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【いま、「協同」が創る2012全国集会】 資本主義システムは生き残れるか 水野和夫・埼玉大学客員教授(内閣官房内閣審議官)

 JAや生協、労働者協同組合など各種の協同組合で実行委員会を構成した「いま、『協同』が創る2012全国集会」が11月17、18日に埼玉県大宮市で開催された。
 全国集会では埼玉大学客員教授で内閣官房内閣審議官の水野和夫氏が「歴史的危機の時代に求められる新しい経済と社会?資本主義システムは生き残れるか」と題して記念講演を行った。その概要を紹介する。

水野和夫・埼玉大学客員教授(内閣官房内閣審議官) 既存のシステムが社会のさまざまな課題に応えられなくなっているが、しかし、新しいシステムが見えない……、これを危機という。既存のシステムで動かそうとすればするほど泥沼にはまっていく。その典型が「市場が正しい」とする新自由主義、グローバリゼーションだ。
 グローバリーゼーションとは国境を超えたヒト、モノ、カネの自由な移動と定義されているがこれは表面上のこと。本当は中心と周辺を結びつけるイデオロギーのひとつで、とくに金融資本市場にそれが表れている。米国のウォール街が中心で英国、日本が続く。分かりやすいのはEU。ベルリンが中心で周辺はギリシャやポルトガルということになる。
 しかし、米国、英国、日本、ドイツ、さらに近くそうなると予想されるフランスも含めると5カ国の国債金利は2%を下回っている。日本は15年前から続いている。
 国債の金利とは企業の利潤率と同じだが、企業なら国内で利潤が上がらなければ、たとえばアジアへという流れが起きる。しかし、国は企業のように外に出て行くことはできない。
 では、なぜこの5カ国で国債金利が低下しているのか。実はグローバリーゼーションとはあくまでも現在進行形で、これで終わり、ということはない。中心の米国は周辺を次々と広げていったが、今やもうその先はない。たとえば宇宙は市場になりはしないだろう。それを市場自身が見込んでいるために金利が上昇しないと考えられる。

◇   ◇

 ケインズは過去に文明が破綻した国は金利を下げられない国だっだと指摘している。今は金利急騰しているギリシャなどがそれに当たるだろう。
 同時にケインズは金利が下がっても総需要が増えず人々の暮らしの不満が解決できないときは、同じことが起きると指摘している。 米国では富の24%を所得の上位1%が占めている(07年)。日本でも上位5%が富の25%を占めている(05年)。一方、日本では1987年に3.3%だった貯蓄非保有世帯の割合が2011年には28.6%にまで上昇。わが国ではほとんど存在しなくなったと思われた無産階級が誕生している。米国も日本も不満が高まっている社会だ。
 資本主義はそもそもコレクション(蒐集)という性格を持つ。ローマのような帝国は軍事力で領土と諸民族をコレクションし続けた。資本主義国家は市場を通じて諸国やマネーをコレクションし続けてきた。コレクションは過剰に行き着く。このコレクションから、いかに撤退するかが資本主義を見直す課題となる。そのためには富の分配、所有権、契約のあり方などについて舵を切る必要がある。


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