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【座談会】日本農業は"存亡の機" 現状打破へ"行動の時"(下・3)2019年1月9日

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・「現代の老農」に聞く農と地域・食といのちの未来

【座談会出席者】
・星寛治氏(農民・詩人)
・山下惣一氏(農民・作家)
・大金義昭氏(文芸アナリスト)

 「老農」とは明治時代の経験に富んだ在来農法による農業指導者のことを言う。現在は栽培技術のマニュアル化が進み「老農」の出番はなくなったかのように見えるが、農業を支える農村社会そのものが崩壊しつつあり、今日的な農業・農村のリーダーが求められる。その意味で、「現代の老農」ともいえる存在で、農民であり作家の山下惣一さんと、同じく詩人の星寛治さん、それに文芸アナリストの大金義昭さんに登場していただく。

JAは地域の「守護神」
一糸乱れず団結し行動

 

 大金 そこで最後に、こうした局面でJAグループはどのような役割を果たしていけば良いのか、「老農」としてのアドバイスを聞かせていただきたいと思います。

 

 山下 結局は、なぜ協同組合をつくったかということでしょ。一人ひとりでは弱いから、みんなで集まってやろうというわけですよ。このまま放っておけば、力の強いものが勝ち、弱肉強食になる。ジャングルの掟になる。それがいかんから政治が介入し「強きを挫き、弱きを助ける」というのが「天下のご政道」じゃないですか。それが今は真逆になっている。競争が厳しくなったから「弱きを挫き、強きを助ける」ことになっている。
 アフリカのケニアで見たんだけど、2頭のチーターがヌーという牛の狩りをするんです。群れから離れると、すぐにやられることは目に見えている。150~200頭のヌーの群れが固まって、一糸乱れずにぐるぐる回るんですね。それでチーターがくたびれて狩りをあきらめる。これがまさに協同組合の運動論ですね。

 

  私は、JAは地域社会の「守護神」だと思っているんですよ。

 

 大金 かねてから私も「JAは家族農業と地域社会を守る守護神である」と唱えてきました。

 

  地球温暖化に起因する気象変動のなかで、「攻めの農業」などというものは間もなく破綻すると思うんです。その場面でしっかりと地域農業を守る力を発揮できるのは、やっぱりJAだと思っています。地方自治体の行政と一緒になって、新たな地域再生のビジョンやプログラムを創り出し、それに基づいて日々力を発揮していく。そうでないと家族農業もなかなか守りきれないという実態がありますので、生活文化の総体を守っていくのがJAの力だと思うんですね。

 

 山下 しかし政府は「農協改革」という名のバッシングに狂奔し、在日米国商工会議所あたりの思惑や意向に従い、これを忠実に実行する、まさに「売国農政」で何とかしようとしているんだから、空しくなる。

 

  不公正な輸出あるいは輸入圧力がこれから力を増していくなかで、これをはね返す力はJAに求める以外にないんですね。野放図な規制緩和によって、食の安全も確実に脅かされてくるわけですね。しかし、規制緩和は「錦の御旗」でも何でもない。本当に大事なものを守るという責任を放棄する市場原理、新自由主義に委ねてしまうというあり方ですから、ナンセンスそのものですね。私たちは、国内の本物の農産物をどこまでも日本の勤労大衆というか、まじめな市民の食卓に届ける役割と責任を自覚していく。その実務的な手立てをやって頂けるのが、やはりJAなんですね。ですから、競争から協同あるいは共生へという人類の未来像をしっかり担っていけるJAに、私は大きな期待をかけ続けていきたいですね。

 

 山下 人間と一緒で、国にも青年期があり壮年期があり熟年期があり、成熟社会になっていくわけだから、いつまでも「成長」だとか「ガンバロー」などと言わないで、みんながそういう社会をどうやって生きていくかというような視点が必要じゃないかと、私は今考えている。

 

文芸アナリストの大金義昭氏 大金 「成長経済」から「定常経済」へと移行するなかで、若い世代の直観なのでしょうか、田園回帰とか新規就農の動きが底流でマグマのように沸き起こってきているという指摘もあるんですが、そうした新しい動向も含め、JAが家族農業を起点にした地域社会を担っていくためにも、今取り組んでいる「自己改革」を生かしてほしいですね。

 

 山下 東京オリンピック以降に予想される不況で、若者たちのそういう勢いがもっと顕在化していくのかもしれないが、それより、村に帰るべき人間がまずは村に帰ってくる動きに期待したいね。私の息子にもそれは言えることだが、村には空き家がいっぱいあるけれど、そのままつぶれるということには、まずならないね。

 

 大金 山下さんの息子さんは帰るでしょうよ。

 

 山下 まあ、私もそう思っているけどね。昨年は私は病気ばかりだったから息子がやりましたよ。

 

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