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【クローズアップ】農業重視へ各国が政策転換2018年6月20日

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・韓国1000万署名で「農業の価値」提起
・フランス安売り競争防止法案を審議

 わが国の食料自給率(カロリーベース)は平成28年度は38%と前年より1%低下し、45%に引き上げる目標はまた遠のいた。担い手不足や農業者の高齢化で食料の生産基盤の弱体化が懸念されるなか、改めて農業・農村をどう維持し、食料の安定供給を図っていくか、基本政策の確立が求められている。こうした基本政策の確立に向けた動きは海外で具体化している。昨年9月、スイスは食料安全保障を憲法に明記するかどうかの国民投票を実施し、約8割の賛成で成立したが、韓国やフランスでも農業を国家政策に改めて位置づける議論が始まっている。そこには国民的な関心の高まり、危機感とそれに向き合う政治がある。これらの国のこれまでの動きを紹介する。

◆農業団体が運動提起

韓国農協中央会(写真)韓国農協中央会

 

 スイス連邦憲法は第104条で「農業」を位置づけている。そこでは農業政策のおもな目的(多面的機能の発揮)、望ましい農業のあり方(持続可能かつ市場志向)、農民の経営支援などのほか、食料供給の保障、農業景観の維持、国土の分散的居住を重視することなどが記述されている。
 この104条に昨年9月の国民投票で成立した「食料安全保障」の項目を追加するという憲法改正が行われた。具体的には国民への食料供給を維持するため、政府は農業生産基盤とくに農地の保全と、地域の条件に適合し自然資源を効率的に用いる食料生産、農業と農産食品部門の持続的な発展に資する国際貿易や、フードロスの削減などを促進するという5項目が加わった。
 今回の国民投票はスイス農民連盟などの農業団体の発議が発端となっている。憲法に食料安全保障を明記する改正を求めた国民発議は3か月で15万人の署名を集めたという。これに対して政府が対案として一部を修正したものが国民投票にかけられたのだが、農業団体の運動がきっかけになったわけだ。
 スイスには憲法改正に限らず、さまざまな政策について議会で審議したり決議する前に関係者によるステークホルダー会合が開かれる。農業政策については必ず農業団体など当事者による会合がある。このステークホルダー会合で否決された案件は議会に上程されることはなく、少なくとも合意できる修正が必要な仕組みになっているという。

 

◆韓国人口の2割が署名

 スイスと同じように韓国でも農業団体の運動が基本政策の充実につなげようという動きを生み出した。
 韓国農協中央会は昨年から農業に対する国民の意識を高める運動を展開してきた。農業は食料供給だけでなく、環境保護や地域発展、寿命改善など多くの便益を国民にもたらす公共財であり、こうした公的価値は産業レベルではなく国家レベルで扱われるべきである、と韓国農協中央会は考え方を整理。そのうえでこうした農業の公共的価値は国民の日常生活に直接関連し、基本的人権にも深く関連しているとして「農業の公共的価値を憲法に反映させるべきである」と主張した。
 しかし、韓国でも国民は農業を重要だとはみなしていないとして昨年11月から署名キャンペーンを始めた。目標は1000万人。署名キャンペーンを始めてから1か月足らずで1000万人に達し、最終的には1150万人から署名を集めたと公表されている。韓国の人口の20%以上にあたる。日本でいえば2000万人にあたる署名を集めたことになる。

存在感を示す韓国の農協の農産物直売所「ハナロマート」(1)

(写真)存在感を示す韓国の農協の農産物直売所「ハナロマート」

 

