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青果物:野菜の流通と文化を考える ―「野菜と文化フォーラム」が果たしている役割―

【野菜の流通と文化を考える】第1回 JA全農青果センター設立の意味2018年5月15日

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今野 聰(NPO野菜と文化のフォーラム 監事)

 健康志向の高まりや異常気象による価格の乱高下、そして卸売市場法の改正など近ごろ野菜・青果物が話題になることが多い。そうしたなかで青果物流通に携わる人たちを中心に長年にわたって活動をしているNPO法人「野菜と文化フォーラム」が設立30周年を迎えた。そこで、長年この活動を支えてきた今野聰同フォーラム監事(前理事長)に、全農青果センター設立の意義や同フォーラムの存在と活動の意義を振り返ってもらい、今回を含めて4回にわたって連載する。

はじめに

 最近のJAcom農業協同組合新聞には、中央卸売市場制度の改革方向が頻繁に登場する。何よりも、小池百合子新知事になってから、築地市場からの移転先市場の安全安心問題が発端だった。同時の卸売市場制度改革論議が重なったが、そろそろ論議は終局の様相だ。
 一方、日常的な野菜の存在感、つまり「野菜と文化」への議論集中も大事である。時あたかも、来る6月19日(火)、NPO法人野菜と文化のフォーラムの総会・記念講演がある。メインの講演者は戸井和久・全農チーフオフィサー。かつてのイトーヨーカ堂社長である。野菜を巡る諸情勢を考え、正にタイムリーな企画である。
 ここで、少しNPO野菜と文化のフォーラムの活動経過に触れたい。1987年~88年にかけて、野菜関係者の幅広い語らいの場つくりが始まったのだから、すでに相当の歴史の積み上げがある。主唱者は江澤正平氏。神田秋葉原にあった東京神田卸売市場で働き、卸市場会社退職後も、飽くことなく「野菜と文化」を提唱しつづけて、90歳を過ぎて亡くなった。一方、江澤氏主導で2002年、この自由な語らいの場をNPO法人に衣替えした。
 かつて2009年から12年まで4年間、私はこのNPO理事長だった。全農在職時、大消費地販売推進部在籍で、フォーラム創立作業に参加した縁からだ。

 

1.そもそも野菜と日常

 生鮮食品、とりわけ野菜類は人間生活の命の源である。例えば古来から「春の七草」は生活に定着している。最近は野菜の健康プラス美容効果も提唱される。それなのに、今年前半の話題の大半は、なんと野菜価格の乱高下であった。こうして野菜評価の両面性と落差は大きい。冷静にこういう時代にこそ論議すべきではないか。
 すぎた戦後混乱期、米専業地帯の農村では、野菜類は極く普通の存在、つまり「野菜は庭先栽培」だった。引き売りの嫁さんに集まる町民を見て、我が母は「あれじゃ、家計が持たない」とよく言ったものだ。
 だが自家栽培の野菜といっても、レタス、ブロッコリーなど西洋野菜はなし。菜の花、玉菜(キャベツ)、サヤエンドウ、ニラ、ホウレンソウ、トマト、ジャガイモ、大根、白菜、からとり(ヤツガシラ、さといも)などが主役。平凡そのものだった。冬場でも、雪囲いの野菜と漬物、乾燥野菜との組み合わせは日常だった。もちろん春先は山菜がある。秋にはきのこ類だが、こういう自然サイクルを都市生活が多勢になって、野菜類との付き合い方を一変させた。
 こうして今や、輸入野菜、カット野菜まで、需要があるから店頭に並ぶ。皮肉にも、今春のような超高値の大根、キャベツ、レタスの登場となった。消費者は血眼の売り場探しに変身したのだ。

 

2.全販連(全農)生鮮食品集配センターの意義

 既に触れたが、昨年来の国の卸売市場制度改革の動きは急展開した。落ち着いたところは市場開設者を行政機関以外に門戸解放である。これからどうなるか。築地市場から夢の島への移転は、ようやく、今年11月。それだからこそ、改めて全農の流通センターの設立経緯が意味を持つ。
 周知のとおり、産直事業が全国各地に起き始めたのは1960年代だった。経済の高度成長政策と関係していた。その象徴的事態は、美濃部革新都政の主要施策として登場した、群馬県嬬恋村とのキャベツ産直事業の実験事業だった。都民の大方はこれに賛同。驚いた農林水産省は、省内の数少ないバイパス流通派を結集して新流通経路事業を策定した。
 かくて、全農(当時は全販連)に働きかけて、東京生鮮食品流通センターを設立した(1968年、現在はJA全農青果センター(株))。続いて1972年に大阪センター、1973年に神奈川県大和センターと開設した。しかも1977年の全農中期5か年計画ではなんと全国で15センター設立の構想だった。
 これに既存の卸売市場業界が反発。当時、スーパーの急伸に対して、通産省主導の大型店出店規制が政治問題化したから、政治問題が重なった。いくつかの経過で、この大構想は頓挫。野菜に限らず、生鮮食品の流通改革は、かくのごとく、政治問題化しやすい。

 

3.最近のおどろくべき変貌

 今や、店頭は生鮮食品オンパレードである。その脇に急増する惣菜デリカ類。油揚げ物類、カット野菜などである。野菜のこだわりを除けば、おにぎりも、デリカコーナーを飾る時代になった。流通ルートも大変化のまっただ中。生鮮品を家庭直結する業態は広がる。宅配本で知られるアマゾンが、なんと生鮮宅配を始めるというのだ。
 それだから、1980年代末から徐々に広がったJAを始めとした直売所運動は意義深い。
 フォーラム設立30年記念講演会の講演者・戸井和久氏は現在、全農営業開発部のチーフオフィサ-である。かつてのイトーヨーカ堂でトップ。青果物担当のキャリアは長い。おそらく、さまざまな関連業界を含めて、多くの疑問に答えてくれよう。

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