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JAながのの合併(2)-営農指導・販売体制2018年2月23日

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田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授

◆広域営農指導体制に向けて

 合併した農協の販売構成は、果実46.9%、きのこ24.5%、野菜7.2%、直売6.6%、畜産6.4%、米5.7%等とバラエティに富んでいる。合併により各品目の技術を高位平準化し、総合産地化、「複合経営」JAをめざし、「さらなる有利販売」を追求するのが合併の「最重要課題」である。
 技術員は果樹43名、野菜23名、きのこ12名、稲作10名、花9名、畜産4名の計101名で、先の販売額構成と比較すると野菜のウエイトが高いが、これは旧JAがそれぞれ野菜の新規分野開拓に注力してきたからだろう。ほかに生活指導員8名がいる。技術員は地区の営農センター、その中のアグリサポートセンターに配置される。
 この技術員のなかから広域技術員9名をブロックとの兼任で置いたのが新機軸である。果樹ときのこが各3名、野菜・花・米が各1名である。ここではきのこに力点が置かれる。彼らが合併の表看板である広域での専門指導体制の先頭にたつことになるが、月1回の研修会を始めとして、施肥基準や防除基準などの統一や栽培技術の現地指導等を行いながら、技術指導の高度化を目指していく。栽培技術の統一は土壌や気象、過去からの指導の相違もあるなかで簡単ではなかろう。
 TACの出向く体制も検討したが、総合的な技術指導と資材販売をあわせて議論中である。技術力の高い農業者の指導には年配の者を配置する必要がある。今のところ、各自に所得向上に向けての「営農指導マイプラン」をたててもらっている。また営農技術員を置いて店舗でも相談活動に当たらせている。これには県の認証制度がある。
 基本的に旧JAの営農指導の陣容を継承しつつ、広域の主要品目別指導体制の早期構築を課題としているといえる。

 

◆明確な品目別指導方針

 果樹については、りんごは新わい化栽培とオリジナル品種の生産拡大、ぶどうは種なし品種を核にした産地・ブランド形成、もも・ネクタリンは長期販売体制、なしは高糖度ブランド産地化、新興果樹(プラム、プルーン、杏、ブルーベリー・キウイ・さくらんぼ等)の振興、複数果樹の組み合わせとアスパラなど他作物を導入した「経営の複合化」を推進する。
 きのこは、多用途(さまざまな料理用途)・簡便(カットきのこ)・機能性(健康食材)の組み合わせによる需要創出、需要減退期に向けた果樹・野菜・花卉(盆花)等との複合化を図る。野菜は、アスパラの半促成栽培、伏せ込み栽培、タマネギの水田二毛作、定年帰農者や新規就農者の育成(アスパラ、ミニトマト、インゲン、ピーマン、ニラ、ほうれんそう等)、花卉は遊休地の有効利用(JA出資法人・ながの農花の設立)、定年帰農者や女性への花卉栽培の働きかけ等である。
 このように、複合経営化と定年帰農者や女性等への目配りが特徴である。

 

◆多数のブロック別部会・組合員組織

 生産部会はブロック別に組織される。部会の状況をみたのが表2である。全部で75部会、1.8万部会員である。品目的には果樹が46%、水稲32%、園芸13%である。きのこは部員165名で少数精鋭化である。員数的には、ながのブロックとみゆきブロックでは水稲が最多だが、他は果樹が最多である。このような多分野・多数の農業者に広域専門指導体制を貫くことがいかに壮大な課題かが分かる。
 組合員組織もブロック別に農家組合1,674、青年部537名、女性部3,719名、年金友の会37,142名を組織している。女性部は新JAとして統一を果たしている。他も将来的には一本化したいが、現状は連絡協議会にとどまっている。

 

◆販売面の統合

 繰り返すように「有利販売」が最高の合併の旗印である。
 まず分荷権は本所の営農部販売課がもつ。課内に果実・きのこ・農畜産物の3品別グルーブ制を導入して対応する。きのこをはじめ特殊な流通があり、地区の固有の権限がなくなることへの不安もあり、その意見を聞きながら本所で全体調整をしている。果実は7~8割、きのこは8割、野菜は2~3割の分荷権を本所がもつ。野菜はこれからだが、全体調整は本所が行う。「思ったよりスムーズにいったが、100%にはならない」という。分荷権の一元化により市場にアピールでき、市場もまず本所に顔を出してから共選場にいくようになった。
 卸売市場向け段ボールはマーク、デザイン(等階級表示を含む)、規格・材質・寸法を統一する。妻面表示は生産部会ごとに決定でき、トレース可能にする選荷場名やロゴ・マークの表記が可能である。契約取引の場合は、段ボールは実需者の要望に沿って対応するが、新JA名を必須記載としている。
 具体的な販売戦略は、a.新JAとしての重点市場の設定、b.量販店の寡占化に対応した新JA全域連携(標高差を活かした単品長期リレー出荷と物量結集)、c.直販取引30%(JA向け、直売所、学校給食、業者、全農直販等で、現状で25%)、観光や食育・花育で管内需要の創出、d.契約取引は営農センター(または生産者グループ)で完納、e.買取販売の拡大(現状は米のみで、リンゴも一部)等である。旧JAながのとJA北信州みゆきはとくに直売所に力をいれており、それぞれ1,000名、300名の出荷者をもつ。

