畜産の環境負荷 実際は4割減2018年4月19日
・温室ガス排出係数、新基準へ
農研機構をはじめとする5つの共同研究機関は、豚や牛の尿汚水処理で発生する温室効果ガス(一酸化二窒素とメタン)の実測にもとづき、汚水に含まれる窒素と有機物1gから排出される温室効果ガスの量を示す一酸化二窒素排出係数とメタン排出係数を算出し直した。
わが国の畜産由来の温室効果ガス排出量は、農業から排出される全体量の41%を占めるとされており、より環境負荷の少ない家畜生産体系の開発が求められている。一部では「日本の畜産は温室効果ガスを出しっぱなしではないか」との批判も生じているが、現在の排出量は、実験室内データで算出した排出係数を使って推定されていて、実際の値とのかい離が懸念され、そうした批判をかわすためにも、現場の発生量の正確な把握が必要だった。
そこで機構は、豚と牛の生産現場から発生する排せつ物由来の温室効果ガスのうち、その多くを占める「尿汚水の浄化処理に由来する温室効果ガス」の排出係数を、家畜生産施設(豚5か所と乳牛1か所)に設置した実用規模の尿汚水浄化処理施設で、その排出量や汚水中の有機物濃度、窒素濃度などを実測した(図1と図2)。 この実測には岡山県農林水産総合センター畜産研究所、千葉県畜産総合研究センター、佐賀県畜産試験場、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが参加した。その結果、現行では一酸化二窒素の排出係数が過大に見積もられていることが判明した。さらに最新の排出係数を用いると、豚と牛の尿汚水処理に伴う温室効果ガス排出量は従来、年間約150万tとされていたものが41%減の90万t程度に収まることが分かった。
今回算出した一酸化二窒素とメタンの排出係数は「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」に採用される予定で、今後わが国の養豚や乳用牛、肉用牛生産がもたらす環境影響評価の算定に使われる。機構によると、今回算定した温室効果ガスの排出係数は「現状を正確に示す値として、より環境負荷の少ない家畜生産体系の開発に役立つ」と話している。
*日本国温室効果ガスインベントリ報告書とは、国連気候変動枠組条約にもとづき、自国の温室効果ガスの排出と吸収の目録(インベントリ)を義務として報告するもので、わが国は毎年4月に最新の報告書を提出している。
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