農政:緊急企画:許すな!日本農業を売り渡す屈辱交渉
TPP11と日米TAG ダブルパンチで脅かされる食の安全【堤未果・国際ジャーナリスト】2018年10月1日
2018年9月28日に報道された「日米物品貿易協定(TAG)」は、農業や車業界だけでなく、全国民が危機感を持つべき問題だ。中間選挙を意識するトランプ政権は早速、TPP離脱に猛反発していた農業業界などに向け「日本が拒否し続けていたFTA交渉をついに開始します」と宣伝、交渉中は引き上げないが決裂したら即発動可能な「自動車関税」も外交カードとして盛り込み、関連団体から早速期待の声が上がっている。
一方、安倍総理の「今までの包括的FTA交渉とは全く異なる」という国内向けの説明については、いつもの言葉遊びよりその中身の方を見るべきだろう。GATTルールでは、TPPやEPA、FTAなど自由貿易圏以外での個別関税引き下げは認められておらず、関税は当然全品目が対象(=包括的)になるからだ。また、「TPPが最大限の譲歩」である事が現場の不安を払拭する」と言う斎藤農水大臣の発言も、どの口が言うのか理解に苦しむ。酪農分野など、離脱した米国の取り分まで大盤振る舞いで参加国に与えたようなTPP11の譲歩内容で、安心する農家がどこにいるというのか?
その上日本政府はこの間、離脱した米国の要求に沿って、種子法廃止や、企業への主食種子データの提供、自家採種原則禁止、生乳流通自由化など、ことごとく日本の農業を追い詰める法改正をセットで進めているのだ。
だが、これは生産者側の問題だけにとどまらない。今までの自由貿易協定に存在しなかった「遺伝子組み換え承認促進」という初条項を始め、食の安全が次々に緩められるTPP11と、それと同等の日米TAG(実質FTA)のダブルパンチで、日本国民の食は今後確実に不安にさらされる。さらに警戒しなければならないのは、二国間共同声明に記載された「TAG交渉終了後にサービス、貿易、投資に関する交渉を始める」(3項及び4項)の部分だろう。交渉が関税以外のサービスや非関税障壁を含む段階に進めば、米国製薬業界やバイオ業界が繰り返し要求を出している「薬価」や「遺伝子組み換え作物」「ゲノム編集」や「農薬」などの分野がテーブルに乗って来る。そして日本政府の悲願である、米国のTPP復帰の条件が、「TPP以上の譲歩」である事を忘れてはならない。TPP11、日欧EPA、日米TAG(実質FTA)と、今日本政府が国内で進めている法改正は、それぞれバラバラの点でなく、全て1セットで見るべきなのだ。
日本国民とその国益は、どう控えめに表現しても、今じわじわと全方面から包囲されている。26日から始まる臨時国会で、この交渉そのものについてもう一度検証すべきだろう。
【TAGに対する緊急企画「許すな!農業を売り渡す屈辱交渉」のまとめページはこちら】
・日本農業をトランプに蹂躙させてはならぬ【森田実 政治評論家・山東大学名誉教授】
・日本一の和牛産地で 農家の意欲低下懸念【下小野田寛・JA鹿児島きもつき代表理事組合長】
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