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農政:農協研究会第15回研究大会

【報告1】家族農業でSDGs実現を 村田武・九州大学名誉教授2019年5月21日

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20190521 農協研究会第15回研究大会 村田名誉教授村田名誉教授

 

 新自由主義グローバリズムがもたらした結果は無残というしかない。第1に「北」と「南」の経済格差を拡大させた。そして、生態系への危機的な負荷といわれる自然環境の破壊が危機的状況にある。そして大都市メガ・スラムは目を覆うばかりになった。
 いまや市場原理主義、つまり金融市場のグローバル化で、国家独占資本主義論が、その足場を失った。こうした状況に対して国連はSDGs(持続可能な開発目標)を採択し、2106年から30年の15年間でその達成を目指す方針を出した。目標の(1)は「貧困をなくそう」、(2)は「飢餓をゼロに」であり、(15)には「陸の豊かさも守ろう」を掲げている。
 こうした状況に対して国連は、農民あるいは家族農業の重要性を指摘。2019年から28年を国連の「家族農業の10年」と定め、また18年には、小農民と農村で働く人々の権利に関する宣言「農民の権利宣言」を採択した。
 SDGsの目標達成には、途上国・先進国を問わず、小規模家族農業と、それを支える協同組合運動をバックアップし、「食料主権」を実現するのが、もっとも現実的である。その立場が、国連の「2012協同組合年」「2014家族農業年」「2015国際土壌年」、そして「家族農業の10年」につながっている。
 こうした世界の動きの中で日本の農業は危うい状況にある。農業生産基盤の弱体化と生産の縮小・後退が続いている。また自由貿易による外圧で輸入依存が高まっており、いまや穀物の自給率は25%に落ち込んだ。
 食の安全性も、日本では使用できない牛の成長ホルモンを投与したアメリカ産・オーストラリア産牛肉の無検査輸入が急増している。またアメリカで発がん性が問題になっている除草剤のグリホサートの残留基準値を大幅に緩和した。
 いま日本農業に求められるのは、食料主権の確立と、農山漁村の再生には兼業・高齢農漁家を含む多様な生産者と農山村漁村定住者の確保で農林水産業を活性化するしかない。オルタナティブな農林水産業を確立するには、(1)安倍政権の農協・漁協つぶしや法人化・大規模農林漁業優先・兼業農家追い出しの農政をやめさせる、(2)38%に下がった食料自給率回復のための具体的な食料・農業政策を行わせる、(3)政府には食料の安定供給に責任を持たせる、(4)TPPや日欧FTAで打撃を受ける畜産など国内農業への支援策を抜本的に強化させる、(5)遺伝子組み換え食品表示制度を改悪させない。牛成長ホルモン投与の牛肉輸入を禁止させることを政府に求めたい。

 

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