【クローズアップ】ツマジロクサヨトウの生態と防除対策2019年9月12日
新たなチョウ目害虫「ツマジロクサヨトウ」が日本に侵入し、ひと騒動が起こっています。飼料用トウモロコシを中心に、スイートコーンや飼料用ソルガムなどの発生が確認されており、最近も新たな県で発生が確認されるなど、じわじわと発生範囲を拡大している。
農水省の公式発表などをもとにその生態と防除対策を整理してみた。
1.ツマジロクサヨトウとは
ツマジロクサヨトウは、ヨトウムシなどと同じチョウ目の害虫で、北米-南米、アフリカ(エジプト、サハラ以南)、アジア(インド、中国、台湾、韓国、タイ、ミャンマーなど)で発生している害虫です。
加害する作物は、ヨトウムシと同様に幅広く、アブラナ科(カブ等)、イネ科(イネ、トウモロコシ、サトウキビ等)、ウリ科(キュウリ等)、キク科(キク等)、ナス科(トマト、ナス等)、ナデシコ科(カーネーション等)、ヒルガオ科(サツマイモ等)、マメ科(ダイズ等)などです。
頭部に特徴がある幼虫(写真提供:山口県病害虫防除所)
成虫(左:オス、右:メス)
成虫は、翅を広げた状態で約37mm、雌雄で外観が大きく異なり、オスのみ前翅中央部に黄色い斜めの斑紋を持ちます。
卵は作物に塊状に産み付けられメスの体毛で覆われています。終齢幼虫(蛹になる直前の幼虫)は体長約40mmにもなります。
この害虫は、南北アメリカ大陸の熱帯~亜熱帯原産で、暖地を好み、熱帯では年4-6世代も発生する。南北アメリカでは、毎年夏季に成虫が移動・分散するようですが、暖地以外で越冬することはできません。
被害は、幼虫が作物の葉、茎、花並びに果実を加害し、若齢幼虫は葉を裏側から集団で加害し、成長するとだんだん分散しながら加害します。
被害を受けたトウモロコシ(写真提供:山口県病害虫防除所)
2.防除対策
ツマジロクサヨトウは、現在のところ、飼料用トウモロコシの生産ほ場を中心に発生していますが、前述のとおり、多種類の作物を加害する害虫であるため、発生地域の拡大に伴い、多くの作物に被害が起こることが心配されています。
被害を最小にするためには、早期発見と徹底した防除対策が必要です。
(1)早期発見
温かい季節は、繁殖が旺盛ですので、発生の初期に徹底して防除することが重要です。このため、定期的にほ場を見回り、早期発見、早期防除に努めて下さい。
(2)早期刈取り・刈取り後の速やかな耕耘
作物の収穫が可能な場合は、直ちに収穫・調製を行って下さい。収穫後は、土の上に落ちた幼虫や土中の蛹を防除するため、できるだけ間をおかずに作物残渣も含めて耕耘するようにして下さい。
耕耘の際には、幼虫及び蛹を破砕、又は土中深く埋没させるように、土の表面に作物が見えなくなるまで深く耕耘(深さの目安 12cm 以上)し、それを2回以上行って下さい。
(3)農薬による防除
ツマジロクサヨトウは新規の発生害虫であるため、植物防疫法第29条第1項の規定により、別表に示した農薬については、本害虫に登録はなくとも使用が可能で、使用した作物が農薬取締法違反(適用外使用)に問われることはありません。ただし、それぞれが全ての作物に使用できるわけではありませんので、必ず使用する農薬の適用作物、使用方法、使用時期、散布液量、希釈倍数使用量、使用回数を確認し、用法・用量をしっかりと守って使用して下さい。
農薬散布に際しては、作物によって新葉の葉鞘基部に幼虫が潜り込んでいる場合もあるので、そのような幼虫にも農薬が届くよう、株の上部(生長点)から葉の裏表までしっかりと散布して下さい。背の高い作物に散布する場合は、周辺への農薬の飛散(ドリフト)に十分注意して下さい。
(関連記事)
・ツマジロクサヨトウ新たに愛媛、山口でも 各県の発生状況(19.09.03)
・ツマジロクサヨトウ 東北で初めて福島で確認(19.09.05)
・米国産トウモロコシ 275万tの保管料を支援-吉川農相(19.09.03)
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