米の需給動向 国はより精査し情報を-食糧部会2018年8月7日
7月27日に開かれた食料・農業・農村政策審議会食糧部会では平成30年7月から31年6月までの主食用米の需給見通しなど「基本指針」が議論され、国による生産数量目標の配分が廃止されたことにともない、需給を見通すには今まで以上のきめ細かな情報提供や、精査が必要になっているとの指摘が委員から出た。また、1年程度の短期的な見通しではなく長期的な視点で食料需給を検討することも必要との意見も出るなど、食糧部会の役割を問う指摘も出た。
◆SBS米 需給に反映を
JA全中の金井健常務は30年産では735万tの適正生産量の達成に「組織あげて取り組んでいる」としながらも、国による生産数量目標の配分が廃止されたことから生産現場には「より情報提供が必要」と強調した。
30/31年の需要量を農水省は過去のトレンドから再計算し741万tとしたが、この需要量についても消費動向を注視しながら「必要であれば見直すなど精査すべきだ」と指摘した。
また、播種前に政府と契約する備蓄米は30年産では12万tにとどまった。これについては10a7500円の直接支払い交付金が廃止されたことから産地は政府備蓄米入札に消極的になったことなどを挙げ、より入札しやすい仕組みを工夫することや、需給を見ながら出来秋までに主食用から備蓄米等へ用途変更できるようにするなど、弾力的な政府備蓄米の確保対策の必要性も上げた。
一方ではSBS(売買同時入札)輸入米入札は予定の10万tが落札しており、これが外食などで主食用として販売される。しかし、「基本指針」ではSBS輸入米は米の供給量のなかに入っていない。金井常務は国による生産数量目標の配分がなくなったのなら、より正確な需給情報が必要だとしてSBS輸入米供給量も需給見通しに含めるべきだとの考えを示した。他の委員からも30年産米の作柄や、SBS米の販売動向を含めて主食用米の需給について「相当な精査を」との意見があった。
これに対して農水省は米の基本指針は国産米の需給見通しを示すものでSBS輸入米を念頭には置いているが基本指針には含めないとの考えを示した。ただ、より精度の高い需給見通しを示していくことや、政府備蓄米確保のための工夫について検討する考えは示した。
◆長期見通しも必要
委員からは「半年後、1年後どうなるかではなくもっと長い視点で考えるべき」(タレントの大桃美代子委員)との意見も出た。オランダでは2050年を見据えて食料・農業を考えているという。
これに対して農水省は2050年時点の食料消費の試算をしており日本国内では消費は落ちるが、世界人口は2050年に98億人との国連推計もあり、世界の食市場は340兆円から680兆円に倍増するとの見通しも説明した。
そのうえで農産物輸出は2019年に1兆円目標を掲げているなど、今後は国内需要が縮小するため輸出を伸ばすことが必要で「いざというときには輸出に回しているものを国内に回せる」などと説明した。しかし、10年前の世界的な食料高騰時の輸出国の農産物禁輸政策は、国際的にも批判を浴びた。
◆再生産可能な価格を
食糧部会では業務用米が不足し、外食・中食で使用する米の価格が高騰していることも問題とされた。わらべや日洋ホールディングス(株)の妹川英俊会長は27年産米の60kg1万2000円台にくらべ最近は2000円程度高い水準で外食、中食とも米を使いにくい状況にあり、グループで使用している米の量は前年比95%(1~5月)となっているとして「生産者にとっては米価は上がったほうがいいが、使う側のことを考えて安定的な価格を」と望むとともに、生産者からの直接買い付けも検討していると話した。
日清製粉(株)の山田貴夫社長も「需給のミスマッチは解消されていない。おにぎりは安くすると売れる。適正価格レベルはある。生産者に情報を伝えて生産を」と主張した。
これに対して全中の金井常務は100円の梅干しおにぎりの米の価格は20円で、うち生産者手取りは10円程度だと指摘し「米価を下げればいいということではないのではないか。生産者の再生産が確保できる価格が重要だ」と強調した。
山形県農業法人協会会長で山形川西産直センターの平田勝越社長は「米価の上下が消費を減退させていないか」と指摘し、再生産できる安定的な価格を形成することが重要だと話すとともに、米の消費のかたちが変わっていることを生産側も受け止める必要性も指摘した。
柏染谷農場の染谷茂代表は都市近郊で50年近い米づくりを続けてきたが、現在は350戸から農地を借りているという。安く米を作る努力も必要だが、「今後、農地を維持していけるのか」と不安をもらし「若い人たちがやる気が出る政策」と米の消費拡大策が必要だと述べた。
◆面積あたり所得で選択
米の消費は外食、中食で伸ばすことができると指摘したのは米卸・神明の藤尾益雄社長。資本参加している2つの回転寿司チェーン店の年間来客数は2億人で前年比増だという。リード役は子どもたち。ごはんが好きで回転寿司へ行こうと親に求める。他の委員からも、今の子どもたちは学校給食でおいしいごはんを食べているから「ごはん好きだ」との意見もあった。
また、藤尾社長は同社の包装米飯が月間700万~800万パックも売れており、10年で1.6倍に市場規模は伸び、最近は中国からの引き合いも強いという。
米の簡便な消費も求められているとして、このニーズに応えることで米の消費を伸ばしていけるのではないかと話した。そのうえでこうした変化に対応した米の生産のあり方について「1俵の価格ではなく10aあたりどれだけ所得を確保できるかを考えてほしい。多収穫米への作付け誘導などが求められるのではないか」と提起した。
(関連記事)
・米品種のマッチングミーティング 東京で(18.08.07)
・米需給 「緩和」見通し判断さらに増-米穀機構(18.06.06)
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