卸売市場法は堅持 市場開設「認定制」に変更2017年12月8日
卸売市場法を含めた食品流通構造改革について政府は、卸売市場法は堅持するものの、事業者の創意工夫がいかせるよう自由度を高め、基本的な方針、要件に適合する市場を農水大臣や都道府県知事が認定する制度を導入する。次期通常国会に改正法案を提出するが、食品流通の核として公的機能が担保されるか、注視が必要だ。政府は12月8日、農林水産業・地域の活力創造プランにこの方針を盛り込み、同プランを改訂した。
◆食品流通の核
「基本的な考え方」で「これまで食品流通のなかで卸売市場が果たしてきた集荷・分荷、価格形成、代金決済等の機能は重要」と明記し、これについては「卸売業者、仲卸業者等の役割・機能が発揮され、今後も食品流通の核として堅持するべき」と位置づけた。
ただ、一方で農業者の所得向上と、消費者ニーズに的確に応えていくには、新たな需要の開拓や付加価値向上につながる改革も必要だと強調している。
卸売市場法もこうした考え方のもとで改正される方向。生鮮食料品等の公正な取引の場として国が「方針」を示し、一定の「共通ルール」に従って公正で安定的に業務運営を行える「高い公共性を有する卸売市場」を国、都道府県が「認定」する制度を導入する。
一定水準以上の規模の卸売市場は「中央卸売市場」として国が認定、それ以外は「地方卸売市場」として都道府県が認定する。
「共通ルール」とは
(1)売買取引方法の公表
(2)差別的取扱いの禁止
(3)受託拒否の禁止
(4)代金決済ルールの策定・公表
(5)取引条件の公表
(6)取引結果の公表
の6つと、その他の取引ルールの公表としている。
その他の取引ルールとは、第三者販売の原則禁止、直荷引きの原則禁止、商物一致の原則などだが、市場活性化の観点から、一律の規制は行わず、卸市場ごとに卸業者や仲卸業者から意見を聞いて策定することとしている。
◆何のため改革?
「受託拒否の禁止」については、生産者にとって確実な出荷先が確保できるよう、中央卸売市場では生産者から販売委託の申込みがあった場合に、「正当な理由がある場合を除き」、卸売業者による受託拒否は禁止とされる。
この「正当な理由」について農林水産省は現行と同様の内容を通知するとしている。衛生上有害である場合や、過去の実績からみてすべて残品となった物品と品質(変色、しおれなど)が同程度だと検査員が認めた場合、法令違反・行政指示があった場合などだ。
市場外取引や他の市場の残品であることが明白で、これが繰り返され量も相当程度ある場合も受託拒否できるとなっている。
今回は市場開設を「認定制」に転換するが、その理由として農水省は事業者の創意工夫が生かせるよう、自由度を高めることが必要だとしている。ただ、一方で過度に自由度を高めると混乱を生じるとして「公的関与のもとで一定のルールを設けることが必要」との方針。一定のルールは先に触れた(1)から(6)になる。
認定制のもとでは認定外の「卸売場(おろしうりば)施設」が存在することになるが、中央卸売市場、地方卸市場という名称は使えず、国による施設整備支援の対象とはしない。
一方、今回の改革では「卸売市場を含めた食品流通の合理化の方向性」も示されている。
パレット輸送による積み降ろしの円滑化、配送の共同化など物流の効率化の推進と、情報通信技術の積極的な導入、コールドチェーンの整備やHACCPによる品質・衛生管理の一層の強化、海外市場への輸出への対応なども盛り込まれている。
農産物には鮮度が求められると同時に豊凶変動があることから、JAでは実需者への直接販売は増やすにしても「卸売市場は大きな取引先のひとつ」となっている。
規制改革推進会議の提言では、受託拒否の禁止は「生産者が安易に中央卸売市場に出荷することを助長しかねない」と指摘したが「産地は市況を見て市場を選んでいる。現実とかけ離れた議論だ」(JAグループ関係者)と批判、与党との議論で受託拒否の禁止は継続される。ただ、市場開設が行政の「整備計画」に基づく「認可性」が「認定制」に変更される。認定されなくても市場開設が可能になると見方もある。一体、この改革は何をめざし、それが生産者と消費者にどう影響するのか。今後の改正法案づくりを注視する必要がある。
(関連記事)
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