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会場の様子(JA全農のブース)
◆IT駆使して、栽培環境をデータ化
企業側からの提案として注目されるのは、ITを駆使して施設内の栽培環境の管理を支援するシステムだった。
施設内の温度、湿度、CO2濃度、日射量などの栽培環境のほか、作業記録などをデータ化して蓄積し、スマートフォンやパソコンなどに配信するサービスやソフトウェアが幾つか出展されていた。
JA全農は今秋から、NECと国内暖房機器メーカー大手のネポンと共同開発した農業ICTクラウドサービス「アグリネット」のサービス提供を始める。
ネポン社製のハウスカオンキや、各種センサーなどを使って栽培環境のデータを集積。NECの提供するクラウドサーバーを経由して、各生産者、JA営農指導員などに定期的に自動配信するサービスだ。ハウス内の環境を24時間監視し、異常があればメール等で警報を配信する。クラウドなので、初期費用として約30万円のセンサーBOXとコントローラーBOXを導入するだけでよく、また、その後のデータ蓄積・保管もNECのデータセンターが管理するため利用者の負担は軽い。
さらに、JAの営農指導員などがこのシステムに参加することで、防除暦や市況、生産部会の資料などのお知らせも自由に組合員へ配信することができ、JAと組合員との新たな交信ツールとしても期待される。
今後もネポン社の持つ光合成促進機、温風機など接続可能機器を増やしていく予定で、将来的には管理するだけでなく、温度・湿度の調節、天窓の開閉といったハウスの制御も遠隔操作できるよう、サービスをさらに進化させていく考えだ。
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上:オープニングセレモニーでのテープカットの様子
下:ネポン社製のコントローラーBOX、センサーBOX
◆より低コスト、より多収穫・高品質
そのほかにもITを駆使した管理・制御システムが出展されていた。
富士通は「Akisai」(秋彩)の名称で、同社の食・農クラウド「SaaS」を使った生産・管理・流通などの総合的な経営支援サービスを10月にスタートする。また、自動車部品サプライヤーのDENSOも、種苗会社のトヨハシ種苗と提携して、ハウス内の環境を管理し遠隔操制御する農業生産支援システムを展示していた。
こうした生産管理・支援システムが必要とされている背景には、より少ないコスト・人員で規模拡大を実現するための根本的なシステムの改革が求められているほか、後継者や農業未経験の雇用就農者に農業技術をより早く伝承させ、なるべく早く経営を安定化させたい、というニーズが高まっているからだろう。
◆小型植物工場を丸ごと販売
従来になかった植物工場のカタチとして、大和ハウス工業の植物工場ユニット「agri-cube」のような小型プラント施設を丸ごと販売するものがあった。
そうした商品の多くは、例えば「店産店消」などのコンセプトで、レストランの店内、または敷地内に小規模の植物工場を設置し、店内で提供する野菜をその場で生産してはどうか、という提案だ。中には、電子レンジほどの大きさの超小型の育苗プラントもあったが、コストの高さがネックとなっており、普及にはまだまだ時間がかかりそうだ。
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オーブンレンジ程の大きさの超小型植物プラント
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