モーダルシフトへの転換を 青果物流通高度化で成果発表会2018年3月2日
野菜流通カット協議会は2月28日、平成29年度青果物流通システム高度化事業(全国推進事業)の成果発表会を都内で開催し、約400名が参加した。
青果物流通システム高度化事業とは、農水省の「新しい野菜産地づくり支援事業」の公募事業の一つで、生産者、流通事業者、実需者などが連携し、トラック輸送から鉄道や船舶輸送への切り替え(モーダルシフト)などを通じて流通の合理化と効率化を図る際に必要な技術実証や新たな技術を活用した低温輸送システムの構築などを支援するというもの。
同高度化事業は、(1)生産流通、(2)流通合理化、(3)貯蔵技術の3つの検討委員会から構成されており、各検討委員会委員長がこれまでの到達点と今後も検討すべき課題を報告した。
流通合理化検討委員会委員長の小林茂典・農水省政策研究所上席主任研究官は「青果物の輸送コスト低減に向けた取り組み」を報告した。
(写真)小林茂典・農水省政策研究所上席主任研究官
小林氏はまず現状認識として、大消費地である首都圏への野菜出荷が北海道、関東、九州で全体の8割を占め、その大半がトラック輸送であり、その輸送時間も北海道や九州からだと片道20時間もかかっていることに危機感を示し、特に全農県本部や経済連などから示された課題を受けて、今後は共同物流、省力型荷役、付加価値向上型物流などの構築を関係者との連携で進めていくことが重要だと述べた。
(写真)会場のようす
具体的には、(1)輸送ロットの大型化や広域集出荷施設、中継物流拠点の整備による「ゆとりある物流」の実現、(2)出荷容器などの標準化やパレット規格の統一などを通じた手荷役から機械荷役への転換、(3)待機時間の縮小による卸売市場の受け入れ体制の改善、モーダルシフトへの一層の推進などをあげた。
また、貯蔵技術検討委員会の椎名武夫・千葉大学大学院園芸学研究科教授は、ガソリン高騰による輸送費の増加や過酷な労働条件からくる深刻なドライバー不足により、遠隔産地からのトラック輸送が困難になっているとことから、青果物を長期に貯蔵できる最先端の技術開発の必要性を強調した。
そこで29年度では、トマトとレタス、キャベツを使い、通常冷蔵と低温高湿度環境で長期貯蔵と棚持ち試験を行い、収穫直後の青果物と貯蔵した青果物の特性の違いを評価する実験を行った。その結果、トマトでは長期貯蔵を行う場合、しっかりと色をつけたトマトを適正温度で高湿度な環境で貯蔵し、低温で流通管理することが望ましいとした。
レタスの場合、一度腐敗が始まると急速に広がる特性を持っていることから、高湿度でありながら通気性を確保する技術が必要だとし、棚持ちでは温度が高いと極端に腐敗が進行するので、摂氏5度の低温貯蔵が必須になると述べた。キャベツでは高湿度保管が有効で、棚持ちでは摂氏5度の低温貯蔵が望ましいとした。
生産流通検討委員会委員長の稲山光男・三菱ケミカルアグリドリーム技術顧問のテーマは「国内産地の生産流通体制構築に向けた取り組み」について。稲山委員長は、産地側と実需者側との情報交換を目的に昨年9月に開催した「アグリ・ビジネス・ジャパン」(東京ビッグサイト)と北海道と茨城県で実施したハクサイ現地検討会セミナーなどの成果を報告した。
現地検討会では、ハクサイの機械収穫の実演を行い、北海道では、経営規模が大きいことによる労働力確保の難しさから、大規模栽培基幹作物の機械化一貫体系の確立は必須であるとした。また茨城県は全国一のハクサイ産地であり、大規模栽培による経営がされてきたが、農業就業者の減少と高齢化を背景に、労働力不足が顕在化。その課題解決のためにも、北海道と同様、機械化一貫体系の確立とコンテナ利用出荷が重要になると述べた。
(写真)会場のようす
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