 一方で韓国農協中央会のスタッフはキャンペーン開始以来、国会議員との面会や、政府機関との会合を開催するなどして農業の重要性を強調した。その結果、文大統領が検討してきた憲法改正事項のなかに「農業分野の公共的価値」を位置づけた憲法草案が3月26日に公表され、大統領は国会に提出した。
 今回の憲法草案は大統領の任期を再選禁止の5年から、4年で再選可能とすることや、市民の政治参加の拡大、労働者の保護強化なども盛り込まれているという。
存在感を示す韓国の農協の農産物直売所「ハナロマート」(2) 改正憲法が韓国で成立するかどうかはまだ不透明な状況だが、大々的なキャンペーンによって憲法改正草案に農業基本政策の指針となる事項を盛り込む運動をつくりあげたこと自体が評価されている。
 韓国農協中央会は「国民の関心を高め続けることが重要であり、人々の関心を高める多様なキャンペーンを続ける必要がある」として子どもを対象にした絵画コンクールや、大学院生を対象にシンポジウムなどの開催とともに、農業の公共的価値に対する政府支払いなど、具体的な農業政策を立案して明確にしていくことなども課題だとしている。

 

◆販促で「無料」表示禁止

海外の事例・状況等(概況) フランスではマクロン政権が農業・食品分野の重視を鮮明にした。国会に安全で持続的な農業の確立と食品部門との公正な取引についての法案を提出している(安全で持続的な農業及び食品部門における商業関係の均衡にための法)。
 フランス議会の下院を通過し6月下旬から上院で審議される予定だ。法案は修正される可能性はあるが、ここでは下院審議の第一段階(第一読会)で通過した内容をみてみる。
 法案では農産物価格について「農業者に支払われる価格形成過程の逆転」との事項があり、「生産者の生産費用が価格形成の基礎になる」との記述がある。生産費から積み上げて再生産可能な価格を決めるという考え方を明記する方向だ。
 また、生産者の結集を促す規定もある。日本の生産部会のような組織化が念頭にあるようだ。

 

(画像をクリックするとPDFファイルが開きます。)

 

 生産者と買い手との規定も盛り込まれている。出荷側と仕入れ側の双方に対して契約違反をした場合に罰則を課す。販売額の2%までの罰金と契約違反を繰り返した場合、違反者を公表する規定もある。買い手が契約に違反し生産者からの出荷を拒否した場合や、一方、逆に生産者が出荷先をいきなり変更した場合などを想定している。あわせてこうした事例に対する仲裁者の位置づけと役割を強化する規定も盛り込まれている。
 注目されるのは「安売り競争を終わらせるために」との規定があることだ。政府は出血安売りに対して課徴金を課したり、過剰な販売促進策について何らかの対策を拘束力の強い勅令(オルドナンス)によって決めることができるとしている。また、食品の販促で「無料」という語句や、それと同義語の使用も禁止する規定もある。

 


◆環境への配慮求める  

 食品の品質、表示、トレーサビリティなどについての規定も盛り込む。
 そのひとつが公共団体食堂(給食)が提供する食事について。法案では2022年までに有機農業や環境保全を考慮した産品を50%以上使用することや、有機農業による農産物の売上げを全体の20%以上とすることとしているほか、学校給食ではプラスチックボトルでの飲料水の使用を2020年までに禁止する。
 2023年以降は特定の食品についての表示を強化するという規定もある。そのひとつが畜産物の飼料についても「GMOを餌とした」といった表示をすることや、生鮮果樹野菜についての「農薬の散布回数」などの表示も規定されており、詳細は政令で定めるようだ。そのほか、農薬の販売と普及との分離や、動物虐待の場合の罰則を2倍にすることなどの規定も盛り込まれている。
 このような海外の農業・食品関連法案は実態の異なるわが国にはそぐわない内容もあるだろう。ただ、農業の多面的な価値を社会に位置づけるとともに、農業の持続性の追求と、そのためにフランスのように農産物の価格形成のあり方について、市場主義を見直そうという動きなどは、わが国の今後の基本政策を考えるうえで注目すべきだ。
 JAグループは6月に決めた政策提案で基本政策の確立を求めている。新たな食料・農業・農村基本計画の議論が来年から始まることをにらみ、JA全中は世界の動きなどを分析したうえでわが国で必要となる政策についての基本的な考え方を9月にも提起し組織協議、それを受けて来春には政策提案を打ち出す予定にしている。

 

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