今回は医療関係団体も出席し、農林水産関係団体、消費者関係団体を超えた運動となった。また各関係団体からの決意表明や各政党のあいさつに対し、会場から拍手や声が沸く場面も多く、これまで以上にTPP交渉への不安と怒りが強まっていることが感じられた。
これまで大手マスコミにあまり報じられてこなかった「TPP反対派」の運動だが、APECを前にして連日報道されている「TPP論議」の影響もあってか、集会後のデモ行進の反応などから国民のTPPに対する認知、関心は以前より高まっていることもうかがえた。
また集会、デモのほかに、JA全青協は国会前で夜を徹しての座り込みや、トラクターパレードによる運動を展開。ガンバロー三唱で発声した牟田天平会長は、座り込みで多数の議員から激励の言葉を受けたことやパレードでは通行人から応援の声もあったことを報告、「国民は我々の見方。しっかりと自信を持ち、今後もTPPに対して断固阻止の気持ちでがんばっていくことを改めて誓おう」と呼びかけた。
◆医療団体からも連帯の声
主催者を代表し、あいさつしたJA全中の萬歳章会長は、政府がTPP参加について「国民に情報開示を全くせず、逆に心配する必要はないという見方だけが宣伝されている現状は異常だ」と指摘。「今やるべき最優先課題は東日本大震災からの復旧・復興と原発事故の終息。いまTPP参加を検討することは被災地の現状を無視し、わが国が誇る食料基地に追い打ちをかける暴論」と反論した。
また1166万人から反対署名が寄せられたことについて「まさに国民の声としてあらゆる地域、多様な方々からTPP反対の声が広がっていることの証。国益とは国民の暮らしといのちを守ること」などとして、TPP参加断固反対への強い決意を述べた。
連帯のあいさつを述べた日本医師会の中川俊男副会長は、限られた情報しか提供されないなかでのTPP交渉参加は日本の医療に深刻な影響を及ぼすと懸念。「医療制度については議論になっていない、すぐには議論の対象にはならないだろう」という政府説明について「2001年以来アメリカは日本の医療に市場原理を導入することを明確に要求してきた。もし導入されれば世界に誇ってきた世界一平等で公平な医療提供ができなくなる」と訴えた。
【決意表明】
◆食の安全水の泡に
生活クラブ生協連・加藤好一会長
新自由主義は生産者と消費者の連帯を引き裂く動きが非常に目立つ。生協としてこれまで産直連携に努めてきた。TPPは生産者のみならず、心ある消費者の真摯な営みも打ち砕くことになる。食品の安全の観点に立って原産地表示やGM食品反対にも取り組んできたが、これまでこつこつとやってきた蓄積が水の泡となるかもしれない。また協同組合の存在感を失わせるような流れになることも懸念している。どうしてもTPPを許すわけにはいかない。
◆復興よりも先なのか
JA全国女性組織協議会・瀬良静香会長
何よりも大切で重要なテーマである食、くらし、いのちの問題に私たち女性は敏感に反応する。これを脅かしかねないTPP交渉参加には容認できない。そもそも交渉についてどういう内容なのかはっきりわかならい。政府は十分な情報開示をせず「交渉参加という船に乗り遅れると大変なことになる」と不安をあおるばかり。被災地の人々のくらしがまだ落ち着きを取り戻せていないなかで復興よりも先にやるべきことなのでしょうか。
◆多面的な影響視野に
全国漁業協同組合連合会・服部郁久会長
水産業と漁村地域が担っている国境監視や水難救助など重要な機能が衰退し、国全体に重要な問題を引き起こすことに国は気づくべき。我が国は国際的な資源管理にリーダーシップを発揮しなければいけない立場にあることを認識すべきだ。
全国の漁業者が一体となって大震災・大津波からの復興に取り組まなければならない今、その力をもぎ取るような国の仕打ちは決して許されるものではない。
◆国民の生活を守れ
TPPを考える国民会議・久野修慈副代表(中央大学理事長)
戦後日本の高度成長のために食料を供給してこられた方々を裏切るような政策を選択することには絶対反対。推進している政党や経団連の方々は何で飯を食ってきたのか肝に銘じ、堂々と戦いを挑まねばならない。国際化のなかで提携はしていかなければいけないが、日本人は日本人として生活を守っていかなければならない。その中で堂々と世界に羽ばたいていく、そういう時代だ。
