「幼若ホルモン」フリーのカイコ作出2015年7月22日
安全な農薬使用に有効
農業生物資源研究所(生物研)は、昆虫の脱皮に関わる幼若ホルモンを操作することで、最も大きな食害をもたらす終齢幼虫に変態することができないことをカイコで突き止めた。カイコと共通点の多い、チョウ目害虫の幼虫による食害を防ぐ、新たな農薬の開発が可能になる。
幼若ホルモンは、昆虫の脱皮・変態、休眠、行動など、昆虫のさまざまな形質の発現に関係する。カイコの幼虫期には、変態を抑制し、幼虫段階を維持する役割を果たす。つまり、体内に幼若ホルモンがあると、幼虫は脱皮し、幼若ホルモンがなくなるとサナギになる。幼若ホルモンがないと幼虫は無理なサナギへの変化で死亡する。
今回作出したのは、幼若ホルモンの合成酵素タンパク質の一つ(遺伝子を作れないカイコ)と、受容体タンパク質の働きを止めた(遺伝子が働かない)カイコで、いずれも終齢(5齢幼虫)になる前に死んだ。
この、遺伝子に関わる2つのタンパク質は、カイコが属するチョウ目の大害虫であるハスモンヨトウやコナガなでと同じ働きをするタンパク質と構造がよく似ており、これらのタンパク質の働きを阻害する薬剤の開発に道を開いた。チョウ目だけに作用することから、環境や人にやさしいの農薬として期待される。
(写真)幼若ホルモンを作れないカイコ(左)と通常のカイコ(右)のマユとサナギ
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