 

◆配当金をめぐって

 新JAは出資配当2%、事業利用分量配当を定期貯金、貸出金利息、長期共済・年金共済の事業量に応じて行っている。剰余金合計に対しては出資配当7.9%、事業利用分量配当1.8%である。
 出資配当は旧JAながのが元々2%だったことに合わせた。合併で引き下げるわけにもいかず、組合員間で差を付けるわけにはいかないということで「当面、可能な限りは」ということである。
 旧JAながのの2016年度の総会資料にあたると、出資配当は1%、「組合員のJA結集力の向上を目的に」した特別配当2%で計3%にしていた。また事業量分量配当は新JAと同じ対象で剰余金の5.7%相当を行っていた(出資配当3.6%、特別配当7.1%の計10.7%)。2016年は合併にあたっての対応で通常年は2%だったということなのだろう。また旧北信州みゆきも合併前に1.5%に引き上げている。
 以上を踏まえて、新JAの出資配当2%は、通常配当1%+(合併に伴う)特別配当1%という理解だとしている。
 事業利用分量配当は旧北信州みゆき、ちくま、須高がかつては行っていたが、合併前にやめていた。従って旧JAながのを受け継いだことになる。

 

◆今後の課題

 まず代理店手数料の提示は貯金額に対して0.5%強で「検討に値しない」としている。しかしトップとしては現在の貯金額6千億円でいいのか、1兆円は欲しい、とはいえ1兆円で組合を維持できるかは不明としている。1県1JA化については、販売額で1千億円、貯金で1兆3~4千億円となることから、事業量的には超大型農協になるものの、広域的なガバナンスの確立が可能なのかどうか、また経営体としての格差が大きすぎ調整が可能かなど、県域的にも検討が進んでいない状況である
 ガバナンスの確立や目の届く経営体としての観点、あるいは職能組合化をめずしJAが出てくる可能性等を考えれば、県内3つもありうるとしている。
 JAながのとしては、政府の信用共済分離論による職能組合化にも舵を切れるよう、支所の統廃合や業務集約による金融収益の維持、経済事業の子会社化、営農と経済の統合、多拠点展開の資材や農機の統合、共選所の統合などを進め、農業部門での収支均衡を追求するとしている。
 2016年度の対前年度実績は販売は99%(JAながのの2015年度は102%)、うち直売は103%(104%)、購買は94%(91%、肥料4.1%、農薬1.9%の引下げを実現)、貯金は104%(105%)だが、貸付金は93%(97%)と減少傾向、長期共済新契約高は96%(102%)である(年度途中の合併の点を補正)。
 生活事業は、旧JA時代はJA須高を除き黒字だったが、それは維持できている。30カ所のGS、8カ所のLPガスセンターの配置、JA中野市やJAグリーン長野と提携した食材のまごころ宅配便、中山間地域向け移動販売車(ながのブロック2台、みゆきブロック1台)、葬祭事業の強化等に取り組んでいる。
 営農指導部門の経常収支赤字を正組合員一人当たりで割った額(収益を農業部門にどれだけ回しているか)は12,700円で、旧北信州みゆきの28,000円やJAながの14,000円より下がっている(全国平均2.5万円)当然のことながら合併で一気に趨勢転換とはいかず、合併メリットを発揮しつつ農業部門と金融部門を両立併進させる課題に直面している。また農協改革期に合併した果樹産地JAとして、施設を多数かかえて拠点集約を進めつつ減損会計にいかに対処するか、農業部門での公認会計士監査の費用をどう抑えるかも課題である。

 

【JAながのの概要】

・2016年9月、5JAの合併・組合員数65,628人、うち准組合員47.7%
・理事47名、監事8名
・出資金130.8億円、うち准組合員29.0%
・販売高310.8億円
・貯金額6,175.8億円、貯貸率21.2%

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