青果物:野菜の流通と文化を考える ―「野菜と文化フォーラム」が果たしている役割―
【野菜の流通と文化を考える】第2回 おいしい野菜を的確に評価したい2018年5月18日
はじめに
NPO法人「野菜と文化のフォーラム」は1987年の準備期からスタートした。10年経って、『10年の歩み』(1998年3月7日)を公刊した。そこには初期の活動が余すところ無く記載されている。
第2期は、NPO法人設立準備期である。多くの苦労があった。それを克服、ようやっと法人としてスタートしたのが2002年である。
こうして、現在の活動はある。HPもあり、多くの広報活動展開しているのだが、これを外部一般市民の眼でみると、分かりづらいという苦言を頂くことが多い。
そこで、活動の歴史を振り返り、その特徴を知ってもらう。既存の会員には尚一層サービスすることが、必要と考え以下、簡潔な歴史をまとめる。
1.草創期のころ
(1)文化としての野菜
野菜と文化はどう関連するだろうか。この難しい課題をかかげて、集いを始めた。そのスタートは意義深い。この部分を『10年の歩み』から引用しておこう。1987年(昭和62年)新春早々のこと。話す江澤正平さん、聞く楠瀬さん(園芸種苗業務)、全国各地の園芸地帯を巡って、とりまとめをしていた芦澤さん(農水省野菜試験場)。その問題意識が次の文章に集約されている。
「『野菜』をなんとか評価したい。食として文化として認識し、後世に伝えていきたい、その為にも少人数でいい、共通の認識のもとで、"食べ語る"そんな場を持とうではないか」
こうして、「奇しくも7人の侍」によって、11月7日、上野精養軒で、旗揚げされた。
「おいしい野菜フォーラム」が趣意書のタイトルだった。7人とは、江澤正平、栗山尚志、芦澤正和、岡山慶子、楠瀬健、近藤宏、榑沼安寿彦だった。
ついでに、「おいしい野菜フォーラムの趣意書」からエッセンスを引用する。
「地方品種を文化遺産としてとらえ、かけがいのない地方品種や現在流通している品種の中から、おいしい喜ばれるものを適地で安全に栽培し、より健康で和やかな家庭の団らんと豊かな食生活を提供しようと、生産者・流通関係者・大学等の試験研究者並びに職種を選ばず、野菜園芸に深い理解と情熱を持つ者が、自然発生的に集まり、自由に語り合うなかに発足しました」
「おいしい野菜」で一括したこと、「地方品種」を文化遺産ととらえたこと、野菜を「豊かな食生活」の主役としたこと、幅広き野菜関係者が「自由に語り合う」ような語らいの場としたこと。この趣旨は、その後のフォーラムの変わらぬ活動基調をなした。
(2)設立準備スタート
続いて1987年12月10日(木)、都内文京区で第1回設立準備委員会が開催された。続いて、第2回設立準備委員会が1988年1月21日(木)開かれた。こうして、会則19条を決定。また、議論の結果、趣意書を決定。そのまま設立総会の報告とした。以下が決定した歴史的「趣意書」である。全文を引用する。
「わが国の歴史の中で経験したことのない飽食の時代。にも拘らず健康維持に一日たりとも欠かせない野菜。野菜は食生活を豊かに、そして食文化を高めます。多様な消費願望をもつ消費者は、いまの野菜に対して多くの疑問を持ち、いらだちさえ感じています。
商品の特性・品質の良し悪しが分からない! 近頃の野菜は? 用途は? おいしい調理方法は? 安全性は大丈夫なの? 等々。
これらにこたえられるよう、生産、流通、販売の仕組みを吟味し、その改善策を見出す努力が必要と思われます。
『おいしい野菜』を的確に評価・認定するシステムを作りたい。
そして消費者が用途別に『おいしい野菜』を買い求められるようにしたい。
そんな願いをこめつつ、作り手、売り手、食べる側が一緒になって情報を交換し、『食べくらべ会』等を催しながら、積極的に調査を行い、『安全でおいしい野菜』『適切な用途と調理法』をアピールし、野菜の消費を伸ばしてゆこうとしていくのが、『野菜と文化のフォーラム』です。
ご共感が得られご参加願えれば幸いです。1988年3月3日」
(3)そして設立総会
順風万歩で3月3日、コープビルで49会員で、設立総会となった。総会で会則、会費など諸処のルールを決定。また主宰に江澤、副主宰に栗山、幹事に芦澤、後閑、近藤、楠瀬各氏を選出。記念講演は、上田フサ・女史栄養大学名誉教授、小松光一・千葉農業大学校教授の二人だった。
この設立総会模様は、いくつかの関係紙誌に紹介された。順調に船出したといってよい。
(4)時代背景
さて1987~88年の時代的背景はどうとらえることができるだろうか。
ひとことで言えば「バブル経済」に時代であった。では、それが野菜を巡ってどのような特徴を画していたか。中曽根内閣から竹下内閣で、87年10月はニューヨーク株式市場がいわゆる「ブラックマンデー」の大暴落になった。国内では地価が高騰し、88年には戦後最大の円高120円ベースになった。こうした勢いは、88年の牛肉・オランジの輸入自由化の日米合意になった。
野菜の消費多様化は進み、産地での品目多様化対応を進めた。小売り店頭では出所鮮明の産直志向が進み、他方、安全性を求める消費者志向は一層進んだ。
2.第1期の活動(1988年~1998年)
サロン時代の活動は、すべて手作り。見本があるわけではなかった。強いて言えば、江澤主宰の強烈なリーダーシップ。同時になにものにも強制されない自由な活動といってよかった。(第3回に続く)
(関連記事)
・【野菜の流通と文化を考える】第1回 JA全農青果センター設立の意味(18.05.15)
・【野菜の流通と文化を考える】第3回 NPO法人設立へ(18.05.26)
・【野菜の流通と文化を考える】第4回 多様な課題に応えて活動(18.05.27)
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