◆海外から研究者も参加
この全国集会は2012国際協同組合年後援事業。実行委員会共同代表はJA埼玉県中央会の鯨井武明会長、埼玉県生協連の伊藤恭一会長、労働者福祉東部ブロック協議会の遠藤幸男会長らが務めた。
集会には国連で協同組合のアドバイザーを務めている英国・スターリング大のジョンストン・バーチャル教授も参加した。バーチャル教授は国際協同組合年の意義として、世界中の人たちには協同組合のメンバーが何億人もいることや、金融、住宅などさまざまな協同組合が存在し活動しているなど「知識を高めることができた」ことや、連帯の取り組みが高まったことを指摘、「とくに西洋の金融の世界は混迷を深めている。これまでの資本主義的なやり方では修復できず、協同組合に解決策がある」など話した。
「連帯経済」を提唱しているフランス国立工芸学院のジャン・ルイ・ラヴィル教授も参加。「経済を民主化できなければ社会も民主化できない。そのための多くの市民が参加し経済を民主化させる連帯経済の動きがあちこちで出てきている」と話し、フランスでは新政権のもとで社会経済連帯大臣というポストが生まれていることを紹介した。教授は「連帯経済はまだ主流ではなく周辺部だという議論もある。しかし、市民の参加が広がれば大きな変革の力になる」などと訴えた。
(写真)
上:英国・スターリング大・ジョンストン・バーチャル教授
下:フランス国立工芸学院・ジャン・ルイ・ラヴィル教授
◆寄り添う社会をつくる
パネルディスカッションでは、東日本大震災と原発事故の経験、さらには経済停滞のなかでどう転換を図るべきか、そのための取り組みを議論した。
哲学者の内山節氏はたとえば、災害の被害について「国は数字でしか把握しない。肉親や友人を失った思い、人間の受けた被害に寄り添っていくことが大事」と述べ、復興計画も「海の見える街にしたい、子どもの声が聞こえる街にしたいといった人々の思いから出発するべきではないか」と語った。
また、福島の原発事故については「原発は遠くにあるもの、というイメージが壊れ、実は隣にあったということがはっきりした」と指摘して人間がイメージにとらわれてしまう危険性にも警鐘を鳴らした。
こうした指摘をしたうえで内山氏は、「人々が結び合う、関係し合う姿が直接見える社会をめざすのが協同組合運動ではないか」と提起した。
その具体的な例として挙げたのは自らが拠点としている群馬県の上野村。人口は1300人ほどだが、「この小ささが有利になる社会」づくりの取り組みとして、地域の間伐材を活用して発電する電力自給の構想が出ているという。
内山氏は「理念や思想があってそれに基づいて取り組むのではなく、自分たちの世界がめざす方向を具体的に提示することが協同組合には重要」などと述べた。
◆資本ではなく「命」の原理へ
埼玉県小川町で有機農業を実践してきた金子美登さんは40年以上にわたる実践と地域づくりの成果などを報告した。
初めた頃は「有機農業は勇気農業だった」と金子さん。しかし09年には集落全体が有機農業に。米・麦・大豆のほか年間60品目を生産し地域の酒造メーカーや豆腐店、レストランなどと提携している。 また、さいたま市にある企業からも米の販売依頼が出るなど、「そこにある地域資源を使った自給的な取り組みの延長線上で地域の企業や消費者ともつながっていった」と話した。
遠く離れた企業などとの農商工連携ではなく地元の産業と資源を分かち合うかたちで地域づくりも実現してきた。今は家畜のふん尿などをつかったエネルギー事業にも取り組む。金子さんは「命が見えない工業や都市の力では日本は救えない。資本から『命』の原理に変えなくては。私たちの地域には『始まっている未来』があると思っています」と語った。 また、城南信用金庫の吉原毅理事長も報告した。信用組合も金融の協同組合であることを強調し、現在の経済について「効率や収益だけしか考えず、働く喜び、人間の成長といったこと無視していることに間違いがある」と指摘するとともに、人の存在を尊重する協同組合として原発事故に「目を閉ざすわけにはいかない」として脱原発を訴えている取り組みを強調した。
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