「受託拒否の禁止」など規制廃止を提言-規制会議2017年11月27日
政府の規制改革推進会議農林WGと未来投資会議の合同会合は11月24日、「卸売市場を含めた流通構造の改革を推進するための提言」をまとめた。提言では「受託拒否の禁止規制を一律に適用すべきではない」とし、第三者販売の禁止や、商物一致なども含めて現在の規制をほぼ廃止するという極端な提言をした。この問題を最初に議論した会合で議事録には「そもそもこの法律を廃止して次のステージに行くことこそが、不要な規制をゼロベースで見直すことの結論になる」との一部委員の発言があり、卸市場法廃止ありきの姿勢で議論に加わった委員もいることが示された。
提言では、今後は「生産者が必要とする機能を自由に選び戦略的に使う選択肢の一つとして卸売市場をとらえ直し」、「国が必要最小限の関与を行うという方向に改めるべきである」と指摘した。 現在は卸売市場の開設については国や都道府県が整備計画を立て市場開設者を許可、認可するという制度になっているが、提言では市場開設者が「国の関与により、その公正な取引を確実にすることを望む場合」、国や都道府県が「認定する」という枠組みに改めるべきだとした。
その際、中央卸売市場と地方卸売市場という現行法の類型は維持しつつ、地域特性や規模、品目などで区別し中央卸市場については国、地方卸売市場については都道府県が認定するという枠組みを提起した。
市場の設置主体については、現在すでにさまざまな主体が市場を設置している現状があると指摘し、設置者の属性は問わず国・都道府県の認定を受けられるようにする。
その認定を受けるために設置しなければならない規律には、
▽売買取引の方法(せり売り、入札などの方法とその公表)
▽差別的取引の禁止(すべての生産者が公平に扱われ、分荷面でもすべての仲卸・売買参加者が公平に扱われる)
▽取引条件の公表(委託手数料や代金決済ルールなど)、
▽取引結果の公表
を挙げた。
そのうえで「第三者販売の原則禁止」、「商物一致の原則」、「直荷引きの原則禁止」の規定については「一律に適用すべきではない」と提言した。理由はこれらのルールは情報通信技術や冷蔵、冷凍技術が未発達で主たる取引が卸売市場のなかで完結できた時代に決められたものであり、現在の実需者の多様なニーズに応えることが難しくなっていることを挙げた。さらに、これらの規制を維持すると市場外取引を逆に増加させる可能性があるとして、卸売市場を発展させるという今回の改革方向と矛盾すると指摘した。
焦点の「受託拒否の禁止」については、その禁止規制が一律に適用される結果、「生産者が流通手段を吟味せずに安易に中央卸売市場に出荷することを助長しかねず、必ずしも生産者の所得向上につながらない点に留意する必要がある」と指摘。さらに、「鮮度や大きさ等の面で著しく劣り、環境影響や倫理等の点で不適切な生産・出荷がなされ一律に受託することが生産者の不適切な活動を助長しないとも限らない」と生産者の努力を逆なでするような指摘までしたうえで、「受託拒否の禁止規制を一律に適用すべきではない」と提起した。
◇ ◇
今回の提言にある「規制を一律に適用すべきではない」との文言について、内閣府の事務局は「全国一律で守れということはやめるべきだ」との趣旨だと説明し、受託拒否の禁止などを規定する法律は不要との提言だと位置づけた。
ただし、11月1日に開催した同会議による卸売市場関係者からのヒアリングの場で、出席した名古屋の仲卸、丸進青果(株)・西脇社長は、金丸議長代理からの「規制のなかで残すべき規制は何か」との質問に対して「受託拒否の禁止は絶対に残すべき」と答えている。理由は「受託拒否ができるようになると今日は要らないよ、ということを卸が産地に言ってしまい産地のほうが非常に困る」として「農家のために」という改革趣旨に「ひっかかる」と強調している。
こうした現場の声があるなかで、会合では「農協や全農が買取販売、直接販売という改革を進めているなか、受託拒否はそぐわない」、「戦後の食料難の時代と違う。受託拒否禁止は今の消費者のあり様と切断する」などの意見も出て提言は了承された。
今回の提言でいう卸売市場法の改正は市場を開設したい者のうち、すでに触れたように売買取引方法の公表などいくつかの規律を守る者が申請すれば行政が認定するという枠組み。その場合は中央、地方の卸売市場の名前を使用できることを想定する。ただし、市場を開設することは原則自由になるため、大量に農産物等を扱う市場であっても認定を受けるか受けないかは市場開設者の選択ということになる。
一方、自民党でも卸売市場法の改正の議論が進んでおり、受託拒否の禁止規定の維持などについてはJAグループなどからも提言や要請を受けている。今回の規制改革推進会議の提言には反発が出そうだが、政府は年末までに卸売市場法を含む流通構造改革について結論を得ることとしており、今後の議論が注目される。
【卸売市場を含めた流通構造の改革を推進するための提言】のポイント
〈規制のあり方〉
○卸売市場は生産者にとって重要な選択肢。役割を発揮しようとする市場の開設者を国が後押しする仕組みに変える。
○各種規制は原則廃止。国が一律に関与する規制は必要最小限に。
〈開設形式〉
○食品流通の選択肢を生産者に提供しようという者が、国の関与で公正な取引を確実にすることを望む場合に、申請に基づき国、都道府県が認定。
〈設置主体〉
○中央卸売市場の開設者を都道府県と人口20万人以上に市に限定する規制を撤廃。意欲と能力があれば設置者の属性を問わず認定。
〈設置すべき規律〉
○売買取引の方法とその公表
○差別的取扱の禁止
○取引条件等の公表
○取引結果の公表
〈その他のルールの取り扱い〉
○「一律に適用すべきではない」=受託拒否の禁止、第三者販売の禁止、商物一致の原則、直荷引きの禁止
(関連記事)
・自給率向上に抜本策が急務-JA全青協(17.11.16)
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・【卸売市場法】「受託拒否」の堅持を-JAグループ(17.11.10)
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