農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち - 挑戦・地域と暮らしと命を守る農業協同組合
【座談会】日本農業は"存亡の機" 現状打破へ"行動の時"(下・3)2019年1月9日
・「現代の老農」に聞く農と地域・食といのちの未来
【座談会出席者】
・星寛治氏(農民・詩人)
・山下惣一氏(農民・作家)
・大金義昭氏(文芸アナリスト)
「老農」とは明治時代の経験に富んだ在来農法による農業指導者のことを言う。現在は栽培技術のマニュアル化が進み「老農」の出番はなくなったかのように見えるが、農業を支える農村社会そのものが崩壊しつつあり、今日的な農業・農村のリーダーが求められる。その意味で、「現代の老農」ともいえる存在で、農民であり作家の山下惣一さんと、同じく詩人の星寛治さん、それに文芸アナリストの大金義昭さんに登場していただく。
JAは地域の「守護神」
一糸乱れず団結し行動
大金 そこで最後に、こうした局面でJAグループはどのような役割を果たしていけば良いのか、「老農」としてのアドバイスを聞かせていただきたいと思います。
山下 結局は、なぜ協同組合をつくったかということでしょ。一人ひとりでは弱いから、みんなで集まってやろうというわけですよ。このまま放っておけば、力の強いものが勝ち、弱肉強食になる。ジャングルの掟になる。それがいかんから政治が介入し「強きを挫き、弱きを助ける」というのが「天下のご政道」じゃないですか。それが今は真逆になっている。競争が厳しくなったから「弱きを挫き、強きを助ける」ことになっている。
アフリカのケニアで見たんだけど、2頭のチーターがヌーという牛の狩りをするんです。群れから離れると、すぐにやられることは目に見えている。150~200頭のヌーの群れが固まって、一糸乱れずにぐるぐる回るんですね。それでチーターがくたびれて狩りをあきらめる。これがまさに協同組合の運動論ですね。
星 私は、JAは地域社会の「守護神」だと思っているんですよ。
大金 かねてから私も「JAは家族農業と地域社会を守る守護神である」と唱えてきました。
星 地球温暖化に起因する気象変動のなかで、「攻めの農業」などというものは間もなく破綻すると思うんです。その場面でしっかりと地域農業を守る力を発揮できるのは、やっぱりJAだと思っています。地方自治体の行政と一緒になって、新たな地域再生のビジョンやプログラムを創り出し、それに基づいて日々力を発揮していく。そうでないと家族農業もなかなか守りきれないという実態がありますので、生活文化の総体を守っていくのがJAの力だと思うんですね。
山下 しかし政府は「農協改革」という名のバッシングに狂奔し、在日米国商工会議所あたりの思惑や意向に従い、これを忠実に実行する、まさに「売国農政」で何とかしようとしているんだから、空しくなる。
星 不公正な輸出あるいは輸入圧力がこれから力を増していくなかで、これをはね返す力はJAに求める以外にないんですね。野放図な規制緩和によって、食の安全も確実に脅かされてくるわけですね。しかし、規制緩和は「錦の御旗」でも何でもない。本当に大事なものを守るという責任を放棄する市場原理、新自由主義に委ねてしまうというあり方ですから、ナンセンスそのものですね。私たちは、国内の本物の農産物をどこまでも日本の勤労大衆というか、まじめな市民の食卓に届ける役割と責任を自覚していく。その実務的な手立てをやって頂けるのが、やはりJAなんですね。ですから、競争から協同あるいは共生へという人類の未来像をしっかり担っていけるJAに、私は大きな期待をかけ続けていきたいですね。
山下 人間と一緒で、国にも青年期があり壮年期があり熟年期があり、成熟社会になっていくわけだから、いつまでも「成長」だとか「ガンバロー」などと言わないで、みんながそういう社会をどうやって生きていくかというような視点が必要じゃないかと、私は今考えている。
大金 「成長経済」から「定常経済」へと移行するなかで、若い世代の直観なのでしょうか、田園回帰とか新規就農の動きが底流でマグマのように沸き起こってきているという指摘もあるんですが、そうした新しい動向も含め、JAが家族農業を起点にした地域社会を担っていくためにも、今取り組んでいる「自己改革」を生かしてほしいですね。
山下 東京オリンピック以降に予想される不況で、若者たちのそういう勢いがもっと顕在化していくのかもしれないが、それより、村に帰るべき人間がまずは村に帰ってくる動きに期待したいね。私の息子にもそれは言えることだが、村には空き家がいっぱいあるけれど、そのままつぶれるということには、まずならないね。
大金 山下さんの息子さんは帰るでしょうよ。
山下 まあ、私もそう思っているけどね。昨年は私は病気ばかりだったから息子がやりましたよ。
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】荏原実業(3月27日付)2025年2月19日
-
地域農業維持 小さな農家支援や雇用が重要 食農審北陸ブロック 意見交換会2025年2月19日
-
【地域を診る】地域の未来をつくる投資とは 公共性のチェック必要 京都橘大学教授 岡田知弘氏2025年2月19日
-
農林中金 奥理事長退任へ2025年2月19日
-
稲作農業が継続できる道【小松泰信・地方の眼力】2025年2月19日
-
荒茶の生産量 鹿児島がトップに 2024年産2025年2月19日
-
卓球アジアカップ出場の日本代表選手を「ニッポンの食」でサポート JA全農2025年2月19日
-
香港向け家きん由来製品 愛媛県、鹿児島、宮崎県からの輸出再開 農水省2025年2月19日
-
FC岐阜との協業でぎふの米の食育授業とサッカー教室 ぎふの米ブランド委員会(1)2025年2月19日
-
FC岐阜との協業でぎふの米の食育授業とサッカー教室 ぎふの米ブランド委員会(2)2025年2月19日
-
BASFとNEWGREEN 水稲栽培のカーボンファーミングプログラム共同プロジェクトで提携2025年2月19日
-
デジタル資産問題【消費者の目・花ちゃん】2025年2月19日
-
トラクタ体験乗車など「Farm Love with ファーマーズ&キッズフェスタ2025」に出展 井関農機2025年2月19日
-
野菜本来の味を生かした「国産野菜100%の野菜ジュース」3種を新発売 無印良品2025年2月19日
-
土壌データ見える化を手軽に「らくらく実りくんスマホ版」新発売 横山商会2025年2月19日
-
水田の中干し期間延長 J-クレジット創出方法を学ぶ勉強会開催 Green Carbon2025年2月19日
-
旬の味覚「長崎いちご」発信 特別展示「FOOD DESTINATION PORT」開催 長崎県2025年2月19日
-
掛川牛、青島みかんなどご当地グルメ大集合「春の静岡フェア」開催 クイーンズ伊勢丹2025年2月19日
-
6月12日を「ヘルシーソイラテの日」に制定 日本豆乳協会2025年2月19日
-
「第4回フードテックジャパン大阪」に出展 光選別機3機種で選別実演 サタケ2025年2月19日