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スマート農業 小規模・中山間にも導入を BASF2019年1月25日

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 BASFジャパン(石田博基社長)は1月24日、都内港区のザ・プリンスパークタワー東京でパネルディスカッション「新時代における日本農業の発展とスマート農業の期待」を開催した。世界的に日進月歩の勢いで普及が進むIoTやAI 、Industry4.0、Society5.0などを背景にしたデジタル農業(スマート農業)による技術革新の現状と展望をテーマに、持続可能な日本農業の将来像について議論を深めた。

◆デジタル農業ソリューションの提供で日本農業に貢献

 パネルディスカッションに先立ち、BASF本社アグロソリューション事業部プレジデントのマーカス・ヘルド氏が、「世界での農業情勢とスマート農業の動向、展望とBASF での取り組み」をテーマに講演。緑の革命から農業機械、精密農業の普及といった農業技術革新の変遷にふれるとともに、「今後はロボティクスとAIによるデジタル農業ソリューションの時代に突入していく」と強調した。また同社が長年にわたり取り組んできたデジタル農業技術の蓄積に加え、バイエル社から継承したデジタル農業プラットフォームブランド「Xarvio(ザルビオ)」を紹介。Xarvioには、AIによる画像認識で農作物の病害虫や雑草などを特定できる無料スマホアプリ「SCOUTING(スカウティング)」があり世界90か国以上で使われているのに加え、農薬の最適な散布時期の決定などに役立つ「FIELD MANAGER(フィールド マネージャー)」、近く明らかにする予定の「HEALTHY FIELDS(ヘルシー フィールド)」がある。

スマート農業 小規模・中山間に実装を BASFジャパンがパネルディスカッション(写真)パネルディスカッションのようす

 

◆スマート農業の実証と社会実装を加速、WAGRIの本格稼働も

 続いて農林水産省農林水産技術会議事務局の山田広明研究企画課長が、「日本における技術開発政策の現状と展望」と題して、農政と農林水産研究開発の推進、科学技術・イノベーションおよびスマート農業の推進について具体的な施策を説明した。
 その中で人口減少や高齢化にともない縮小を余儀なくされる国内市場に対し、2050年には97億人に達すると予測されている人口増を背景に世界の農産物マーケットは拡大すると予測。一方、わが国の農業現場では担い手の減少や高齢化が進む中、農地の集約化にともない1経営体当たりの経営面積が拡大しており、「国際競争力の強化による農産物輸出促進に向けて、ロボットやAI、IoT、ドローン、センシング技術など先端技術の研究開発や、スマート農業の実証と社会実装が不可欠」とした。4月から本格稼働を予定しているデータプラットフォーム(農業データ連携基盤:WAGRI)の意義と目的ついても詳述した。

 

◆多彩なステークホルダーが登壇、スマート農業を熱弁

BASF本社アグロソリューション事業部プレジデントのマーカス・ヘルド氏 パネルディスカッションにはM・ヘルド氏、山田氏に加え、パネラーとして北海道大学ビークルロボティクス研究室の野口伸教授 、(株)サラダボウルの田中 進代表取締役、おのだ農園の小野田裕二代表、(株)オプティムの中坂高士インダストリー事業部サブマネージャー、BASF本社アグロソリューション事業部アジアパシフィックシニアバイスプレジデントのグスタボ・パレロシ氏が登壇。アクセンチュア(株)の安並裕マネージングディレクターをモデレーターに、スマート農業の現状や今後の展望などについて意見を交わした。
 コメ、ムギ、ダイズを合わせて約180haをわずか数名のスタッフで経営している小野田氏は、より生産現場のニーズを反映したスマート農業の開発を要望するとともに生産者側からの情報発信の必要性も強調。「離農が加速している中山間地農業でこそスマート農業が求められている」と指摘した。国内外で地域に根差した生産拠点、グループ会社を展開している田中氏は、スマート農業の目的は全体最適化、農業ビジネスの改革にこそあるとし、「生産現場のニーズと研究開発のシーズが融合してこそスマート農業は完成するのではないか」と持論を展開した。

(写真)BASF本社アグロソリューション事業部プレジデントのマーカス・ヘルド氏

 

◆世界に先駆け農業ロボット元年

 SIP「次世代農林水産業創造技術」のプログラムディレクターでもある野口氏は、昨年ロボティクス技術を応用したトラクタが世界に先駆けて市販化され、当に農業ロボット元年の状況にあると説明した上で、「農業の全てを最適化、スマート化するには、さらなる技術の体系化が必要であり時間とコストがかかる。まずは農作業のボトルネックになっている部分からロボティクスの導入を進め、効率化で生まれた時間を複合経営化など新たな発展に向けた取組みに活かすべきではないか」とスマート農業の社会実装について提言した。
 画像解析技術を応用して病害虫の発生を特定し、さらにドローンを活用したピンポイント防除で農産物のブランディング化を進めている中坂氏は、「まだまだ全てのニーズに対応できているわけではなく緒についたばかりだ。スマート農業を活用して付加価値を上げていくという取組み、そのビジネスモデルを農家と一体になって構築していきたい」と将来を見据えた。
 またグスタボ氏はこうした活発な意見交換を踏まえ、「スマート農業で何ができて何ができないのかを明確にする必要がある。技術の取り込みは欧州、北米、カナダ、ブラジルで先行しているが、我々が目指すデジタル農業は小規模農家が多い日本やアジアでの活用も目指している。引き続き持続可能な農業の実現に貢献していく」と同社の戦略と方針を述べた。

 

◆デジタル農業をひとつの軸にさらなる飛躍へ

BASFジャパン 石田博基社長 パネルディスカッション終了後、閉会のあいさつに立った石田社長は、「昨年11月、改めて明らかにした企業戦略の中でもデジタル農業ソリューションをひとつの軸として位置づけた。すべての事業部門にデジタル専任者を置き、お客様の問題解決に向けたソリューションを提供していく。当社の日本における活動は今年で70周年を迎える。解決すべき社会問題をしっかりと理解、ステークホルダーと共有しつつ、次の70年に向け柔軟に対応していきたい。本日の討議が日本農業の発展の一助となることを祈念する」としめくくった。

(写真)BASFジャパン 石田博基社長

 

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