時代の変化に対応して180年 タキイ種苗が園芸フェア開催2016年1月18日
昨年、創業180年を迎えたタキイ種苗(株)が、1月14、15日に京都市勧業館みやこめっせで、「第36回タキイ園芸フェア2016」を開催。全国から種苗販売業者など約1800人が来場した。
◆独自育種技術で2000種開発
平安神宮に隣接する会場に入ると、天保6年(1835年)に初代の瀧井治三郎氏が優良な在来種を採種して希望に応じて分譲する種苗業を創始してから今日まで、180年にわたるタキイ種苗の歴史が、年表と保存されているさまざまな貴重な資料とともに展示されていた。
この年表をみると、明治38年(1905年)には初のカタログを発行し、郵便を使った種苗の通信販売を開始。昭和10年(1935年)には京都府乙訓郡神足村に長岡実験農場を設置。この実験農場から、初めてのF1トマトである長岡交配「福寿1号」と「福寿2号」が戦後間もない昭和23年(1948年)に発表されている。さらに翌年に初のF1キュウリが、昭和25年(1950年)には自家不和合性利用によるF1品種である長岡交配「一号甘藍」(かんらん:キャベツのこと)と「一号白菜」が誕生し、世界の野菜市場は一気に「一代交配種時代」に突入することになる。
その後もカブ、タマネギ、ブロッコリー、カボチャ、ナス、ピーマン、カリフラワー、ニンジンなどの野菜に加えて、葉牡丹などで日本初あるいは世界初のF1品種を開発していく。
なかでもタキイ種苗の名を不動のものとした一つが昭和49年(1974年)の「耐病性総太り」ダイコンだろう。これによって青首ダイコンブームが到来することになる。
そしてもう一つが、昭和60年(1985年)の発表以来30年にわたり全国を席巻している「桃太郎」トマトだ。桃太郎トマトは平成26年(2014年)に開発された機能性を高めた「桃太郎ピース」まで29種があるという。
創業から180年、世界中から収集した育種素材(種子)と独自の育種技術で開発してきた野菜品種は1500種、草花品種は500種にも上るという。
こうした歴史をみると、江戸末期から明治・大正・昭和そして平成の今日まで、日本の野菜類を中心とする園芸農業を同社が常に牽引してきていることが分かる。
それは、常にその時代時代の要請に応えて新たな品種や栽培技術を開発し提供し続けてきたということの証でもある。そのことは、今回開催れた「園芸フェア2016」にも表れている。
◆次世代施設園芸「高度環境制御ハウス」
会場には、同社の種苗だけではなく、生産現場で必要とされる培土や肥料、鉄骨やパイプ、スクリーンなどハウス用資材、プランターなど多様な生産資材。長靴用のインナーソール、汗を吸収するゴム手袋用インナーなど、生産者の作業性や作業を快適にする小物類まで、タキイ種苗が推奨するものを提供する約130社の商品が展示されていた。
それは、単なる種苗業者としてではなく、「一粒のタネから、日本の食と農業を元気にする」という同社の基本的な理念を実現するために、生産現場の目線にたって、生産者が必要とするニーズに一つひとつていねいに応えていこうとする同社の姿勢の表れでもある。
なかでも今回、同社が力を入れていたのが「高度環境制御ハウス」だ。これは、▽より多収で高品質(良食味)品種の育成、▽日本の気候条件に最適な栽培技術の開発を目指して、同社の茨城研究農場で実用化されているもので、ハウス外張り・内張り用資材、細霧冷房・循環扇・暖房設備・CO2発生装置・培養液システムと培養液肥料・薬剤散布機・高所作業車、そしてそれらを制御するシステムなどからなっている。
「ハウス栽培だからこその味(高品質)・収量(多収)といった高付加価値を生み出し、日本の農業発展に貢献」できる次世代を担う施設園芸として、同社では期待している。
◆関心高い「ファイトリッチ」シリーズ
もちろん、本業である種苗でも、話題の新商品が展示され多くの人たちから注目されていた。 その一つが、コンパクトな株姿だが満開時は株を覆いつくすほどの小輪花が咲き誇り、意外と簡単で誰でも満開にできると好評のタキイ育成ベチュニア「ギュギュ」シリーズに、「ラズベリー」と「ダブルシフォンピンク」の2色が加わり全14種となって展示され、会場に華やかな雰囲気をもたらしていた。
また草花では、オランダのゴッホ美術館を『サンリッチひまわりの巨大迷路』で演出し、ゴッホ美術館とパートナーシップ協定を締結したが、ゴッホの代表作ひまわりを使用した紙袋が来場者に提供され大きな話題になっていた。
野菜類では、創業175年の2010年から開始された機能性成分を豊富に含む健康野菜シリーズ「ファイトリッチ」に、ニンジンの「オランジェ」とタマネギ「ケルたま」が加わったコーナーへ多くの人の関心が集まっていた。また、別のコーナーには「元祖 桃太郎はおいしい」と表示され、初代桃太郎の苗が展示され、いまだに現役で栽培されている姿が印象的だった。
(写真)機能性成分を豊富に含んだ「ファイトリッチ」は15種になった、新たに2色が加わりますます華やかさをました「ギュギュ」シリーズ、会場入り口から展示場までの壁面には「180年の歩み」と資料が展示されていた、次世代施設園芸と期待を寄せる「高度環境制御システム」を説明するブース
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