農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
農は「いのち」の「生存条件」【内橋克人・経済評論家】2018年10月1日
安倍首相はついに「日米2国間の関税交渉入り」を受け入れた。日本国内に向けてトランプ米大統領と蜜月関係にあるかの如く装うことで「外交のアベ」を演じてきた首相の仮面が、一瞬にしてはげ落ちた。安倍首相はこの新たな「関税交渉」は、米国からのかねての要求である「FTA(2国間の自由貿易協定)ではない」と強弁したが、苦し紛れのウソに満ちている。安倍首相が「便用(べんよう)」した「TAG」なる珍語をそのまま伝えた米国内メディアは存在しない。AP通信はその日のうちに「FTA交渉入りで日米合意」と報じた。
◆日本を滅ぼす「3つの未来」
つづく3つの「大事」を予見しておこう。
第一に安倍発言通り「FTAではない」のならば事態はいっそう深刻になる。日本は、ガット(関税貿易一般協定)の規定に従い、今後、日米間で締結される「関税引き下げ」水準をWTO(世界貿易機関)加盟国のすべてに適用しなければならなくなるからだ。「トランプの米国」が進める交渉の戦利品がWTO加盟国のすべてにしたたり落ちる。
第二に、今後、「覇権型交易」が世界の主流となるだろう。本来、「互いに"良きもの"は交換しよう」という「互恵・水平型交易」が国際貿易の健全な姿である。これに反して、たとえば典型的な「プランテーション型農業」(単一品目・巨大生産)の生み出す強大な競争力を武器に、相手国産業をなぎ倒し市場を独占する。安保(軍事)と経済の「表裏一体戦略」を駆使すれば、覇権型交易は容易に成立する。日米FTAが典型例を示すだろう。
第三に、自動車が日本の「基幹産業」ならば、「農」は私たち人間の「いのち」そのものの「生存条件」である。その食料―日本は穀物自給力をすでに米国の手に委ねてしまった。飼料用穀物はいまや全量輸入。うち99%が米国からの輸入。大豆もまた94%を輸入に仰ぎ、うち72%が米国から。小麦はどうか。86%輸入で、うち60%以上が米国依存・・・。
◆売り渡される「自主権」
1854年、ペリー再度来航によって日本は「日米和親条約」の締結を余儀なくされた。不平等条約の始まりである。交易「自主権」のすべてが奪われた。関税自主権、片務的な「最恵国待遇」の受容、さらに治外法権(領事裁判権)、協定関税制、外国貨幣の国内流通の許諾・・・とつづく。海運、金融など重要資本はほとんど欧米に独占された。
以来170年余、「日本を取り戻す」がうたい文句の安倍政権によって「歴史は繰り返す」の愚行がなされようとしている。いま、私たちは「新たな農的価値」の真意を日米両首脳に突きつけ、高度な再認識を迫らねばならない。
【TAGに対する緊急企画「許すな!農業を売り渡す屈辱交渉」のまとめページはこちら】
・TPP11と日米TAG ダブルパンチで脅かされる食の安全【堤未果・国際ジャーナリスト】
・日本農業をトランプに蹂躙させてはならぬ【森田実 政治評論家・山東大学名誉教授】
・日本一の和牛産地で 農家の意欲低下懸念【下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長】
重要な記事
最新の記事
-
鳥インフル 国内47例目 千葉県で確認2025年1月30日
-
初動5年で農業の構造改革 28の目標掲げ毎年検証 次期基本計画2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(1)2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(2)2025年1月30日
-
2025年も切り花の品薄単価高が続く【花づくりの現場から 宇田明】第52回2025年1月30日
-
何かと言えば搗いた餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第326回2025年1月30日
-
雑草防除で成果保証型サービス開始 節水型乾田直は栽培を普及へ BASFジャパン2025年1月30日
-
担い手集め地域農業守る 労働力支援協議会が発足 JAみなみ筑後2025年1月30日
-
農林中金「アグリウェブ」に農業特化型生成AIを提供開始 きゅうりトマトなすび2025年1月30日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」神奈川県で幻の果実「湘南ゴールド」を収穫 JAタウン2025年1月30日
-
JAしまね「ファミマフードドライブ」を通じて食品寄贈 地域支援拡大の仕組みを構築2025年1月30日
-
「北海道スマートフードチェーンプロジェクト事業化戦略会議2025」開催 農研機構2025年1月30日
-
今年いちばん「うまい米」第11回「お米番付」最優秀賞など発表 八代目儀兵衛2025年1月30日
-
茨城県のブランド豚肉を堪能「常陸の輝きメニューフェア」2月1日から県内のレストランで開催2025年1月30日
-
「日本さつまいもサミット」今年度の特選生産者8組が決定2025年1月30日
-
【人事異動】協友アグリ(1月29日付)2025年1月30日
-
【人事異動】東邦化学工業(2月1日付)2025年1月30日
-
【役員人事】クミアイ化学工業(1月29日付)2025年1月30日
-
彦摩呂が驚く 南アルプス市のおいしいもの「タベサキ」新番組スタート2025年1月30日
-
農業課題解決と技術革新へ 広沢技術振興財団ものづくり技術助成事業に採択 AGRIST2025年1月30日