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特集 JAの現場から考えるJA独自のビジョンづくりに向けた戦略(2) |
座談会 トップから職員へ、職員から組合員へ意識改革のエネルギーから結集力を 出席者 |
JAが地域を守るというメッセージを出そう!! ◆厳しい環境のなかから生まれる新たなJAの事業構想
白石 今回の特集ではわれわれはJAの現場に足を運び役職員の方々から話を伺ってきました。まずその感想から話を進めたいと思います。 北出 共通していると思ったのは、組合長をはじめとするリーダーの方々が非常に危機感をもって地域の農業をなんとかしなくてはいけない、そのためには農協は何をしなければならないか、と一生懸命考えているということでした。 村田 私は愛媛県のJAおちいまばりとJAにしうわに行きましたが、両方ともかんきつが販売額の半分以上です。しかし、17年産は品質がいいにもかかわらず価格は暴落して、深刻な状況でしたね。 白石 価格の低下は、私が訪ねた群馬のJAつまごいでもキャベツの価格低下が問題となっていて、やはり今までのやり方でいいのかという危機感から、産地としての再編をどうするかが課題になっていました。 ◆担い手対策への対応で改めて浮かびあがるJAの役割
村田 ここで少し質問したいんですが、担い手対策では第24回JA全国大会の組織協議案で担い手育成、支援を軸とする地域農業振興が大きな論点となっていますね。北出先生に伺いたいのはこれが東北の米地帯ではどう受け止められているのかということなんです。 北出 たとえば、JAみやぎ登米では302の集落実行組合があるそうですが、それを再編し40〜50ヘクタール規模の集落営農組織をつくるように取り組んできたけれども、今年中にそれが可能なのは15〜18程度だろうということです。もちろん認定農業者はそれとして育成しながらカバーできないところは集落営農ということです。ただ、集落営農自体も経理一元化とか、5年後に法人化という条件にはいろいろな問題があってすぐにはできない。やはり地域の実態に応じて対応せざるを得ないようです。JAそうまでも、職員ごとに集落担当を決めて推進していますが、どの集落でもすぐに経理一元化は無理だ、という話になるといいます。 ◆価格下落で求められている新たなマーケティング
村田 担い手育成も重要ですが、どうも共通しているのは、これまでも農産物の価格変動はあったわけですが、今の農産物価格デフレは限定的なデフレではない、もう長期低落を免れがたいというなかで、本格的に農協が組合員から販売責任を問われている、そういう危機感じゃないでしょうかね。 北出 販売戦略に関連していえばJA鈴鹿の例は特徴的で系統のなかだけで事業を考えていてはいけないということでした。鈴鹿茶は鈴鹿サーキットと市役所と農協が一緒になって、今までにないブランドをつくった。従来型の系統内部で考えるというのは食管時代の発想で、米はもちろん畜産も青果もその発想から抜け出なければならない、と。しかもJAが商工会議所のメンバーになっているとのことですから、他の分野からいろいろな情報も入ってくる。そうすると農業だけじゃなくて地域すべての多様な課題にどう応えるかという話にもなるわけで、そういうなかで新しい発想が出てくるということでしたね。 白石 村田先生が指摘された米麦地帯の担い手問題ですが、八女市では品目横断対策に対しては、自治体と連携して市で一本化した組織を作りたいということです。一方、これに対して筑後市では数集落、あるいはオペレーターグループを核にするなどかなりパターンに多様性がある。 北出 今度の政策は無視するわけにはいかないからみんな一生懸命やっているわけです。しかし、先進農協に共通していると思うのは地域の農業を政策に合わせていくのではなく、自分たちの地域については自分たちでこうしていくんだということがあって、それで政策をそこにはめこんでいこうということだと思います。集落営農でも自分たちの実態に合わせて政策のなかで利用できるところは利用していくということではないか。 村田 まさに今回は、確実に政策のほうが助成対象を限定してくるという新しい事態ですから、農協にとっては腹を括(くく)らざるを得なくなった面があると思いますね。しかし、たとえば九州でも認定農業者は点的な存在です。そういう意味では農地を面的に確保するのは農協の課題であることははっきりしているわけで、先ほど逆説的といったのはこの意味です。 ◆地域をまるごと売り出す視点も 白石 価格動向、それから政策の変化を受けて、担い手対策にいよいよ本格的に取り組まざるを得ない状況になっているのだと思います。従来型の政府にいわれるからつくるというのではなく、本当の意味での担い手をどうつくるかですね。 北出 米の場合は地域でだいたい全員がつくっていますが、園芸、畜産の場合は生産者が限られていますね。しかし、今回現場で感じたのは、一部の生産者しか関わっていない品目であっても、地域全体のイメージアップにそれを活用していくということです。 村田 地域まるごと、ということですね。とくに果樹では新しいマーケティングの段階にきたんじゃないでしょうか。本格的にJAが中心になった直売市がそれでしょう。それから通信販売です。こういう新しい段階に来た。