女性総代は人財の宝庫2018年4月4日
◆8.7%・2.4万人に
JA運営への女性参画の現況は20年近い取り組みで、正組合員比率、総代比率、役員数のそれぞれで、一貫して右肩上がりに推移している。女性の役員数の全国数値も1334人となり、1JA2.05人と目標の2人以上を超えた。時間のかかる女性の正組合員数も漸増を続け、94万人と2割を超えた。そのなかで、女性総代の比率は平成11年の1.9%が平成29年には8.7%となり、実数では総代27万9000人のうち、女性が2万4000人となった。
今回はJAの女性総代について考えてみたい。正組合員であり女性農業者として生産にかかわり、さらには認定農業者なかには農業委員をしている方もいるだろう。女性総代は地域選出理事や総代経験者の説得などを経て、幅広く地域の隅々から選出される。農業従事や地域での活動経験があって、人望はもちろんのこと家庭内での存在、とくに夫の理解を前提とするので候補者は絞られる。介護等の事情をかかえればなおさらだ。
JA女性部のあるリーダーは、自分の地域から女性総代を出すことができなかったと自らの非力を繰り返し悔やんでいた。94万人の女性正組合員のなかの2万4000人、2.6%の人財なのだ。
先日、講演したJAでは、総代600人のうち、70人が女性。定数が限られた中で、男性総代を減らして女性総代を増やしてきたのだという。それだけに4月のJA合併後の女性総代たちによる情報ネットワークの機能発揮に期待が高まる。
そのような人財だから、総代以外にもいろんな役職や世話役として地域(自治会役員・PTA役員・民生委員、神社氏子・寺院総代、お祭りの世話人・ボランティア活動、食育リーダー・高齢者生活支援など)でのいくつかの役割を掛け持ちしてきた。世の中の実際を背負い多忙を極めている。夫が務めている場合は、農業も家事も実質ひとりで切り盛りしてきた。義父母など高齢者の世話をしている方の中には、だからこそ、やり繰りして自分が外に出ることも必要なのだと口にしている。
日ごろは、JA直売所への出荷も楽しみで、6次化や加工品販売など新たな価値を創造することに無量の喜びがあるのだという。事実、日本農業新聞の直売所川柳(平成29年3月20日)では「介護する私の元気直売所」、「リハビリに行ってくるよと直売所」、「定年がないのもつらい直売所」など秀作があふれる。
◆JA活動の原動力
JAから見てもJA活動の動力源だ。女性総代研修会は、総代会のように緊張感が満ちていて、組合長はじめ常勤役員、女性理事もともに学ぶ姿勢が前面に出ていた。一人3役、5役のスーパーな活動ぶりの女性総代は、文字どおり、JAの自己改革である農業者の所得増大、農業生産の拡大さらには地域の活性化のすべてに直接的にコミットする当事者である。いろんな役割が追いかけてくるのだと口にした総代もいた。そして女性部リーダー、JAの女性理事、女性農業委員などに育っていくのだと理解できた。1JA平均で43人の女性総代、2人の女性理事を輩出しているが、とくに女性総代は大きな可能性をもつ人財輩出の宝庫であることを、目の当たりにした。
講演前の昼の時間に情報交換をしたときだ。多忙のなかのひと時、講演会では是非ともいい話を聴きたいのだという。「つまんない話なら、寝ちゃうからね」と明るく励まされた。男社会の建前をぶら下げて、名刺の肩書に組織の仮面をつけたような話を男性講師から聴くのはつらい、との率直な気持が吐露されて少し緊張が高まる。
農業と地域のくらしに指導的に関わる女性総代たちは、行き詰ったかに見える今の日本の農村社会で、いきいきと自分の存在と役割に従って活躍している。女性総代というシステムをさらに突っ込んで考えてみる必要を感じた。3年交替が目安だが、2期、3期目という総代の話も聞いた。女性理事への登用に目がいくが、その前に女性総代の登用と活躍の場づくりなのだ。
(伊藤澄一氏の過去記事〈一部〉)
・超高齢社会を「先生」として生きる(18.03.06)
・JAの地域貢献 小中学校教育と共に(17.12.21)
・組合間連携 賀川豊彦を「要」に(17.11.16)
・警鐘乱打の2025年問題(17.06.18)
・3・10「農山漁村女性の日」 JA改革を牽引する女性参画(17.03.08)
・【リレー談話室・JAの現場から】協同組合トップの"戦争"(16.07.13)
重要な記事
最新の記事
-
理事長に小川良介前農林水産審議官 JA共済総研2025年3月11日
-
【全中・JA経営ビジョンセミナー】伊那食品工業で「年輪経営」を視察 年間まとめ、参加者の報告も交流(1)2025年3月11日
-
【全中・JA経営ビジョンセミナー】伊那食品工業で「年輪経営」を視察 年間まとめ、参加者の報告も交流(2)2025年3月11日
-
【地域を診る】東日本大震災から14年 被災地で学んだこと 協同の意義 現場で痛感 京都橘大学教授 岡田知弘氏2025年3月11日
-
福島など被災地「農林水産業の先進地域へと支援」 江藤農相2025年3月11日
-
第二の備蓄米「飼料用米」から主食用米への転用は可能か?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年3月11日
-
オリジナルハンカチをプレゼント 「いわて純情セレクト」対象商品購入で JA全農いわて2025年3月11日
-
「JA全農杯全国小学生選抜サッカー大会」北信越代表チームは「長岡JYFC U‐12」2025年3月11日
-
岩手県大船渡市の山林火災被害の自賠責共済で特別措置 JA共済連2025年3月11日
-
「農中森力(もりぢから)基金」第11回の助成6案件を決定 農林中金2025年3月11日
-
農文協 創立85周年の記念出版『みんなの有機農業技術大事典』発売2025年3月11日
-
健康経営優良法人2025 大規模法人部門 ホワイト500に認定 カゴメ2025年3月11日
-
ローソン「栃木美味しいもの巡り」 ご当地の味が楽しめる8品を発売2025年3月11日
-
ハンガリー産およびスロバキア産偶蹄類由来製品等 輸入を一時停止 農水省2025年3月11日
-
コープデリ「TSUTAYA DISCAS」宅配DVDレンタルサービスを組合員向けに提供開始2025年3月11日
-
3月11日限定 東日本大震災で被災した東北3県と石川県の商品が300円割引 ポケットマルシェ2025年3月11日
-
人事異動 北興化学工業(4月1日付)2025年3月11日
-
大阪・関西万博 「食と農」をテーマに2台の未来の「汎用プラットフォームロボット」を展示 クボタ2025年3月11日
-
米文化を学ぶ親子体験イベント 東京・茅場町で開催 プレナス2025年3月11日
-
投資家向け農業事業「ノーサ」新プラン「なめこ栽培オーナー」募集開始 クールコネクト2025年3月11日