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農薬:いんたびゅー農業新時代

生産性向上の研究開発に投資【スバーシュ マーカド(Subhash Markad) BASFジャパン(株)農薬事業部執行役員 事業部長】2017年12月19日

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 いま日本に限らず世界の農業は大きな変化の時代に入ってきているのではないだろうか。とくに、日々増え続ける人口に対応してどのようにして食料を供給していくのかが問われているといえる。世界でも人口が集中するアジアに注目し、その主食である米(稲)の新たな生産技術を開発しようと考えているBASFの意図は何かなどを聞いた。

◆アジアの主食は米 生産性高い稲作を研究

 ――日本は人口が減少し食・農の市場が縮小していくといわれていますが、世界的には逆に人口が増加していくなかで食料をどう確保するかが大きな課題になっています。そうした課題に御社ではどう対応していこうとお考えでしょうか?

スバーシュ マーカド(Subhash Markad) BASFジャパン(株)農薬事業部執行役員 事業部長 世界の人口は日々増加し、2050年には90億を超える人々に食料を供給しなければいけない状況になるといわれています。BASFは農業分野における100年以上の経験を活かして、世界の農業生産者を支援していきます。食料の安全保障や安定供給は、1か国の課題ではなくグローバルに対応していく課題ですので、BASFとしてはこれに対するソリューションを提供していきたいと考えています。
 特にアジア太平洋地域は、世界でもっとも人口の多い地域です。この地域の人口増加と食料供給の課題に対応する取組みの一つとして、フィリピンに稲作の研究施設を開設しました(関連記事へ)。また、国際的な稲作の研究機関であるIRRI(国際稲研究所)と、アジアの稲作生産者が抱えている課題を理解し、アジア向けの研究開発を行うために提携しました(関連記事へ)。

(写真)スバーシュ マーカド(Subhash Markad) BASFジャパン(株)農薬事業部執行役員 事業部長

 

 ――御社がアジア地域では、麦や大豆などではなく、稲作に注目されているのはなぜですか?

 アジアの人々にとってお米は主食ですし、お米なしの食生活はありえませんので、BASFは稲作分野に投資しています。アジアにおいては都市化が進み農地がどんどん減ってきていますので、同じ面積でもより高い生産性をあげることができるように研究を進めていく必要があります。

 

 ――そういう意味で直播に適した新しい品種開発や技術開発の研究を進めていくということですね。

 いかに農業の生産性を上げるかが私たちの研究開発の目的ですが、生産量の確保には農薬が重要な役割を果たします。雑草、病害、害虫の管理の3つの分野でイノベーションを起こしていくことを目指しています。

 

 ――多くのグローバル企業は、麦やコーン、大豆、ワタを中心に事業展開されているようなので、御社はちょっと異色かなと思いますが...それだけお米を重要な作物と位置づけているのですね。

 アジアではお米が重要ですが、だからといって他の作物が重要ではないと考えているわけではありません。BASFは穀物を戦略的な農産物と位置づけており、ヨーロッパでは小麦分野のビジネスを大きく展開していますし、コーンの分野についてもインド、中国そしてインドネシアで大規模かつ幅広く事業展開しています。これらの穀物分野への基礎研究に多額の投資を行っています。

 

◆農業、環境などの持続可能性に 貢献できる直播の技術

 ――御社にとって、人口も減り農業市場が縮小するとみられる日本市場はどういう位置づけになっていますか?

 BASFは日本を非常に重要な市場と位置づけています。
 日本は先進国であり、人口構成や農業技術力の高さ、生産者のニーズなどが、他のアジアの国々とは異なります。最新の技術をそれぞれの生産現場に適した形で提供するために、私たちは各国のニーズに合わせて、製品のイノベーションを行っていかなければいけません。
 日本の質の高い食品に対する需要は増えていますし、特にアジア太平洋地域の国々においては品質の高い「メイド・イン・ジャパン」の需要が伸びています。

 

 ――日本は水田農業が中心ですが、これまで培われてきた日本の水田農業の技術やノウハウが、御社がこれから行う直播などの研究開発につながっていくとみてよいのでしょうか?

