業形態を確立する」ことを掲げ、経営を安定させて地域の発展に貢献することをめざしている。
(写真)広島県三原市の「清流の郷 泉」
経営理念の確立とビジョン策定とともに必要なことが、自分たちの「事業領域を明確にする」ことだ。水田地帯であれば、たとえば米・麦、大豆の生産を事業として自分たちの理念を実現するか、あるいは米プラス野菜でそれをめざすか、などだが、さらに山本教授は同じ商品であっても、顧客ニーズに応じて戦略的に事業領域を変えていることを化粧品業界を例に説明した。
若年女性をターゲットとしたA社は美しくなりたいというニーズに応える商品を百貨店の店頭で販売するが、中高年層の健康ニーズに応えるB社は訪問販売、さらにアレルギー対応の商品を通販で販売するC社など、同じ化粧品でもその内容や販売ルートが違う。
もちろん事業領域は戦略だけでは決められない。経営資源としての資本や農地、機械などや、若い担い手がいるかどうかといった内部環境をしっかり分析する必要もある。さらに地域インフラの整備状況や、景気動向など自分たちではどうすることもできない外部環境もある。これらを分析したうえで「誰に、何を、どのように生産・販売していくか」が集落営農組織の戦略であり、1年ごとの収益目標などを明示し、分かりやすい3年程度の計画を立てて、毎年見直す取り組みを進める。
(写真)農業体験も大切な協同活動
紹介した「清流の郷・泉」が、自らの理念実現のために戦略として打ち出したのは「実需者と連携した加工業務用野菜、水稲米による豊かな地域づくり」だ。野菜はダイコン、赤シソ、ニンジンなどを栽培。ダイコンは生食用で量販店に直接販売するほか、規格外はカット工場へ、さらに規格外は弁当、惣菜業者、学校給食へなど。それでも余ったものは構成員で千切り大根にする。
コストダウンのため作業日を集中し、収穫から運搬、洗浄までの作業手順を徹底的に見直し無駄を省いている。また、集落営農法人の連携組織も立ち上げ、米は業務用米のほか特別栽培米の学校給食提供も実現した。
山本教授はこうした事例を解説しながら経営戦略・計画の重要性を強調した。
(第3回全国集落営農サミット関連記事)
・【第3回全国集落営農サミット】地域農業の持続へ 経営戦略の策定を(18.12.27)
・【基調講演】理想郷づくりの実践運動 目標に「子どもが増えた」も(18.12.27)
(その他の関連記事)
・水田作など法人経営、所得増加 農水省(18.12.25)
・集落営農の経営支援へ 県域に連絡協議会設置 -JA自己改革の一環(16.06.17)
・集落営農の6割で後継者確保が課題 農水省統計(15.07.02)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日