30年産米 需要とのマッチング 継続支援を-自民が政府に要請決める2017年11月28日
自民党の農業基本政策検討委員会は11月28日の会合で30年産からの米政策の見直しを政府への要請事項として決めた。改めて需給調整のための全国的な推進組織の立ち上げを支援することや、産地と実需者との安定取引のためにマッチングを継続して支援することなどを求める。
同委員会の宮腰光寛参与は米政策の見直しについて「大きな転換になる。国の関与としては、生産数量目標の配分と10a7500円の直接支払いは廃止する。しかし、国が引き続きそれ以外の生産調整への取り組みは援助していく。さらにJAグループが中心になって関係者の主体的な取り組みを促す全国的な推進組織を立ち上げ、その支援を国がしっかりとやっていくと衆院選の公約にも掲げた。それを具体化していくというのが今回の取りまとめだ」とあいさつした。
(写真)あいさつする宮腰光寛参与
取りまとめでは▽水田フル活用予算の恒久的な確保、▽全国的な推進組織の立ち上げの支援、▽農業再生協議会の運営への支援、▽収入保険への加入促進支援、▽米穀周年供給・需要拡大支援事業の一層の活用による需給安定など支援を求めた。
全国的な推進組織はJAグループが年内にも立ち上げるが、農林部会の野村哲郎部会長は「全国組織はつくるが、これからここに魂を入れなければならない」と強調した。
出席した議員からは需要動向を産地にきめ細かく伝え、中食・外食など向けなど「本当に売れる米をつくれば生産拡大できる」ことなども産地に伝える必要があることや、同時に価格と消費動向など「敏感に察知する」ことも30年産以降は重要になると指摘もあった。
取りまとめ後、宮腰参与は「来年からの米政策は何よりも需給と価格の安定を確保していくことがもっとも大事だ。取りまとめどおりにやっていきたいが、たとえば大豊作になったような場合も含めて毎年、毎年しっかりと対応ができるよう党としてもみていき、いろいろな対策を講じることも頭に入れ込んでやっていく必要がある」と強調した。
引き続き開かれた農林・食料戦略調査会、農林部会合同会議でも了承し、JA全中の中家徹会長は「われわれの要望を十分にくみ取ってもらった。30年度以降、行政や関係機関と連携を取りながら進めていきたい。とくに全国組織についてはいかに機能させるかが重要だ」と述べるとともに「これからもJAグループは総力を挙げて需要に応じた生産、食料自給率の向上、さらに農家所得の向上に取り組んでいく」と決意を示した。
平成三十年産からの米政策の見直しについて(案)
平成二十九年十一月二十八日
自由民主党
農林・食料戦略調査会
農林部会
農業基本政策検討委員会
米政策については、平成三十年産から米の直接支払交付金及び行政による生産数量目標の配分を廃止し、生産者や集荷業者・団体が中心となって需要に応じた生産を行うこととなった。
これまで、生産者や集荷業者・団体が一体となって需要に応じた生産に向けて取り組んだ結果、平成二十七年産米、平成二十八年産米、平成二十九年産米と続けて主食用米の需給が引き締まり、価格も堅調に推移しているところである。こうした取組は、平成三十年産以降も継続・深化させていくことが必要不可欠である。
以上を前提としつつ、平成三十年産以降の米政策について、左記の対応を講ずることを強く要請する。
記
一 国は、平成三十年産以降も引き続き、全国の需給見通しを策定するとともに、マンスリーレポート等を通じた情報提供や、各県・地域再生協議会ごとの作付動向等の生産現場への情報提供や認識の共有を行うこと。
二 コメの需給と価格の安定を図るため、平成三十年産からの米政策の見直しを着実に推進するとともに、コメ農家が所得向上を目指して自らの経営判断で作物を選択できるよう、安定的な助成体系の下、飼料用米をはじめ戦略作物の本作化に向けた水田フル活用の予算(産地交付金を含む)を責任を持って恒久的に確保すること。
三 水田活用の直接支払交付金のうち産地交付金については、戦略作物等の生産拡大、コメの新市場開拓及び畑地化の取組を含め拡充するとともに、留保の仕組みについて適切な運用改善を図ること。
四 国が策定する需給見通し等を踏まえ、生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行えるよう、関係者の主体的な取組を促す全国的な推進組織の立ち上げを支援すること。また、当該組織による産地と中食・外食事業者等との安定取引に向けたマッチングの取組を継続的に支援すること。
五 三十年産以降、都道府県段階・地域段階の農業再生協議会の主体的な役割がこれまで以上に重要になること等を踏まえ、農業再生協議会の運営費の確保等、更に機能を発揮できる環境を整備すること。
六 水田農業の経営安定に向け、農業経営収入保険事業の加入促進や、生産性向上に資する生産基盤強化に取り組む生産者・産地への支援策を、適切に措置すること。
七 収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は、担い手の経営の安定を図ることを目的とした対策として、三十年産以降も、また、農業経営収入保険事業の導入以降も、セーフティネット対策として、担い手経営安定法に基づき実施すること。
八 米穀周年供給・需要拡大支援事業の一層の活用により、豊作等により発生する供給過剰に対し、出来秋以降の需給調整を行うため長期計画的な販売の取組や、産地と中食・外食事業者等との安定取引に向けたマッチングの取組を支援すること。
九 コメ及びコメ加工食品(米粉、日本酒を含む)の需要拡大に向け、海外市場の飛躍的拡大戦略など、内外のコメの新市場開拓を強力に推進すること。
以上
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