 もちろんです。箱処理など日本の技術は革新的で、アジアの国々に適用することができる技術ですので、私たちの研究開発に取り入れていきます。安全性を考慮したさまざまな栽培技術も参考になります。

 

 ――日本では直播は、まだ太宗を占める技術ではありませんが、直播の注目すべき点は何ですか?

 直播の注目すべき点は、使用する水の量が少なくて済むことです。現在、フィリピン、ベトナム、インドネシアそしてインドでも、農業用水の消費量の削減は重要な課題になっています。そうした中で直播は持続可能な農業により適した手段といえます。私たちは農業生産者を支援すると同時に、環境やエコロジーに考慮し、持続可能な農業の実現に貢献していきたいと考えています。

 

 ――日本も一農家あたりの生産規模が拡大するなかで、コストを抑え生産性をあげていくために、多収穫米の直播栽培に関心が高まっていますが、そのときに御社の研究開発された技術が活かされるといいですね。

 私たちの研究開発はアジア全体に貢献することを目的にしていますので、日本にも適用できるといいと思います。

 

◆種子や非選択性除草剤の分野に進出する

 ――御社はバイエル社の非選択性除草剤や種子事業を買い取られる予定ですが、これの御社における意味はどういうことでしょうか?

 まだ取引は実行されていませんが、私たちにとっては非常に重要な買収ですので、ぜひ成功させたいと考えています。
 この買収の意義は、一つ目は私たちが米国と欧州で、種子事業に参入するということです。二つ目は、米国において遺伝子組換え(GM)分野が強化されます。
 三つ目は、私たちにとって農薬では新たな分野である非選択性除草剤に進出することです。この剤は、果樹や野菜、芝生など用途が幅広く、日本で最も売れている除草剤の一つです。全世界を対象にしていますが、特にアジアは重要な市場と考えています。
 この買収により、BASFの農薬事業は大きく拡大していくと確信しています。

 

 ――今後、日本向けに開発していこうという農薬分野があればお教えください。

 作物分野では、「Xemium(ゼミウム)」や「Revysol(レヴィソル)」など、新規有効成分を含む革新的な殺菌剤を近い将来上市します。
 また、農業分野だけではなく、芝生や害虫駆除分野にも事業展開しており、先月には画期的なシロアリ防除剤の「ターミドールHE」を上市しました。

 

◆生産者はもっと誇りを 消費者は生産者に敬意を

 ――最後に、日本の農業生産者やJAへのメッセージをお願いします。

 農業は世界でもっとも大切な仕事ですから、消費者は農業生産者に敬意を払うべきだと思います。なぜならば、農業生産者の方々は非常に多くの困難に直面し、それを乗り越えながら農産物を生産していますし、さらに最近は、異常気象など新たな脅威も増しています。そうした大変な困難を乗り越えて私たちの食卓に食料を運んできてくれているわけですから、こうした努力に対して少し多めの対価を支払う必要があるならば、私たちは迷うことなく支払うべきだと思います。消費者はどうしても農業の生産現場ではなく、スーパーマーケットが食料を供給していると思いがちですが、もっと農業生産者に感謝をするべきです。
 そういう意味では、農業生産者はもっと誇りをもっていいと思います。

 

【スバーシュ マーカド(Subhash Markad)氏 略歴】

現職に就任する前はBASFインドの農薬事業部シニアジェネラルマネージャー(営業)としてインド国内の営業活動を統括。シンジェンタ、ノバルティス、チバ、ユニリーバなどの大手企業で営業とマーケティングに従事し、農業分野で20年以上の経験をもち、BASFには2010年に入社。

 

(関連記事)
新規殺菌剤開発で戦略的協力関係を構築 住友化学とBASF(17.06.13)
バイエルの種子事業と非選択性除草剤買収で合意 BASF(17.10.16)
2016年業績発表 売上高は576億ユーロ BASF(17.03.01)

 

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