◆資源国壊す自由化
全国森林組合連合会・林正博代表理事会長
昭和39年に木材のほとんどが自由化となり、70%だった木材の自給率が現在は20%半ばまでに落ち込んだ。これが自由化の実態。先人の遺産を受け継ぎ、国土の7割を森林が占める資源国が関税の自由化でこのようなかたちになる。産業発展のためには生産性・効率化は必要だが、それだけでは国を守っていくことはできない。第一次産業には数値では表せない世界がある。
◆アメリカの従属国家か
鈴木宣弘東京大学教授
ここまで開国した食料市場は世界にない。そのうえでさらに開国というのはどういうことか。(TPP交渉参加は)独立国としての最後の砦まで明け渡す大変なことをやるということ。
ぎりぎりまで情報を出さず、国民的な議論をせずに強行突破しようとする姿勢はもはや民主主義国家としての体をなしていない。
「TPPはアジア太平洋地域の貿易ルールになるからこれに乗り遅れると日本は孤立状態になる」というがこれは嘘。アジアを分断してそこから利益を得るのがアメリカの政策。日本はアジアとともに共通の利益があるようなルールをリードして作っていかなければいけない。
アメリカからの要請だから仕方がない、ということが見え見えでは、日本は自主性のない従属国家として世界から馬鹿にされる。日本が尊敬される独立国家として繁栄するためにはTPPへの拙速な判断を回避しなければならない。いざというときに国民に食料も提供できない、病気になっても治療が受けられないという人がたくさん出てくる国に日本をするわけにはいかない。
【政党あいさつ】
◆郡司彰氏(民主党・農林水産部門会議座長)
経済連携交渉はお互いの国情を配慮しながら行うのが外交姿勢として当たり前。だとすれば今回の交渉が情報の少ないままで決められたり、交渉に参加して途中離脱していいという論議には断じて賛同するわけにはいかない。皆さんの声や被災地の声をしっかりと受け止めていく。
◆亀井静香氏(国民新党代表)
日本は独立国家。オバマ大統領に過剰なサービスをする必要など何もない。国民新党は断固として反対に全力をあげていく。
◆大島理森氏(自民党副総裁)
被災地のみなさんにいま政治がすべきことは生きることの安心と安全をつくることだ。
「乗り遅れるな」というそのバスが安心と安全をつくるバスだったら急ぐ。しかし乗り遅れてもいいバスじゃないか。じっくりとその中身を開示し説明すべきだ。
◆石田祝稔氏(公明党・農林水産部会長)
約1167万名もの署名を皆さんの手で集めていただいた。まさしくこれが民意ではないか。
(TPP参加は)「開国」ではなく「残酷」。参加するのに意義があるのはオリンピックだけ。わからないことが多いなかではっきりとわかっていることは食料自給率が13%になるということ。交渉参加は断じて認められない。
◆志位和夫氏(日本共産党・幹部会委員長)
アメリカが食の安全、医療、中小企業、金融、雇用などあらゆる分野で横暴勝手な要求をつきつけてきたことはまぎれもない事実。これらの要求に「ノー」といえるのか、と推進派にいいたい。日本の食料主権、経済主権を丸ごとアメリカに売り渡す亡国の政治を断じて許すわけにはいかない。
◆福島瑞穂氏(社民党党首)
APECにオバマ大統領へのおみやげとしてTPP参加を持って行く、こんなふざけた話があるのか。国民の命や農業、生活はアメリカ大統領へのおみやげ程度のものなのか。
TPP問題は農業と一部輸出企業の対立ではない。アメリカの規準を日本に押しつけていくことであり、アメリカの51番目の州として日本の利害をアメリカがとっていくことを示している。
(関連記事)
・【速報】「TPP交渉参加反対!」全国決起集会 東京・日比谷に3000人が集結 (2011.10.26)
・きょう、TPP反対全国決起集会 (2011.10.26)
・JA青年部盟友の「座り込み」スタート JA全青協 (2011.10.25)
・「TPPについて一緒に考えよう」 JAグループらが街宣 (2011.10.24)
・TPP、国会議員350名超が「参加反対」表明 全中の国会請願に過去最大の紹介議員数 (2011.10.24)
・大国民運動の展開を―TPP参加は断固反対 (2010.11.15)