これはいずれも産地まるごとイメージで売り出すということです。 白石 JAおちいまばりの通信販売は等級外になったみかんに付加価値をつけて売ろうということですよね。それは光センサーが導入されればされるほど除外される品は多くなるからですね。値がつかないものに値を付けるというだと思います。 産地として生き残るために他業態との連携も ◆農業再建と地域づくりに重層的な組織活用して 村田 JAにしうわでは、みかん農家は光センサーを設置した共選場にそれぞれ所属しているわけですが、その共選場の専属利用者として、いわば出荷組合をつくっています。 北出 そうですね。そこで印象に残っているのは、JAみやぎ登米の阿部組合長は事業も運動だ言っていることです。運動という意識がないと農協の事業は成功しないと。それから、JA鈴鹿の山木専務は、農協のマイナスは組合員のプラス、農協のプラスは組合員のマイナスだ、と。この意識がないとやっていけないと話していました。まさに農協の収支だけで農協改革、経済事業改革を進めるのは、地域の要求に応えられなくなるということです。 村田 そのことを理解するうえでは、生活文化活動、それから高齢者支援の取組みですね、これはほとんどの農協ががんばっています。これが農協の蓄積となって広く地域社会への貢献を掲げることになっていると思います。いろいろ議論はありますが、やはり地域協同組合的な性格を持っているんですね。「星の数ほど女性組織を」といったのは、福岡県うきは市のJAにじですが、生活文化活動が広がっている農協ではきっと地域との関係もいいと思います。 白石 逆にいえば単なる運動ではなくて事業として実務的に変えていくことが大事だと思います。そのためには職員の意識改革から、ということですね。 北出 トップの意識が変わり、そして職員の意識が変わる。その職員が現場に飛び出し、組合員と共に地域づくりをしていくということでしょう。 村田 一方で広域合併して経営を確立していくためには支所、支店の統廃合問題を抱えていますね。そういう合理化をしながら課題に応えていくという深刻な状況ですが、トップの危機感が職員に共有されているかどうかということだと思います。 白石 コスト低下のためには支所、支店の統廃合もしなければなりませんが、問題はその後でそれ以上のサービスをどう提供するかです。廃止した店舗をどう使うかですね。デイサービスセンターにするとか、ふれあいの場にするとか、コミュニケーションをどうとるかということだと思います。 村田 農協がすべて担うということではなくて、身近なサービスを担うのはNPOであったり別の協同組合であったりしていい。従来は生産部会で組織したけれども、女性部に元気な組織がいろいろあるように、多様な協同組合組織を重層的に組織する時代ですね。今までの部会組織というのはまさに農協のための組織でもあったわけですが、今後は独自の組織が必要になっていると思いますね。 北出 やはり小泉内閣が言ってきた自主自立とは全然違った意味で、地域を改革をしていくためには自分たちでこうしましょう、ということ。これが協同組合ではないかと思いますし、ここに依拠するしかないんじゃないか。 ◆産地を維持するためトップは大きな構想を打ち出せ 白石 そういう意味ではトップから明確に組合員にメッセージが伝わるような戦略、ビジョンが必要でしょう。厳しい、厳しいが全面に出たのではしょうがない。これをやろうじゃないか、というビジョンを語り独自性を出していくべきでしょう。 その点では、今回の担い手政策は4ヘクタールとか20ヘクタールという要件ですがそこにだけ問題があるのではなく、本当に大事なのは産地であって、産地を維持するための政策があるのかということです。産地にはいろいろな生産者がいて、やめようかどうしようかと悩んでいる人もいる。それを励ましていく政策があって産地が維持できるわけですが農協トップの構想にはその目線を大切にしてほしいです。 村田 そういう大きな構想がやはり大事で、そのためにも、苦しければ苦しいほどトップが協同組合の理念を語ることが大事になってくると思います。 白石 私は組織力と事業力をきちんと結びつけるのが戦略なんだと思います。ですから、組織力を発揮するのには組合員組織をきちんとつくり、事業としてのイノベーションをしていくということだと思います。その場合に、今日話題になったように消費者、川下まで視野に入れていくということではないでしょうか。 北出 今回の取材で強調されたのは、これまでのように系統に出荷すればあとは知らないとうような事業方式ではもうだめだということです。まず自分たちで立ち上がろうということがないと本来の意味での系統利用も成功しない、ということです。系統利用は重要だということは否定しないが、単に任せるということから、脱する、脱依存ですね。 白石 今後とも連合会の役割きわめて重要ですが、その中身ですよね。エンドユーザーに向けてどうマーケティングしていくかということの基本的役割は農協が担うべきです。そのリスク管理や産地間調整などが連合会の役割になると思います。 |
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(2006.9.14) |
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