高CO2濃度条件下で米の収量が増加 農研機構2018年8月21日
農研機構は、水稲の多収品種が持っている籾数を増やす遺伝子を「コシヒカリ」に交配で導入すると、高CO2(二酸化炭素)濃度条件下で収量が大幅に増加することを明らかにした。この研究成果は、将来的に予測されている二酸化炭素濃度が上昇した環境に適した多収品種の育成に貢献できると農研機構では考えている。
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は、18世紀後半の産業革命以降、今日に至るまでの約250年間で1.4倍になり、今後も上昇していくと予測されている。
水稲は、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、光合成物(スクロース、デンプン等)が増加し収量が高まる。しかし、将来の高二酸化炭素濃度条件下で、収量を増やすために品種が備えるべき形質はまだ特定されていない。
そこで農研機構では、屋外で高二酸化炭素濃度を実現できる開放系大気二酸化濃度増加(FACE)実験施設を設置し、約50年後、現在の約1.5倍の高二酸化炭素濃度の環境を作り、水稲の多収品種が持っている籾数を増やす遺伝子を「コシヒカリ」に人工交配で導入した系統を栽培し、その収量や生育を調べた。
その結果、この籾数を増やした系統については、高二酸化炭素濃度条件下で増加した光合成産物を大きな穂により多く転流(登熟期に茎や葉に含まれる光合成産物が穂に輸送されること)できるため、高い収量が得られることが分かった。多収品種が持つ籾数を増やす遺伝子は、「コシヒカリ」など既存の品種に人工交配で容易に導入できるので、この研究成果は、今後予測されている二酸化炭素濃度が上昇した環境に適した多収品種の育成に貢献できると農研機構では考えている。
【写真説明】
開放系大気CO2濃度増加(FACE)実験施設。
屋外の囲いのない条件で、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が農作物におよぼす影響を調べる実験施設のこと。今回の試験に使われたこの施設では、水田に内径17mの正八角形状にCO2が満たされたチューブを設置し、風向きに応じてCO2を放出。正八角形の区画内CO2濃度は、約70m離れた位置に設置された対照区(写真Aのb)に比べ、概ね200ppm程度高い濃度(約50年後を想定)に制御されている。
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