農政:農協研究会第15回研究大会
グローバリズムに対抗-家族農業に新潮流2019年5月21日
新自由主義グローバリズムのなかで、家族農業経営の存在意義について、農業協同組合研究会(会長=梶井功東京農工大名誉教授)が5月18日、都内で研究大会を開き、研究報告と意見交換を行った。いまやグローバリズムは、世界で「無残」な結果をもたらしており、EUやアメリカなど、グローバリズム先進国でも家族経営の見直しが始まっていることが明らかになった。
パネルディスカッションの様子(右から村田名誉教授、平沢氏、河原林氏と司会の岡阿彌氏)
研究会では村田武・九大名誉教授が、自由貿易のもとで危うくなっている食の安全と安定供給、農家の危機を総括するとともに、新自由主義グローバリズムの本拠地アメリカで都市の貧困と中小家族農業の危機を一体的に救おうとしている運動を紹介した。
ボストン近郊の非営利農業団体「ザ・フード・プロジェクト」は自治体などから農地を借りて、手ごろな価格での地元の農産物を手にすることができる地産地消のフードシステムの構築、低所得者が健康な生鮮食品を購入できる機会の拡大をめざすとともに、夏休みに高校生が農業で働く事業も実践し、次世代の育成、コミュニティの再生にも取り組んでいるという。
平澤明彦・農林中金総研基礎研究部長はCAP(EU共通農業政策)改革の方向と家族農業について報告した。
そのなかで平澤氏は2021年以降のCAP改革では「食料安全保障の確保」が条文のなかで明記されたことを強調した。これまではCAPの目的はEU農業の競争力の強化と生産性の向上だったが、平澤氏は環境への配慮や農村社会の強化なども目的に挙げられていることも指摘し、「今やCAPは持続可能性を維持するための手段として位置づけられている」と話した。
河原林孝由基・農林中金総研主席研究員は、生乳クォータ(生産割り当て)廃止で生乳価格が低迷するなか、ドイツの家族農業がバイオガス発電などの兼業化で農業と地域の持続を追求している取り組みとそれを組織化する協同組合の役割について報告した。また、乳価格低迷で酪農からは撤退したものの離農はせず、有機農業に活路を見出した家族農業とそれを束ねる販売組織についても紹介した。河原林氏は「地域のフロントランナー」が変革を生み出す芽になることを強調した。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日
-
つくば市の農福連携「ごきげんファーム」平飼い卵のパッケージをリニューアル発売2025年4月18日
-
日清製粉とホクレンが業務提携を締結 北海道産小麦の安定供給・調達へ2025年4月18日
-
森林再生プロジェクト「Present Tree」20周年で新提案 企業向けに祝花代わりの植樹を 認定NPO法人環境リレーションズ研究所2025年4月18日
-
「バイオものづくり」のバッカス・バイオイノベーションへ出資 日本曹達2025年4月18日